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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

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ガストの歴史


「おかえり、よいやみ」

「おかえりなさい、よいやみちゃん」


 転移魔法陣の光が止むと、そこには魔導大国ガストの王太子であるやとさんと、婚約者であるレイチェルさんが僕たちを出迎えてくれていた。

 うん。確かに、以前と比べて、やとさんはかなり強くなってる。

 よいやみの話では、ガストの王族の男性は出生率が低いらしく、その分、戦闘の才能と魔力量は段違いに高く生まれてくるそうだ。

 一応女性であるよいやみは、やとさんよりも強いが、グレンさんに小さい頃から英才教育を受けていたために、ずば抜けて強くなっているらしい。

 あれ? よいやみって、ローレル姫と殴り合いしたと聞いていたけど、その時点でグレンさんに鍛えられていたのかな? それとも……。無意識に手加減していた?

 そんなことを考えていると、やとさんとレイチェルさんがよいやみに近づいてきた。


「ただいまっす。やと兄様、レイチェル姉様」


 レイチェルさんは、よいやみをそっと抱きしめ、僕たちを見て会釈してくれる。


「みつきさん、聖女いつき様、ゆづきちゃん、いらっしゃい」


 やとさんも僕たちに挨拶してくれた。あ、ガストでは聖女の地位が高いから、いつきさんには様をつけるんだね。いつきさんはすぐに、敬称なんて必要ない。と言っていたけど。

 僕たちへの挨拶が終わったレイチェルさんがゆーちゃんの前でしゃがみ込み、頭を撫でる。


「いらっしゃい」

「うん……」


 頭を撫でられながら、ゆーちゃんもモジモジしながら頷いた。

 

「それで、そちらの年配の姿の方が……」

「そうっす。彼女が、ガスティアの不老不死の成功例、クオン婆ちゃんっす。それで、やと兄様もガスティアのことを知っているんすか?」

「私が知っているのは、かつてこの地にガスティアがあったことくらいだね。詳しい話は父上か、宰相であるエスタに聞くといいよ」


 エスタさんはエルフで、長年ガストの重鎮として仕えているらしく、昔のことを聞くには最適だそうだ。

 僕たちは、エスタさんに話を聞くために、執務室へと移動する。

 すると、長い廊下をあわただしくは知ってくる人物がいた。

 ……あ、あれって。


「よいやみちゃん!!」

「げっ!? 親父!?」


 駆け寄ってきたのは、よいやみのお父さんで、魔導大国の王様であるガスト王だった。

 ガスト王は、よいやみの肩に手を置き、「パ、パパだって、よいやみちゃんの役に立てるんだよ!?」と必死に叫ぶ。しかし、よいやみは心底面倒臭そうな顔をしている。

 まぁ、ガスト王ってよいやみが絡むと、面倒くさいんだよね。

 その証拠に、よいやみのテンションが駄々下がりしてる。これじゃあ、聞きたいことを何も聞かなくなってしまう。

 よくよく考えたら、よいやみのお母さんのことなんだから、夫であるガスト王に聞いた方が早い気はする。


「ガスト王、お久しぶりです。ところで、あかつきさんでしたっけ? よいやみのお母さんってどんな人だったんですか?」


 僕は、出来る限り、ちゃんとした言葉でガスト王に話しかけた。

 しかし、僕の問いにガスト王の顔が曇る。


「今日はガスティアのことを聞きにきたのではないのか? どうして、あかつきの名が出てくる?」


 あれ? もしかして、ヤバいことを聞いた?

 よいやみもそれに気づいたらしく、僕の前に立つ。


「親父、お母様は、ガスティアの血を引いていたんすか?」

「なっ!? ど、どうして、よいやみちゃんがそれを!?」


 よいやみから、よいやみのお母さんとガスティアとの関係の話が出ると、ガスト王は明らかに動揺が見て取れる。そんなガスト王にエスタさんが何かを耳打ちする。

 その後、ガスト王は、よいやみに背を向けた。


「やと、今夜、城にいる王族を集めておいてくれ。よいやみ、お前も出席しろ。黒女神の皆さんは、客室で休んでおいてくれ。よいやみ、お前一人でくるんだ」


 普段とは違うガスト王の背中に、やとさんもよいやみも少し戸惑っているみたいだ。


「エスタ。ガスティアのことを、黒女神の皆さんにはなしてやってくれ。ただし、あかつきのことは、私が話す」

「かしこまりました」


 そう言って、ガスト王はその場を去った。なにやら、空気が重い。


「え、エスタさん? アシ、なんか聞いちゃいけないことを聞いちゃったっすか?」

「いえ、大丈夫ですよ。いつかは、やしゃ様の口から真実を話さねばならなかったことです。よいやみ様が気を病む必要はありませんよ。では、皆様、こちらへ……」


 僕たちは、エスタさんの後をついていく。やとさんとレイチェルさんは他のお仕事があるらしく、途中で別れることになった。

 僕たちが案内されたのは、応接室だった。そして、エスタさんが、ガスティアについて話してくれた。

 

「まず、ガスティアとガストの関係なのですが、ガスティア王を討ったのが、かつて、最強の魔導士一族と呼ばれた、ガスト一族でした。彼らは、私たちエルフと共に行動しており、そういった経緯で、私のようなエルフが国の中枢に配属されているのです」


 ガストってガスティアがあった頃から続いてたんだね。

 しけし、クオン婆ちゃんは、今のエスタさんの言葉に疑問を持ったみたいだ。


「ガスティアを討った? ガスティアは不老不死の研究ができなくなり、静かに衰退していったんじゃないのかい?」


 確かに、クオンはその様を研究所から見ていた……? いや、あの研究所は魔大陸の結界で隔絶されていたから、ガスティアの行末はわからないはずなのでは?


「確かに私は研究所を滅ぼした。しかし、そう簡単に不老不死の研究を諦めきれない奴らはいたんだよ。そいつらを締め上げて、ガスティアの末路を聞いていたんだ」


 なるほど。

 確かに、何年も研究を続けていたのに、捨てられるわけはないのかな?


「ガスティアの王の狂気は、周りにまで伝染していました。勿論、当時の王が崩御してからも、王の側近が不老不死を求めて、研究を続けようとしていたと、伝承では伝えられています。よいやみ様は、ガスティアがガストと名乗っていたのをご存じですか?」

「知っているっすよ。クオン婆ちゃんから聞いて、それで調べ始めたんすよ」


 エスタさんはよいやみの言葉に、なにかを考えている。


「聖女様は、不老不死の研究について、どこまで知っていますか?」


 あれ? どうしてよいやみやクオン婆ちゃんに聞くんじゃなく、いつきさんに不老不死のことを聞くんだろう?


「そうですね。私自身も、研究施設の資料で知りましたから、詳しいことは何も知らないんです」


 そうだよね。

 実際に不老不死の研究所を見たとき、いつきさんは怒っていたし、本当に知らなかったんだろうね。

 でも、エスタさんはどうしていつきさんに話をふったんだろう?


「エスタさん、どうして私なら不老不死の研究について聞いたんですか?」

「あぁ、不老不死の研究という禁忌であれば、教会の聖典にでも載っているのではないかと、思いましてね」


 その言葉を聞いたいつきさんは、明らかに不機嫌な顔になっていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 教会も狂気の研究に手を染めていたのでしょうね・・ ますます次回が楽しみです♪ これからも頑張ってください(o´・∀・)o
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