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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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7話 謎の男


『ふはははははは!! こんな所までの調査、ご苦労!!』 


 空中に浮かぶ男は、大きな眼鏡をかけた灰色の髪の毛をオールバックにした男で、いかにも研究職の人間といった姿だった。

 男は偉そうな態度をしているが、お世辞にも強そうに見えない。


「みつき、アイツ、強そうに見えるっすか?」

「僕には、そうは見えない。よいやみは?」

「全くっす。一撃殴ってしまえば、倒せそうなんすよね」


 確かに、それくらいヒョロヒョロな体をしている。

 しかし、この塔については何かを知っていそうなので、捕まえる必要がある。

 僕とよいやみが構えると、いつきさんが僕達を止める。


『ははははははは!! これは映像だよ!! 馬鹿でも分かるように説明してあげようか?』


 ムカつくな。あの男……。

 いつきさんの方を見ると、冷めた目できょろきょろと何かを探している。


「どうしたの?」

「この男の姿は映像用の魔宝玉で映し出されています。どこかに仕掛けてあると思うのですが……」

「映像用の魔宝玉? 何それ?」

「各国の王族だけが持つといわれている魔宝玉です。なぜ、そんなモノがここにあるのかまでは知りませんが」


 いつきさんは、高笑いする男を無視して、映像用の魔宝玉が設置されている場所を探し始める。そして、この広間の入り口の壁に映像用の魔宝玉が埋め込まれていたのを見つけると、それを外そうとしていた。

 しかし、しっかりと取り付けられているのでいつきさんの力では外せないみたいだ。


「よいやみさん、この玉を取ってくれませんか?」

「了解っす」


 よいやみが力を込めると魔宝玉はアッサリ外れる。


『こ、こら!! 塔の設備を壊すんじゃない!!』


 男は、騒ぎ出すという事は結構大事な設備なのかな? しかし、いつきさんはそれを無視して、映像用の魔宝玉に魔力を送り込み魔宝玉を無力化する。

 僕はこの行動に少し驚く。


「魔宝玉というのは、魔力によって動いています。だから別の魔力を送り込む事で無力化する事が出来るんですよ」


 これは知らなかった。

 そもそも、僕は魔力を使えないから、魔力を送る事は出来ないんだけど。

 ちなみに、魔法具と違って魔宝玉は魔力の無い僕でも扱う事が出来る。それはなぜかというと、魔宝玉に魔力があって、使用者の魔力は関係ないからだ。


「これで鬱陶しい男の映像(・・)は消えました。これは持って帰って研究するとしましょう。いつかは量産型の映像装置が出来るかもしれません」


 そう言って、道具袋に魔宝玉を入れた。


『こ、こら!! 盗みは悪人のする事だぞ!! ま、まぁ、いい。貴様等を殺した後に取り返せばいいだけだ。しかし、よくぞここまで辿り着いたものだ!! 前に来ていた冒険者は、スケルトンにも勝てずに尻尾を巻いて逃げて行ったのに』


 こいつが言っている冒険者とは、流れ星の流星の事だろう。

 いくら何でも、流れ星の流星(あんなの)と一緒にしないで欲しい。


『その冒険者共に比べて、貴様等は見所がありそうだ。だがな、そこには一階層の番人スカルドラゴンがいる!! 恐怖に震えるがいい!!』


 スカルドラゴン?

 もしかして、さっきの弱い奴?


 スカルドラゴンと聞いて、いつきさんは興味を無くしたのか、床に何かを書き始める。よいやみにも手伝うように頼んでいるみたいだ。僕も手伝った方が良いかな?

 僕が近付こうとすると、いつきさんが僕を止める。


「ここは二人で大丈夫なので、その男の話を聞いていて良いですよ」

「あ、うん」


 いつきさんのそっけない態度に男は激怒している様だ。


『話を聞け!! スカルドラゴンが怖くないのか!? 早く出て来い、スカルドラゴン!!』


 スカルドラゴンがさっきの骨なら、僕がもう倒した後だ。何も出てくるはずがない。

 しかし、それを知らない男はスカルドラゴンを呼び続ける。それによいやみがキレた。


「うっさいっす!! そのドラゴンなら、みつきがもう倒したっす。黙るっす!!」

『え? 倒した?』


 男が間抜けな声を出す。

 恐らくだけど、男の筋書きだと、この広間にいた数百のスケルトンをやっとの事で倒した僕達に、スカルドラゴンを見せて、絶望の淵に落とす予定だったのだろう

 でも、あの程度の魔物で僕達が驚くわけがない。ゆーちゃんが強化したゴブリンの方が遥かに恐ろしいからね。


『ふふっ……ま、まぁ、いい。さぁ、二階層に上がってくるがいい!! さらなる恐怖がお前達を襲うはずだ!!』


 そう叫び、男は静かになる。


「いつきさん、男の演説が終わったみたいだけど、どうするの?」

「休みますよ。なんで、あんな得体のしれない人の言う事を聞かなきゃいけないんですか?」

「そ、そうだよね」


 いつきさんは、そう言って、ご飯の準備をしている。

 僕達はいつきさんが設置したテントに入って休む事にした。

 テントは四人で寝るには少し小さいくらいの大きさだったが、僕とゆーちゃんは小さいし、抱き合うので一人分くらいになる。それでも小さいかな?

 そう思っていたのだが、テントに入ってみると中は意外にも広かった。

 テント内には、四組のお布団が敷いてあった。

 それに驚いている僕にいつきさんが、「寝袋よりは、寝やすいと思いましてね」と笑いながら話す。


 これはありがたい。

 いつきさんのお店で扱っている寝袋が高級品とはいえ、お布団の方が寝やすいのは間違いない。ただ、僕はゆーちゃんと一緒に寝るから、お布団は三つで良かったのに……。

 

 もしかして……。


「このテントって空間魔法を使っている? テントの見た目に比べれば、中が広い気がするんだけど」

「使っていますよ。元々空間魔法の中に人は入れないんですが、長年研究してこの小さな空間だけ入れるようにしました。本当はベッドやテーブルを置きたいと思ったのですが、このサイズでは少し無理だったので」

「え? この塔みたいに空間を広げる事は出来ないの?」

「今の私では不可能です。悔しいですが、この塔を作った人は物凄い魔導士である事に違いはないみたいです」

「さっきの男?」

「いえ、違うと思います。あの男からはそこまでの魔力を感じる事は出来ませんでした。それに小物臭が漂う人にこれ程の塔が作り出せると思えません」


 じゃあ、この塔は誰が作ったのか。

 それを知る為には、あの男を捕まえなきゃいけない。


 食事をとった後、僕達は寝ようとするが、よいやみがテントの外に行こうとする。


「みつき、二時間ごとに交代っす」

「分かったよ」


 僕とよいやみの二人で、交代で見張りをしようとするが、いつきさんに大丈夫と言われた。 


「見張りは良いの?」

「大丈夫です。テントを設置する前に結界用の魔法陣を書いておきましたから。もし、テントを破壊された場合は、店に戻れるよう考えてありますよ」


 いつきさんはいつも先を考えている。本当に頼りになる人だね。


 次の日。

 僕達は転移魔法陣で二階層へと転移した。

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