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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

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21話 困った新人研修

これからしばらく不定期な時間に投稿していきます。余裕が持てたら元に戻します。


 魔宝玉の包丁を持ったアディさんの解体は、本当に凄かった。

 ゲガガドンの龍鱗も、硬い肉も物ともせず解体していった。何より驚いたのがそのスピードだ。


「この魔宝玉の包丁は凄いな。思った通りの動きができる」


 アディさんも魔宝玉の包丁にご満足のようだ。


 ゲガガドンの素材で役に立ちそうな部位は牙と龍鱗、それに骨が強度があるので使い道がありそうとの事だった。

 肉と内臓は硬く食用には向かなそうだったので、浄化の灰で処理をしようと思ったのだが、カレンがそれに待ったをかけた。


 どうやら、ゲガガドンの肉が美味しいかもしれないという情報をどこかから仕入れてきたみたいだ。

 そういえば、カレンもヴァイス魔国によく食材を買いに行っているみたいだし、魔物食材屋さんで聞いたんだろうな。


 それから五日経ち、僕とよいやみの二人がゲガガドン料理の試食に呼ばれた。


「よいやみには三日前にも試食をしてもらったけど、今回は自信があるよ」

「本当っすか? あの時のは肉が硬すぎて顎が痛かったっす」

「でも、味は良かったでしょ?」

「味付けは良かったっすよ。後は肉を柔らかくっす」

「今回はそこを重点的に考えたからね。まぁ、食べてみてよ」

「「いただきます」」


 僕は肉を口に運ぶ。

 肉はとても柔らかくて美味しかった。これは肉そのものも美味しいね。カレンの味付けがそれを数倍にまで引き上げている。


「これは凄いっす。あの硬かった肉をよくここまで柔らかくする事ができたっすね」

「ははは。結構苦労したからね。もちろん調理方法は秘密だよ」

「これならお店に出しても大丈夫だね」

「そうだね。それで、みつき達に頼みがあるんだ」

「なに?」

「ゲガガドンをまた狩ってきて欲しい。ゲゴゴドンもお願いね」

「あ、僕達の負担が増えちゃった……」

「はは。無理をしない程度で頼むよ」

「分かったよ」


 次の日、カレンの依頼も会った事だし、僕はいつも通り魔大陸まで狩りに行こうとしたんだけど、いつきさんから呼び出し止められた。


「みつきさん。今日は狩りではなく、ギルドから指名依頼が来ています」

「げっ……。指名依頼?」

「はい。今回はみつきさんだけですね」

「僕だけって時点で嫌な予感しかしない……」


 冒険者ギルドの指名依頼をするという事は、厄介な緊急依頼の事が多い。

 嫌だなぁ……。


「今日は都合が悪いって事にできない?」

「できません。グダグダ言ってないで、行って来てください」

「うぅ……わかったよ」


 僕は嫌々冒険者ギルドへと向かう。

 

 あれ?

 今日は冒険者が少ない気がする。いつも、この時間は依頼の奪い合いをしているのに。

 受付も心なしか人が少ない気がする。


「こんにちわー」


 僕は勇者専用受付で声をかける。いつもは誰かしらが座っているのだが、今日は誰もいない。

 暫くすると、あまり見ない女性が出てきた。


「はいはい。って、黒姫様」


 受付の女の人は僕の顔を見ると依頼受領書を取り出す。


「指名依頼ですよね。こちらに記入お願いします」

「うん。それで、今日はどういった依頼なの? わざわざ指名依頼にしてくるくらいだから緊急なの?」

「いえ、緊急という訳ではありません。今回はバトスさんと共に新人研修です」

「え? バトスさんも一緒なの?」


 バトスさんといえば、最近はアロン軍の兵士の特訓や冒険者の特訓で忙しいはずだ。それなのに新人研修なんかをさせていいんだろうか?


「今回はバトスさんが冒険者ギルドに依頼しているので、特別な新人研修だと思ってください」


 特別な新人研修ねぇ。


「分かったよ。場所は?」

「地下訓練場です」


 地下訓練場といえば前にバトスさんと模擬戦をしたところだっけ?

 僕はあまり地下の訓練場にはいかないから久しぶりだね。


 地下訓練場には三人の冒険者とバトスさんが立っていた。


「おぅ。みつき、遅かったな」

「遅いも何も、依頼を知ったのが今日なんだよ」

「そうなのか? 一週間前に依頼を出してたんだがな」

「そうだったの? いつきさんは知っていたのかなぁ……」

「知っていたはずだぞ。依頼料の交渉をしていたからな。お前が逃げると思って言わなかったんじゃないのか?」

「うっ……。確かに、その通りかもしれないけど……」


 僕はバトスさんから、依頼内容を聞く。

 どうやら、この三人は最初からゴールドクラスで期待の新人だそうだ。それで、ゆーちゃんの力を借りて王種との模擬戦をするらしい。


「ちょっと待って。ゆーちゃんの作り出す王種は危険な部類だよ? 死人が出るよ?」

「そのために俺とお前がいるんだろう。それに今回はゴブリンに【ひーる】をかけるんじゃなく、ケダマに【ひーる】をかけて貰う。ケダマの王種なら問題ないだろう?」

「ケダマに王種っていたっけ?」

「何かしらいるだろう?」

「僕は知らないよ。めちゃくちゃ嫌な予感がするんだけど……」


 説明は聞いたので三人に自己紹介をしてもらう。

 一人は魔導士の女の子で名前はアーネ。もう一人は戦士風の中年男性でラルスさん。最後の一人は……。

 この人だけは別格だ。

 腰にレギーナ帝国の将軍、ゴロクさんが使っていた剣と同じ物を差している。確か、刀って名前の剣だっけ?

 名前はミカルというそうだが、僕を睨むような目で見ていた。


「さて、今日はお前達の新人研修をする。新人研修といってもお前等はランクも高いから、特別に俺達が担当する事になった、俺がバトスで、このちっこいのが勇者黒姫、みつきだ」


 ちっこいは余計だね。

 僕が黒姫と聞いて、アーネさんの目が輝く。なんだろう?

 しかし、ここでミカルが口を開いた。


「アロン王国の英雄が指導してくれるからと大人しく来てみたが、でかいおっさんは良いとして、もう一人はガキかよ」


 あ?


「おい。ミカルだっけか、止めとけ。こいつは見た目以上に凶暴だぞ」

「何が凶暴だよ。時間の無駄だ。私は帰らせてもらうぜ。ガキはママのおっぱいでもしゃぶっときな」


 あ?


「お、おい。みつき、キレるなよ」

「キレテナイヨ?」


 ただ、ムカつくだけ。


「コイツ、イッカイドツイテモイイ?」

「はぁ……」


 バトスさんは額に手を当てて深いため息を吐く。


「分かった。ちょっと待ってろ」


 そう言って、バトスさんは二本の木剣を持ってきて、僕達に渡す。


「お互い不慣れな武器だと思うが、それを使って模擬戦をしてみろ。身体強化以外の魔法は駄目だ。みつき、お前も【ゼロの魔力】は使うな。闘気だけだ」

「ウン。ワカッタヨ。コイツヲボコボコニシテイインダヨネ?」

「はぁ……。ミカル、お前が勝てたら自由にしていい。お前が負けたら俺達に従え」

「ふふふ。このガキに勝てたら、あんたが相手してくれるのか?」

「別にいいぞ。みつき」

「ナニ?」

「殺すなよ」


 僕は一気にテンションが下ってしまう。

 バトスさんが間に入ったから怒りが収まっちゃった。

 でも、ミカルもやる気みたいだし……。

 まぁ、いいか。


「ガキ。謝るのなら今だぞ?」

「はいはい。あんたが僕に勝てたら謝ってあげるよ」


「それじゃあ、一本勝負、始め!!」


 バトスさんの合図とともにミカルが僕に迫る。

 思ってた通り結構速いね。僕はミカルの剣を避けて首を取りに行くが、これを避けられた。


「避けられると思わなかったよ」

「あんたこそやるじゃない。少し本気で行くわ」


 あれ?

 口調が変わった……。

 ミカルは剣を構えて、僕を睨んだ。

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