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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

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24話 アビスケダマ


 さっきの僕達の攻撃で、アビスケダマは大事な毛の一部が無くなった事を怒っているみたいだ。

 その証拠に毛を伸ばして僕達を殺そうとしている。


「ケダマの攻撃が激しくなったっす。神獣種って事で最初はビビったっすけど、この程度の攻撃しかできないんだったら恐れる事は無いっす」


 よいやみは勘違いしている。

 アビスケダマが現れた時に魔力弾を吐いてきた。それこそ、あのゼドラの攻撃よりも強力な魔力弾だった。

 よいやみはアレを見ていないの?


「よいやみ、油断しちゃダメだよ。アビスケダマにもブレス攻撃みたいなものがあるんだ。どう考えても防げるようなモノじゃない」


 僕がそう説明した瞬間、アビスケダマは魔力弾を吐いてくる。


「こ、これっすか!?」

「これだよ!!」


 僕達はブレス攻撃を避ける。

 この高威力の魔力弾を受けたら、ただじゃすまない。


「普通のブレス攻撃なら破壊する手段があるっすけど、あんな魔力弾みたいな奴は破壊できないっす」


 よいやみの言うブレスの破壊って中心を攻撃するだっけ?

 でも、神獣種が吐いてくるような高威力のブレスにあの方法を使うのは危険すぎるよ。


「とりあえず、ブレス攻撃が止むまで必死に避けるよ」

「分かったっす」


 暫くすると、アビスケダマは魔力弾を吐き疲れたのか、その場で止まってしまう。


「い、今がチャンス?」

「いや、何をしてくるか分からんっす」

「お前等、アイツを倒す手段を思いついたのか?」

「今の魔力弾を見て思いつくわけないっす。……とはいえ、アイツを倒さないとあし等に……いや、アロン王国に未来はないっす」


 よいやみがそんな怖い事を言うので、体が少し震えてしまう。


「それで、どう戦う?」

「あそこを見るっす」


 よいやみはアビスケダマの毛が禿げた部分を指差す。


「あの場所なら、毛に邪魔されずに攻撃できるっす。もしかしたら致命傷も狙えるかもしれないっす。でも、あそこまで近付くのは至難の業っす」

「そうだな。ケダマの毛針攻撃は激しいからな。それにあのブレスは危険すぎる。そうだ、参考になるかは知らんが、さっき試した事があるんだが聞いてみるか?」

「うん。何かのヒントになるかもしれないし」


 バトスさんはアビスケダマの攻撃を避けながら、少しでも攻撃チャンスになればと、小石を投げつけてみたらしい。

 王種以上の魔物にそんなモノを投げつけても、いや、例え当たったとしても、何の意味も無いとは思っていたそうだけど、小石くらい無視すると思っていたアビスケダマは小石を攻撃してきたそうだ。

 それからも何個か投げつけたそうだけど、全てに反応して攻撃をしていたそうだ。


「それって……」

「あぁ。アイツが自分の意志で俺達を攻撃しているのは間違いない。だが、近くに何かの反応があれば自動的に攻撃してしまうんだ」

「それなら……みつき」

「なに?」

「さっきの矢……月光衝は連射できるっすか?」

「うーん。【ゼロの魔力】は連続で使う事ができないから難しいかな。一発撃てば数十秒は使えないと思う」

「そうっすか」


 月光衝が闘気で使えるのなら、よいやみの期待に応えられるけど、闘気では弓矢の形は作れない。だから【ゼロの魔力】を使うしかないんだけど、これは一度使うと数十秒は使えなくなる。


「そうっす。みつき、アルテミス様が使っていた矢を降らせるアレ、使えないっすか?」


 矢を降らす?


「え? 僕知らないよ」

「アルテミス様に聞けば分かるはずっす。ゼドラと戦った時に使っていたっす」


 そういえば、僕はあの時は気絶をしていたんだ。

 アルテミスにその技の事を聞くと、『月光衝を使えるのなら使えるはずですよ。【ゼロの魔力】を最大限に込めた矢を上空に射ち、アビスケダマの真上で弾かせるのです』と簡単に説明してくれる。


 弾かせる?


『はい。アビスケダマの上空に到達したと思ったら「弾けろ」と叫んでください。それで弾けるはずです』


 叫ぶか……。

 本当にできるかな……。

 いや、やる前からできないって考えちゃダメだね。

 やってみるかな。


 僕が不安な目をしていたのに気づいたよいやみが、僕を抱きしめてくる。

 うーん。

 ガストに行って以来、よいやみが抱きついてくる事が多くなったな……。別にいいんだけどさ。

 でも、今回は僕を安心させようとしているのが良く分かる。


「みつき……」

「うん」

「大丈夫っす。失敗したらやり直せばいいだけっす。みつき、やるっす」

「うん」

「バトスさん、みつきの矢が止んだ直後に動くっす。狙いはあのハゲっす」

「どうも話が見えないが、よいやみ、飛び込むときは合図をくれ」

「了解っす」


 僕は【ゼロの魔力】を最大限に使い弓矢を作る。

 そして、アビスケダマの頭上を狙い矢を放つ。


「いっけぇえええええ!!」


 僕の放った魔力の矢はアビスケダマの上空まで到達する。


「弾けろ!!」


 僕がそう叫ぶと、魔力の矢は、無数の矢となってアビスケダマに降り注ぐ。

 で、できた!!


 突然の矢の雨に、アビスケダマはその矢に反撃しようとするが毛が足りない様でダメージを受けているようだ。


「バトスさん、雨が止んだ直後っす」

「分かっている」


 そして、矢の雨が止んだ直後よいやみの合図で二人はアビスケダマに飛び込んでいった。

 アビスケダマは矢の雨に毛を使い過ぎて動けないみたいだ。


「よいやみ、俺がアビスケダマの気を逸らす。お前が決めろ!!」

「了解っす」


 バトスさんはアビスケダマの正面に移動して、よいやみは禿げた部分を狙って攻撃を始めた。

 僕も援護しなきゃ。


 僕は【ゼロの魔力】を発動させようとしたが、発動しない。

 まだ、使えないのか。

 仕方ないので闘気を纏いバトスさんの援護に向かう。


 僕とバトスさんでアビスケダマの気を引き、よいやみが渾身の一撃を禿げ部分にいれる。


「ぎゃがぁあああああああ!!」


 するとアビスケダマは絶叫に近い鳴き声を上げた。

 よいやみは【全開魔力】で何度も攻撃をしている。


「ぎゃぎーぃいいいいいいいいい!!」

「効いてるっす。もういっちょ!!」

「ぎぃいいいいいいい!!」

「みつき!! もう一発最初に使った矢をぶち込め!!」


 僕はバトスさんの指示で【月光衝】をゼロ距離でアビスケダマに射ち込んだ。

 すると、毛での防御が間に合わなかったのか、アビスケダマの目を抉り、アビスケダマは絶叫を上げてそのまま絶命した。


「た、倒したんだよね?」

「あぁ。倒せたはずだ」


 僕はその場に座り込む。

 するとよいやみが僕に抱きつく。


「やったっす!!」

「うん」


 僕とよいやみは抱き合って喜ぶ。

 その光景をバトスさんが見て笑っていた。



「本当に良いんすか?」

「あぁ。とどめを刺したのはみつきだし、ダメージを与えたのはよいやみだ。俺は気を引くくらいしかできなかった」

「でも、倒すきっかけをくれたのはバトスさんだよ」

「ははは。ありがとうよ。どちらにしても素材はお前等が取っておけ。アディへの土産になるだろう」

「じゃあ、遠慮なく貰うよ」

「そうしろ、そうしろ。さて、ケダマでは新人研修できなかったからな……どうするか……」

「グランドゴブリンでいいんじゃないっすか? あれなら倒せるっしょ」


 確かにグランドゴブリンなら、余程の事が無い限り負ける事は無いと思う。もしもの時は僕達がいるし……。


「そうだな。グランドゴブリンなら俺でも単騎撃破できるしな」


 バトスさんはゴブリンを一匹連れてきて、ゆーちゃんがグランドゴブリンに進化させた。


 三人はミカルを中心にグランドゴブリンと戦い、三時間の死闘の末見事撃破していた。

 こうして無事に新人研修が終わった。



「ケダマよりもゴブリンの方が安全だとは思わなかった……」


 夜、打ち上げと称してカイト食堂で食事をしていた時バトスさんがそう呟く。

 確かに最弱のケダマの神獣種があれほど強いとは思わなかったよ。


「でも、ケダマ以外にも神獣種って存在するんだよね。そう考えたら怖いよね」


 今まで王種が最強の魔物と思っていたけど、神獣種はそれよりも強くこれを魔物研究家に話したら一大事になるかもしれない。

 でも、注意喚起もしなきゃいけないから報告はするべきだろうか……。


「下手にこの事をギルドに話せば混乱するかもしれない。今は黙っておいた方が良いだろう。今回みたいに自然に発生したんじゃなくて、ゆづきが作り出したのなら尚更だ」

「うん。あしもその方が良いと思うっす。どの文献を見ても王種の事しか書いていないんだったら、自然発生はしないかもしれないっす。でも、あし等は神獣種の存在を知ってしまったっす。だから、もしもの時の為にもっと強くならなきゃいけないっす」

「そうだね」

「はぁ……。暫くは休みの度にじいさんかグレン殿の所に行く必要があるな」

「……そうだね」


 僕とバトスさんは英雄と呼ばれているから尚更だ。

 よいやみだって、アロン王国最強と言われているから、強くなくちゃいけない。


「あぁ……熊の喜ぶ姿が目に浮かぶっす」



 次の日。

 僕とよいやみは今回のお仕事の報酬を貰う為にギルドに来ていた。月払いだから来る気はなかったんだけど、いつきさんが行って来いというので仕方なく来た。


「月払いなんだから、別に行かなくてもいいと思うんすけど、いつきは変なところで真面目っす」

「そうだね。でも、よいやみは今日もオフなんだから、ついて来なくていいんだよ」

「一応事の結末を知っているモノとしては、みつきがついうっかり口を滑らす事に懸念を持っているんすよ」

「まぁ、ついてくるなら別にいいけどさぁ……」


 僕達がギルドに入るとバトスさんと三人、それにオルテガさんがいた。

 え?

 どうしてオルテガさん?


「バトスさん?」

「あぁ。一応オルテガの旦那にだけは話しておいたんだ」

「それで、どうしてこの三人は顔が青いの?」

「あぁ……」


 バトスさんの話では、この三人は神獣種の事を知っているので口止めされたらしい。しかも、かなり脅迫じみた事を言ったらしい。

 でも、ミカルはレギーナ帝国の人だから……。


「ミカルとラルスの身柄は俺達パリオットが預かる」

「アーネさんは?」

「いつきから何も聞いてないか?」

「え? いつきさんから、いつも通り報酬の領収書を貰って来いと言われただけだよ」

「そうか……アイツにはもう話を通してあるが、アーネはお前達が引き取れ」

「は?」


 僕とよいやみは顔を合わせる。


「そ、それって、アーネさんを黒女神にいれるって事?」

「そうだな。いつきにはもう了承を取ってある」

「そ、そうなの?」


 僕達が驚いていると、アーネさんが「よろしくお願いします」と頭を下げてきた。

 い、いや……。


 僕達も頭が追い付いていないんだけど……。


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