6話 商人いつき
誤字報告、いつもありがとうございます。
ゆーちゃんが回復魔法を使えないことは予想外だったけど、まぁそれは仕方が無い。
回復薬が高額だったこともこの際置いておいて、まず買うものを確認しないと……。
あ、そうだ。ゲンさんが魔大陸に来ていた時、道具袋を使っていたよね。
道具袋は見た目は小さい袋なのだが、在り得ないくらいの荷物が入る。あれを見た時、村の皆も驚いていた。
アレは欲しい。ここに売っているかな?
「いつきさん。道具袋って売ってる? できれば欲しいんだけど……」
「ありますよ。一つ100万ルーツです」
「ひゃ……!!」
ぼ、僕の聞き間違いかな? 何かあり得ない金額を言われた気がするんだけど? 聞き間違い?
そ、そうだよね。聞き間違いだよね。
もう一度、聞き直してみよう。
「も、もう一回値段を言ってくれるかな?」
「100万ルーツです」
き、聞き間違いじゃなかった!!?
ど、どうしてそんなに高いの!? ゲンさんはそんな高級品を持ち歩いているの!?
「い、いつきさん!! 道具袋はどうしてそんなに高いの!?」
僕がそう聞くと、いつきさんは呆れた顔になる。
いつきさんは、道具袋が超高級品である理由を教えてくれた。
道具袋というのは、小さな袋に特殊な空間魔法を封じ込めて定着させるという技術を使っている様で、この技術は、王城で勤務する宮廷魔導士の中でも、一握りのエリートにもできるかどうかわからないというほどの高度な技術だそうで、そんな技術を使った道具袋が安いわけがないということだ。
ゲンさんが持っているのは、命懸けで魔大陸に買い出しに行くためにいつきさんが取り寄せたらしく、そんなにホイホイ買えるものじゃないらしい。
命懸けというけど、ゲンさんは村に来ると、物凄くリラックスしていたような気がするけど……危険なんだ……。
確かに、道具袋のことを、よくよく考えれば物凄い技術だ。
魔王城でも持っている人がいなかったことを考えると、これを開発した人はきっと凄い魔導士なんだろうな。
残念だけど、頑張って稼いで買うしかないね。
「いつきさん。道具袋は諦めるよ。このお金で薬草と毒消し草を買えるだけ買いたいんだけど」
「どうしてですか? 私が見たところみつきさんは強そうなんですけど、そんな大量に薬草が必要ですか?」
「必要だよ。僕はただの村娘だからね。魔大陸以上の魔物が現れたら、僕は簡単に殺されちゃうからね」
いつきさんは不思議そうな顔をしているけど、誰が何と言おうと僕はただの村娘だ。
弱い魔物を狩るくらいはできるけど、強い魔物は無理だ……。
いつきさんから薬草20個と毒消し草4個を買って、店を出ようとしたとき、いつきさんに呼び止められる。
「何?」
「みつきさん。これを差し上げます」
こ、これは道具袋!? でも100万ルーツなんて払えないよ!?
僕が戸惑っていると、ゆーちゃんが僕の前に出る。
「おまえ、なにをたくらんでいる?」
「企むだなんて人聞きの悪い。私はみつきさんとの縁を切りたくないだけですよ。それに、私としても打算はありますよ」
打算?
僕には何もできないよ?
「みつきさんがクエストで得た魔物素材を、優先的に売って欲しいのですよ。流石に強制はしませんが、できれば優先して欲しいと思いまして」
「それくらいならいいよ」
こんな高級な道具袋をタダでもらえるんなら、優先でもなんでもするよ。
ゆーちゃんは僕を止めようとしているが、こんないい条件ないよ?
「ありがとう。これからよろしくね、いつきさん!!」
「はい。よろしくお願いしますね。みつきさん」
僕達はゲンさんのお店を出て、冒険者ギルドに帰る。
今日はもう夕方だ。そういえば食事はどうしたらいいんだろう?
冒険者ギルドに帰ってくると、ちょうど冒険者達がクエスト終了の報告の為に帰ってきているらしく、ロビーは賑わっていた。
だけど、勇者専用の受付には誰もいない。
僕が勇者専用の受付に近付くと、冒険者達が僕を見る。
僕は注目されるのが苦手なんだよね。
「ラビさん。上で寝泊りしている人は、食事をどうすればいい?」
「あ、みつきさん。おかえりなさい。勇者としてこの王都に転移して来た人と、そのパーティには食事が出ますよ。この券を持ってギルドの2階にある食堂に行ってください。そこで食事ができますよ」
「ありがとう。ゆーちゃんと一緒に行くよ……って、ゆーちゃんは?」
僕がラビさんと話をしている間に、ゆーちゃんは入り口付近のソファーで寝ようとしている。
「ゆ、ゆーちゃん!! そんなところで寝ちゃダメ!!」
「めんどい」
「ダメ!! ご飯食べて一緒に寝るよ!!」
僕はゆーちゃんを抱っこして、食堂のある2階へと上がって行くことにした。
前のクジ引きと違い、道具袋の値段を超高級にしました。
まぁ、あまり意味は無いんですけどね。
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