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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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14話 鬼の郷

今回は前クジ引き2.3話分を1話にまとめて書いたので少し長いです。

後、13話を投稿していませんでした。申し訳ないです。


 僕は闘気を使ってハグロに会った場所まで戻る。

 恐らくだけどハグロは人間がこれ以上進まないよう、ここで待ち伏せしているはずだ。

 僕は大声でハグロを呼ぶ。


 すると森の方から、赤い髪の毛をした鬼族の女性と二人の鬼族の青年が歩いてくる。

 女性はニコニコ笑っているけど、青年二人は僕を睨んでいる。

 鬼族の女性は僕を一瞥すると僕を抱き上げた。


「あんた、金髪の子と一緒にいた勇者ちゃんだね」

「え? 僕が勇者だとなんで知っているの?」


 僕とこの人は初対面のはずなんだけど……。僕が勇者だということはハグロにも話していない。

 もしかして王都で出会ってる?


「あ、アタシとあんたは初対面だよ。鬼族と取引している商人がいてね、最近新しい勇者が現れたと聞いたんだ。聞いていた特徴があんたソックリなのさ」


 商人? 僕の知り合いの商人と言えば、ゲンさんといつきさん。いつきさんは冒険者でもないから在り得ないとして、ゲンさんなら行商人として色々なところを旅しているから鬼族と取引しててもおかしくはない。

 それに、ゲンさんならヴァイス魔国とも取引しているはずだから、亜人に偏見も持っていない。

 僕を知っているのなら、話が早い。


「ハグロと話をしたいんだけど、ダメかな?」

「ダメだね。アタシは良いけど、この子達があんたを許せないそうなんだよ」


 鬼族の女性がそう言うと、鬼族の青年二人が僕に絡んできた。


「そもそも、お前みてぇなチビが勇者だと? これだから、アロン王国は駄目なんだよ!!」

「お前ごときがハグロ様を呼び捨てだと? 分際をわきまえろや!!」


 口が悪いなぁ……。

 まぁ、アロン王国のクジ引きがダメなことくらいは僕でも思ってるから、それは良いんだけど……。

 女性も何も言わないようだ。

 鬼族は好戦的なのかな?

 まぁいいや。流石に話をしなきゃ意味がないから、ちゃっちゃとやっちゃうかな?


 僕は殺気を放つ。当然、相手の強さを測るためだ。

 女性は身動きしないね。この人は強い……と、それに比べて鬼族の青年二人は、少しだけ震えていた。


「貴女は、戦わないの?」

「アタシは戦わないよ。必要ないからね。それと、アタシは『ボタン』。そう呼んどくれ」

「分かったよ。ボタンさん」


 ボタンさんが戦わないのなら、剣は必要ないね。

 僕は全身に闘気を巡らせる。

 流石の僕でも身体能力を強化しないで鬼族の身体能力に勝つのは不可能だからね。


 僕が素手で戦おうとしていると、鬼族の青年の顔が赤くなる。

 鬼族の肌は、元々赤っぽいが、青年の顔は真っ赤だ。怒っているみたいだね。

 どうやら、僕が武器を使わないのを不服と思っているらしい。


「出来れば、早めに帰りたいから二人一緒にかかってきて」

「「ふざけんなぁああああああ!!」」


 鬼族の青年は流れ星の流星よりも速かった。が、そこまで驚異的でもない。

 先程の、よいやみとハグロを考えれば遅いくらいだ。


 僕は、青年達の腹部を思いっきり蹴って、気絶させる。

 

 まさか、一撃で気絶するとは思わなかった。


「お見事。クジ引きで選ばれたと聞いていたけど、この強さ、久しぶりの本物の勇者じゃないか」


 この人、僕のことをどこまで知っているんだろう?

 それも気になるけど、久しぶりの本物の勇者? どういうことだろうか?


「ボタンさんは他の勇者のことを知っているの?」


 僕がそう聞くと、ボタンさんはバツの悪そうな顔をする。聞くのは不味かったかな?


「答えにくかったらごめんなさい。ハグロと話がしたいんだけど、いい?」

「あ、あぁ。今呼んでくるよ」


 そう言って、ボタンさんは青年二人の足を持ち引き摺って森へと戻っていった。

 それからすぐに、ハグロを連れてきてくれた。


「鬼族の者が済まなかったな。確かみつきだったな。それで話とは?」

「前に会った時のことを覚えている?」

「流石に半日程度では忘れんさ。あのお願いだろ? 鬼族は族長である俺が一言いえば、多少の疑念があろうとも、言う事を聞いてくれるさ。ただ、俺が心配していることは人間側だ」


 確かに、人間は亜人を嫌っているとゲンさんから聞いたことがある。

 アロン王国ではどうか知らないけど、少なくともアロン王国では亜人を見かけない。

 けれど、あの村では大丈夫だと思う。

 あのおじさんの話が本当ならば、亜人であれ問題は無いはずだ。

 ハグロには「大丈夫とだけ言い、村に来てもらうことにした。

 ボタンさんもついてくるようだ。二人は夫婦だそうだ。

 

 

「お、お嬢ちゃん! そのオーガは一体!?」


 村に着いた僕達をおじさんが出迎えてくれたのだが、ハグロとボタンさんの二人を見て驚いている様だ。

 鬼族の二人は、肌の色が若干薄い以外はオーガと見た目が変わらない。ただ、鬼族は服装もちゃんとしているし、何より女性型は滅多にみられない。

 そもそもボタンさんは物凄くスタイルが良い魅惑のボディーをしているからね……羨ましい。


「おじさん、この村で村長以外の一番偉い人は誰? 話があるんだけど」

「え? あぁ、村長は逃げ出しちまったし……あとは、村長の父親である長老がいるくらいだが……」

「どこにいるの?」

「怪我をした連中と一緒に唯一壊されてない家にいるはずだ」


 おじさんには薬草を一つ渡しておき、僕達は長老に会うために家に入る。

 家に入ると、やはり鬼族の二人を見て、村人は驚きこそするが、逃げ出したり叫んだりはしていない。

 鬼族の二人が逆にこの状況に驚いていた。


「この村は珍しいな。俺達を見ても驚きはするものの逃げ出す者がいない」


 ハグロがそう()()と「お、オーガが喋った?」とさらに驚く村人もいた。

 僕はこの二人が亜人、鬼族だと説明した後、長老と話がしたいから呼んで欲しいと頼む。

 

 少しだけ待つと奥の部屋からリリアンさんに支えられたお爺さんが現れる。


 このお爺さんが、逃げ出した村長の父親で、前村長だったらしい。

 しかし、今の村長とは違い、村人から慕われているらしく、「長老は悪くねぇ」という言葉が聞こえてくる。

 お爺さんは鬼族の二人に謝っているが、鬼族の二人は戸惑いながら「いや、我々はオーガとは違うので謝れても……」と困っていた。


「みつきちゃん。鬼族の仲介は頼んだけど、ここに連れてきた理由は?」


 リリアンさんが少し怒った顔で聞いてくる。やはり王都の人間は亜人排除主義なのかな? それなら、最悪、アリ姉に介入してもらおうか……そう考えていたのだが、リリアンさんが怒っているのは別の意味だった。


「もし、この村の住民が鬼族のお二人を見て、敵愾心を持ったりしてたらどうするつもりだったの? 村の住民は自業自得と納得できるだろうけど、何も知らない鬼族の二人が傷つくだけだわ」


 リリアンさんが怒っていたのは、鬼族の方の気持ちについてだったのか。でもそれは大丈夫と確信していた。

 門番のおじさんや、村長を止めていた話からこの村の人間は亜人……いや、オーガという魔物に偏見は無いと見ていた。

 僕は、人間至上主義ではないし、逆に亜人至上主義でもない。あくまで平等だと思っている。

 だから、村の人が鬼族を受け入れなかったら、この村を見捨てるつもりだった。と、言っても、ギルドの力で王都に避難させるつもりだったけど。


「そのことは事前に話してあったから大丈夫。お爺ちゃん、()()として僕の提案があるんだけど聞いてくれるかな?」


 僕は自分が勇者(望んでないけど)ということを説明したが、勇者と聞くとお爺さんの顔が一瞬強張る。何故?

 僕は、勇者クレイザーを見る。

 勇者クレイザーは、なぜか光っている。え? な、なんで? 近くではよいやみが笑い転げていた。

 何やってんの? というより何が起こっているの?


「みつきちゃん。実はね……」


 リリアンさんの話は衝撃だった。

 クレイザーはゆーちゃんを知っていた様で、心底怯えていたらしい。

 ゆーちゃんのひーるの餌食になったクレイザーの成れの果てが、あの光る意味の分からない状態らしい。

 しかし、正義感があるのは結構だが、ちゃんと魔物の生態くらいは勉強しておけよと思う。 


 僕はジト目でクレイザーを睨む……。


 まぁ、アレの処罰は帰りに馬車にでも引き摺ってもらうとして、それよりも、これ以上グダグダしていてもしょうがない。

 僕は単刀直入に提案をする。


 僕の提案は、この村で人間と鬼族が共生すること。

 人間からしてみればこの提案は馬鹿げていると思われるが、実は逆だ。

 身体能力に魔力全てが勝っている亜人からしてみれば人間の方がお荷物になりかねないのだ。まぁ、人間は数が多いから勘違いしているらしいけど……。

 お爺さんは少しだけ迷っていた。


「我々は願ってもないことじゃ。この村を見てわかるように若いものがほとんどいない。オーガのことが無くとも、近いうちにこの村は自然消滅していたじゃろう……。逆に聞くが鬼族にとってメリットはあるのか? 儂らが邪魔になるのではないのか?」


 お爺さんの言葉にハグロは少し笑う。


「邪魔とは思わんさ。むしろ、ご年配の方々の方が知恵を借りるのにはありがたい。我々は見ても分かるように力はあるが考えることは苦手だ。是非ともにこの村を発展させることに協力してもらいたい」


 ハグロはそう言って、お爺さんの手を取る。

 僕がその光景を見て思ったのは、ハグロ達は間違いなく知能も高い、それは間違いないのだ。だけど人間を安心させるためにあえてああ言ったのは、ハグロの度量の大きさだろう。

 本当に脳筋なのは……そこで空気を読まずに笑い転げているよいやみの方だろうな……。


 鬼族と人間が共生する村がここに誕生した。

 オーガの襲撃そのものは鬼族が対処するようになり、人間もオーガの縄張りに近付くことも無くなった。


 それから数日後、逃げ出した村長と盗賊達は冒険者の手によって捕縛された。

 共に処刑だそうだ。まぁ、当然だよね……。


 ハグロが村長として代表になり、この村に平穏が訪れた。

 オーガも今まで通り、大人しくなり、村人と交流している。

 この村は後に『鬼の郷』と呼ばれ、お酒の名産地になった。

 

少しで思面白いや、続きが気になると思っていただけると嬉しいです。


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