表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/140

32話 成功例


 僕とゆーちゃんは、いつきさんに頼まれて部屋中に散らばっている紙を拾ってまとめていた。


 拾っている最中に、書いてある内容を読んだけど、僕にはよく理解できなかった。

 それに比べて、よいやみといつきさんは、内容を理解しているみたいだ。

 いつきさんは分かるとして、よいやみが理解しているのに驚いた。

 よく考えたら、魔導大国の王女なんだから、こういう魔法の研究の事は得意なのかもしれない。


「いつき、これを見るっす」

「これは酷いですね……。ここで研究していた人達は人間を何だと思っているのでしょうね……」

「本当っす。ここに書かれている国はすでに滅びているっすけど、もし今も残っていたら、ガストが許すわけないっす。きっと滅ぼしているっす」


 国を滅ぼすって、随分と過激な事を言うなぁ……。でも、よいやみがそこまで言う内容って何なんだろう?


 僕がよいやみの持っていた紙を見ようとしたら、よいやみが紙を隠す。


「なに? 見してくれないの?」

「みつきは見ない方がいいっす。これはピュアなみつきや、ゆっきーが見ちゃいけないモノっす。二人にはそのままでいてほしいっす」

「えぇ!? そ、それってエッチなモノ?」


 ピュアがどうとか言われたら、そんな事しか思い浮かばないよ……。僕がそう言ったのを見て、よいやみはニヤニヤ笑っていた。


「なに?」

「みつき~。欲求不満っすか? 今夜、一緒に寝てやろうっすか? 色々してやるっすよ?」

「な、何を言ってるんだよ!?」


 僕はよいやみに蹴りを入れるが、簡単に避けられてしまった。


「みつきさん、暴れないでください。結界が張ってあるので普通よりは綺麗ですけど、一応、埃っぽいんですから……。それに、よいやみさんもみつきさんをからかわないでください」


 うぅ……。

 よいやみのせいで、いつきさんに怒られたじゃないか。


「それよりも、何が書いてあるの?」

「これには不老不死が成功したかを試すために、実験体になった人を殺した、という内容を書かれているんです。殺し方として、実験開始直後は苦しまないように殺していたみたいなのですが、後期になればなるほど、殺し方が残酷になっています。ここの研究施設が滅びる直前では、不老不死を試すんじゃなくて、殺す事が目的になっている記述まであります……」


 そ、それは……。


「本当にこの研究施設にいた奴等は腐っているっす。こんな場所早く出るっす。クレイザーにさっさと報告書を渡してこんな仕事終わらせて、さっさと忘れるっす」

「そうですね。さすがに気分が悪いです……。しかし、この記述だけは気になります」

「なんすか?」


 いつきさんから渡された紙を見て、よいやみはびっくりした顔になっている。


「こ、これは……。ありえないっす」

「何が書いてあったの?」


 僕がそう聞くと、いつきさんは困惑した顔になって「成功例です……」と呟いた。


 え?

 成功例?

 そ、それって、不老不死の何かが、今もどこかにいるって事!?


「そんな馬鹿なっす。そんな奴がいるのなら、五百年もの間、話が上がってこない方がおかしいっす」

「そうですね。少なくとも、教会の方にもそんな報告が上がってきた事はないはずです。もし、そんな事例があったのなら、教会が神敵認定しているはずですから……」


 魔大陸でも、不老不死なんて人は見た事も、噂に聞いた事もないよ……。


「成功例がいると分かった以上、何らかの対処法を考えなければいけないかもしれません……。一度教会に戻りましょう……」


 いつきさんは、転移魔法を使おうとしていたけど、ゆーちゃんがいつきさんを呼んだので、魔法を中断した。


「どうかしましたか?」

「ごうよく。ここにかいだんがある」


 階段?

 僕がゆーちゃんが指さす場所を見に行くと、そこには下に続く階段があった。


 下に行くか……。

 確かにここからは死の気配を感じる。

 もし、リッチキングがいるのなら、この先だ……。

 ……でも。


「いつきさん。リッチキングがいるとは僕は思えない」

「え!? みつき、どういう事っすか!?」


 僕の言葉に、いつきさんよりもよいやみの方が驚いていた。


「うん。リッチキングのような強力な魔物が現れるとき、こうやって死の気配を感じるのは確かなんだ……。でも、同時に死臭もあるはずなんだ……。僕達は、臭い消しポーションを飲んでいるから断定はできないけど……。臭いが消えていても嫌な感じがするんだよ。でも、ここにはそんな感じがしない。それに……」

「みつきさん。一つ聞いてもいいですか?」

「なに?」

「魔大陸には、死霊系の魔物はいるんですか?」

「いないよ」


 いつきさんも僕の言いたい事を理解してくれたみたいだ。

 おそらくだけど、この階段の先は魔大陸の結界内だ。だから、死霊系の魔物がいるとは思えない……。


「じゃあ、この下には何がいるというんですか?」

「わからない。でも、もしかしたらいるかもしれないね……」

「いるって何がっすか?」


 何がって、さっきいつきさんもよいやみも言っていたじゃないか……。

 成功例があるって……。


「不老不死の何かがいるという事ですか?」

「わかんないけど、いるかもしれない……」

「どちらにしても、行くしかないですね……」


 僕達は階段を下りていく。

 もし、この階段の先に不老不死の人間がいたら……どう戦ったらいいんだろうね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ