第024話 異世界の授業内容
リーフの紹介を済ませた後、私は食堂に向かって朝食を済ませる。昨日知り合った、ジュン、ニース、サナーと出会えればいいなと思っていたが、出会えなかった。夕食は一緒に摂れたらいいなと思いながら、学園へと向かう。
今日の授業は朝から政治学、経済学。午後から修辞学を学ぶ。貴族の長子ともなると、このあたりは必須科目だそうな。この辺りはやはり異世界独特であると思う。
授業でジュン達と一緒になれれば良いが、彼女達の実家がどんな所で、何を学びに来ているのか、まだ全く分かっていない。今夜あたり、夕食を一緒に出来たら、そのあたりを聞いてみようと思う。
リーフも彼女たちと一緒であれば喜ぶであろう。そうであれば、私の部屋に招いてお茶会もいいかも知れない。お茶会についてエマと相談して準備を進めていこう。
そう考えると、茶葉やお菓子の準備、道具の選別、又、お茶会をするに辺り、招待方法も考えなくてはならない。一応、一通りの作法やマナーは家庭教師のセクレタさんから叩きこまれているが、家に引き籠って勉強一筋だったので、主催者になって招待したり、歓迎する経験をしたことが一つもない。彼女たちには悪いが練習台になってもらおうかと考える。
そんな事を考えながら教室に辿り着き、授業の準備をしていると、アクの強そうな先生がやってきて授業が始まった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふぅ…」
午前の二コマ目の授業が終了し、先生が教室を立ち去ったあと、疲れを感じ、一息ついていた。この世界が元の世界とは異なる世界である事は、家庭教師のセクレタさんの授業で分かっていたはずだが、学園で他の生徒と共に授業を受けると、やはりカルチャーショックを受ける。
セクレタさんから学んだといっても一年ほどのことであり、私の記憶している人生は、圧倒的に前世での玲子の16年間という時間が大半であり、その玲子での人生の事を基準で考えてしまう事が多い。
一時間目の政治学についても、前世の玲子の時代の情報では、テレビや新聞のニュースによって、『汚く、不正で、醜い』とイメージがあるが、政治学の授業で先生はまず初めに、政治学無しに『清く、正しく、美しく』は実現できないと言い放った。
また、政治を運用するための後ろ盾となるものは、玲子時代は司法、行政、立法の三権分立と習っていたが、この世界では力、金、情報の三つであると教わった。どれだけ脳筋な社会なのかと思ったが、その理由を聞くと妙に納得できるのが腹立たしい。
力が無ければ正義を実現できない。素晴らしい理想を掲げても金が無ければ食っていけない。正しい情報が無ければ正しい判断ができない。なので、この三つが無ければ正しい政治は出来なくて、三権分立はその後らしい。
次に、経済学を学ぶのは玲子時代を通して初めてであるが、その経済学についても軽くカルチャーショックを受けた。金本位制については玲子時代の歴史や社会科の授業で聞いたことがあるが、この世界では穀物本位制がメインであるそうだ。
穀物本位制ってなに!?って思ったが、先生が金本位制と対比させて説明してくれた。金本位制では、金は腐ることがないので、持てる者が際限なくため込んでいくので、経済の流動性がなくなる。しかし、穀物本位制では、穀物は腐るので、腐る前に投資や消費に廻されるので、経済の流動性は保たれるという事らしい。
なんとなく納得できる話ではあるが、怪しい会社のセミナーでも受けている気分であった。
新しいことを学んでいくことは楽しいことではあるが、玲子時代の常識と対比させてしまうので、頭の中の整理が追いつかず、なんだか気疲れしてしまう。
さて、昼食でも摂ろうかと立ち上がると、前触れなく私を見下ろすディーバ先生の姿があった。
「なにか御用でしょうか? ディーバ先生」
突然のディーバ先生の姿に私は、心臓をビクつかせながらもポーカーフェイスで尋ねる。
「他の生徒から聞いた話であるが、君は精霊を使役しているそうだな」
ディーバ先生は、眉間に皺を寄せながら聞いてくる。
『昨日の今日でもう噂が広まっている…というかそれは良いのだけど、どうしてディーバ先生が来るのであろう…』
「はい、確かに精霊と一緒に居りますが、使役しているのではなく、友人としております」
「そうか、兎に角、どの様な精霊か分からぬが、学園側としてはその精霊の詳細を見極めた上で、同行を許可するかどうか、判断せねばならない。なので、今日の授業終了後、再び私の事務室に出頭するように」
二日続けてのディーバ先生の事務室への出頭で、皆の視線が注目し、私に対するヒソヒソ話が聞こえてくる。
「分かりました。今日も午後の一コマ目まで授業がございますので、その後に先生の事務室に出頭致します」
「必ず、出頭するように」
またしても、念を押されてしまう。そんなに私が逃げ出そうとしているのであろうか…まぁ、出来る事なら逃げ出したいが…
ディーバ先生はそう言い残すと、立ち去っていく。私はしばしその背中を見送っていたが、私自身に注目が集まっているので、私もそそくさと教室を後にした。
さて、どうしよう…このまま学園の食堂で昼食を摂ろうとしても、先程の事で衆目が集まるだけだと思う。では、一度、寄宿舎に戻り、そこで食事を摂ることにしよう。そこであれば、わざわざ寄宿舎に戻り食事を摂るものもいないので静かに昼食を摂れるであろう。
こうして、私は寄宿舎の食堂で昼食を摂り、午後の授業へと臨んだ。
午後の授業は修辞学。玲子時代では聞いたことのない学問だ。どんな学問であるかと聞いていたら、ディベートやプレゼンテーション、コミュニケーション能力を高めて、聴衆の心を誘導するための学問であるようだ。これこそ、怪しい会社のセミナーの様な内容で、悪用すれば、とんでもない事になりそうな学問である。こんな危ない学問を教えていいのかと思っていたら、その逆で、他国の工作員などに悪用された時、それらに対応する為に教えているそうだ。
こういう話を聞くと、いかに玲子時代の世の中が平和で、この世界が平和の様に見えて、危うい状況の中にいるかを思い知らされる。
先程の政治学やいまの修辞学を学ばないと、貴族として生きていけない世界であるのだ。
私は貴族のイメージとして、玲子時代に小説やコミックなどの物語を見て、傲慢で我儘なだけの存在であると思っていた。しかし、この世界の貴族は、自分の地位や立場を維持するために相当な学問を学び、努力を積み重ねなければならない。それらを怠れば、すぐに足元が崩れ、貴族の地位を失う事になるであろう。
そんなことを考えながら授業を受けていると、授業の終了を告げる鐘の音が響き渡る。
『さて、午後の授業が終わった。これからディーバ先生の所へ向かわないと…』
私は荷物をまとめ立ち上がると、ディーバ先生のいる礼拝堂へと向かった。
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※はらついの次回は現在プロット作成中です。




