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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

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魔法王国


「この島は、魔大陸から離れているはずだ」


 骨はそう言って笑う。

 魔大陸から離れてる? そんな馬鹿な。

 この研究所の構造がたとえ複雑だったとしても、そこまでは慣れていないはずだ。

 それに、魔大陸の結界内に入れない? そ、そう言われれば、そうだったかもしれないけど……。


「結界のことは今は深く考えないとして、魔大陸から離れていたと貴女は言いますが、私達は魔大陸に一番町に死霊系の魔物がいるという島の調査に来たんですよ?

 500年も生きているので、研究所の位置関係を忘れてしまったのでは?」

「うーむ。別にボケてはいないのだがね。

 そうだ、地図などは持っていないかな?」


 地図か……。

 僕達は乗合馬車か転移魔法で移動するから、地図とか持ってないんだよね。

 と思っていたのだが、いつきさんはアッサリと地図を取り出す。


「あれ? いつきさん、地図なんて持ってたんだ」

「いや、冒険者なら普通は持ってるっすよ?

 ってか、もしかして、みつきは持ってないんすか?」

「え? あ、い、嫌だなー。持ってるに決まってるじゃん」

「持ってないんすね」


 うぅ……。よいやみに馬鹿にされた。

 僕とよいやみがそんな話をしている間も、いつきさんと骨は500年前の地図の位置関係を確認しあっていた。

編集ここまで。

「魔大陸はここだね。これは、数百年経とうとも、変わらないはずだ」


 骨の指さした先は、間違いなく魔大陸だった。


「では、次に貴女の国のあった場所を指差してください」

「私が生まれた国は……」


 骨はガストを指さした。


「骨。お前粉々に砕かれたいっすか?

 そこは魔導大国ガストっすよ?」


 自分の生まれ故郷が不老不死の研究をしていた国と言われ、よいやみはかなり機嫌が悪くなる。


「魔導大国?

 何を馬鹿なことを言ってるんだい?

 ガストと言ったら、魔法王国ガストじゃないか」


 魔法王国? 魔導大国とどう違うの?

 僕にはわかんなかったけど、よいやみにとっては許せなかったようだ。

 骨の頬を掠め、玉座を思いっきり殴っていた。あれは骨を脅すために、わざと外したんだろうな。


「魔法王国じゃないっす。魔導大国っす。二度と間違えるんじゃないっす」

「落ち着け。

 私は何も間違ったことは言ってない。

 少なくとも、私が普通に生きていた時代は魔法王国だったってだけだ」


 骨はそう答えるが、よいやみの怒りは収まらなかった。


「よいやみさん。あの噂の魔法王国と今のガストにどういった繋がりがあるかはわかりませんが、少し落ち着いて骨の話を聞いてみましょう。

 骨さん。貴女がいた国がガストなのかどうかは置いておいて、貴女の知っている魔法王国について教えていただけませんか?」

「わかったよ」


 骨が言うには、魔法王国ガストの王は、欲に塗れた人物だったらしく、国は荒れに荒れていたそうだ。

 国民に重税を敷いて、王は贅を尽くした。

 しかし、そんな暮らしがたたり、王は病に倒れた。どうやら、長くは生きられなかったらしい。その事実に王は嘆き、どうにか生きながらえようとした。しかし、病は徐々に進行していった。

 王は嘆く日々を送っていたが、ある日側近の一人が王に進言した。


 不老不死になれば、苦しみから解放されます。


 その日から、王は奴隷を使い実験を始めた。

 不老不死の薬、魔法を使い、殺してみる。悪魔のような実験だ。

 最初こそ、奴隷を使っていたが、徐々にエスカレートしていき、王に逆らう者、王の機嫌を損ねた者、王に従わなかった者が犠牲となった。

 骨も王の機嫌を損ねたと研究所に送られたらしい。


「そんな王がいたら、あしがぶち殺してやるっす」


 よいやみが無意識に殺気を放ち始めるので、僕とゆーちゃんでよいやみを抱きしめる。


「な、なんすか?」

「少しは落ち着くでしょ?」

「よいちゃん、おこっちゃだめ」


 抱き合う僕達を優しい目で見るいつきさん。そして、骨の方を軽く睨む。


「貴女の話を完全に信じるつもりはありませんが、もしかしたら、ガストになんらかの文献が残っているかもしれません。

 かたや噂の魔法王国、かたや強国であり、魔導大国。どちらもガストという名の国であることには変わりありません。

 とはいえ、仮に骨の話が本当だったとしても、今のガストとはなんの関係もない話です」


 いつきさんは、よいやみの方を向き微笑む。そして、骨も頷く。


「私もそう思うよ。

 私が生きていたのは、もう500年も前なんだ。今を生きる君達にはなんの関係もない。

 仮に君の言う魔導大国が私の故郷である魔法王国だとしても、今のガストにはなんの落ち度もない。

 あの時の王には子はいなかったし、自身の権力を脅かされないために、王と同じ血の者は、全て殺されていたはずだ。

 気休めかもしれないが、今の魔導大国とは関係がない、と、私は思う」


 そう言われて、よいやみは静かに頷く。


「さて、いくつかの謎は残っていますが、骨は今後どうするのですか?」

「私かい?

 私の姿はこんなのだ。今更普通には生きていけないだろう。

 私自身が定着魔法を使っている限り、私の時は永遠なのだろう?

 ならば、ここで大人しく暮らし続けるよ」


 骨は少しだけ寂しそうにそう呟く。しかし、いつきさんがとんでもないことを言い始めた。


「そうですね。

 ガストの真相は必ずハッキリさせるとして、貴女を黒女神にスカウトしたいと思います」


 あ、今の流れで骨を仲間にするの? マジで?


 

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