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第65話 国の最大の危機になったら勢揃いする14人兄弟


「そっちのチーム、まともな人間は助太刀しちゃいけないって決まりでもあるんスか?」


 キャピキャピ毒舌アイドル、ギトギト強烈オタク、ゴクゴク拉麺ババア。


 濃厚すぎるキャラクター達が次々と登場する光景を目の当たりにし、フメルタは疲れ気味に呟く。


「アイドルは百億歩譲ってヨシとしまスよ。でもオタク軍団やおばあちゃんまで来られたらさすがに突っ込ませてもらうッスわ。てかそのおばあちゃん何なんスか? オレの攻撃、丸飲みされたんスけど。一応さっきのは高圧水流って感じで撃たせてもらっ」


「なんだい、男のクセにグチグチうるさいねぇ! そんなに自分の技に自信があんなら…………自分で食らっときな小僧!!」


 おばあちゃんは大きく体を仰け反らせると、先ほど飲み込んだフメルタの塩水(ソルトウォーター)を……。



「ブーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!」



 口から一気に放出したではありませんか(笑)



「ちょ……そんなの反則っ…………ギャアアアアアアアアアアア!!!」



 フメルタは思わぬ反撃に手も足も出ず、大量の水を真っ正面から食らってしまう。


 そして激しい断末魔とともに、遥か彼方へと吹き飛ばされていった。



 えー、というわけでただいまの勝負はババアの勝ちとなりました。



 幹部戦の初勝利を、後期高齢者が収めました。



 辺りを何とも言えない空気が支配する。


 敵味方を問わず、隣にいるお互いの様子をチラチラと伺うばかりで、誰も喋らない。


 サイクロプスさんとかあまりの気まずさに爪いじくってるもん。



「…………なんか、戦争とかバカらしくなってきたな」



「なんってこと言うのおにーさんゴラァ!!」


 勇者から飛び出た衝撃の一言を聞いたメリカが、すかさず俺の胸ぐらを掴み上げる。


「いやだってさ、その辺のエキストラ老婆が余裕で勝てるような敵に、わざわざ勇者になってパーティー組んで挑む必要ないだろ俺」


「いっ……今のはフメルタって人が弱すぎただけだって!! もしくはあのおばあちゃんが強すぎただけだって!!」


「じゃあもういっそのこと、その強すぎるババア一人で魔王のとこ行かせればいいじゃん。時間巻き戻してまで俺と真剣勝負したがってた魔王が、自分の城に単身で殴り込んできたトンデモおばあちゃんを目の当たりにした時、どこまでパニックになるのか見たいでありんす」


「いや『見たいでありんす』じゃないよ!! あんまりおばあちゃんに救世を丸投げするものじゃあないと思うよあたしは!!」


 メリカは俺の体をグワングワンと揺らしながらツッコミを続ける。酔う。


「なんだよ……英雄になったババアの笑顔のアップで幕を下ろす冒険嘽が一つくらいあってもいいだろ」


「ダメに決まってるじゃん!! 勇者でしょおにーさん!? こんなポッと出のおばあちゃんにオイシイところ全部持ってかれていいの!?」



「こんなアホくせえ戦いにオイシイところなんかねえよ」



「言い切りやがったコイツ!! ほらほら、おにーさん陣営も魔物陣営も、みんな立って立って! 世界の命運を賭けた戦いなんだからやる気出してよお願いだからさ!」


 パンパンと激しく手を叩きながら、すっかり戦うモチベーションがなくなった俺たちを必死に鼓舞するメリカ。どしたの急に真面目になっちゃって。


 やる気出せっつってもなぁ……フメルタも倒したし、雑魚魔物さんたちも色んな意味で戦える状況じゃねえもん。



「もうバトルなんていいから帰って爆睡……………は?」



 目を疑った。


 草原地帯の遥か上空に、先ほどよりも遥かに巨大な魔法陣が再度出現。


 理解が全く追い付かぬまま、一回目とは比べ物にならないほどの量の魔物が、次々と地上へと放たれていく。


「はあああああああああ!!? なんっだよそれ!? さっきので終わりじゃねえの!? あんな数に攻め込まれたら今度こそ詰むんだけど!!」


 ここにいる魔物も完全に片付いてねえってのに、更に多くの敵が追加されるとか……。


 しかもヒューサさんの地雷魔法も一回目で使っちまったし、今度はあの数がそのままこっちに……。


「うひゃあ……アレはさすがにあーしの魔法使ってもムリだわ。バカウケすぎ」


「レッカちゃんが葉巻を吸っているでござる!! ぜひとも我輩の体に押し付けてほしいでござる!!」


「あの魔方陣から出てくるのが一本一本のラーメンだったら、あたしが全て(すす)り尽くしてやるんだがねぇ……」


「いやいやいや呑気すぎるだろテメエら!! てか今更だけど国民は全員、城の中に避難してんじゃねえのかよ!! 何で当たり前のように続々と出てきて……」



「ハッハー!! これがワガハイの国……シルベラの国民たちなのサ! 最高にイカしてるだろ、ヨシチャン!?」



 こんな濃いキャラなのにすっかり存在忘れてたわ。


 後ろを振り向くと、そこにはシルベラ国の国王にしてセクリちゃんの父親……バッシャル国王が、ヒノタリア女王とバカ王子と共に立っていた。


 そしてその後ろには、城に隠れて安全を確保されていたはずのシルベラ国民たちが、様々な武器を手に持ち、こちらの方に真っ直ぐ歩いてくる。


「お父さん、お母さん、兄貴まで…………どうしてここにいるのよ!? ていうか何で国民のみんなを城の外に……」


「無事でなによりだヨー、セクリナータ! ユーも知っての通り、シルベラの民はどいつもこいつもお祭り好きの暴れん坊ピーポー…………隠れてビクビクしてんのは性に合わネェってんで、自分達から城の外に飛び出していったんだヨー! まったく、愛すべきバカどもサ!」


「でもお父さん、もうすぐここに大量の魔物が……!」


「敵が何万何億いようが関係ナッシング! 自分(テメー)の場所は自分(テメー)で守る…………それがシルベラに生まれたヤツらの生き様ってもんだロー?」


 今度は足止めされることなく、すぐに全ての魔物の群れがこちらに向かってくる。


「いいかヤロー共……あんなダセェ奴等にこの国を滅茶苦茶にされるなんざ冗談じゃネェ。ワガハイたちの熱いソウル……とくと見せつけてやろうゼ」


 バッシャル国王は持っている杖で魔物たちの方を差し、冷静な口調で国民たちの士気を充分に高めたのち、大きく息を吸った。



「さァ…………楽しい祭りの始まりダァァァァァァ!!」



 バッシャル国王の大声とともに、血気盛んな民たちが一斉に魔物の群れに立ち向かっていく。


「わーい、なんか盛り上がってきたぁ!! あたし、バッシャル王のああいうところが好きなんだよ! おにーさんもそう思うでしょ?」


「バカ言え。国のトップの判断としちゃ最低最悪だろこんなの」


 いくら荒くれ者ぞろいとはいえ、一度は避難させた民を戦わせるなんて正気の沙汰じゃねえ。


「まあ……嫌いじゃねえけどよ、こういうの」


 でも確かに……こんな風にギャーギャー暴れ回ってる方が、この国らしいわな。



「魔物たちからこの国を守るニャン!!」


「魔物たちからこの国を守るピョン!!」


「魔物たちからこの国を守るワン!!」


「魔物たちからこの国を守るケロ!!」


「魔物たちからこの国を守るパオ!!」


「魔物たちからこの国を守るコケ!!」


「魔物たちからこの国を守るモー!!」


「魔物たちからこの国を守るピヨ!!」


「魔物たちからこの国を守るチュー!!」


「魔物たちからこの国を守るブー!!」


「魔物たちからこの国を守るヒヒン!!」


「魔物たちからこの国を守るウホ!!」


「魔物たちからこの国を守るメー!!」


「魔物たちからこの国を守るカナカナ!!」



 えっえっ、動物園!?



 あっ、そういや前に、門番さんは全部で14人兄弟って言ってた気がする!!


 いやだからって全員が変な語尾になることある!? 親の教育方針が気になる!!


 そして末っ子の『カナカナ』はさすがにチョイス渋すぎるだろ! お兄ちゃん達がメジャーな動物を取っちゃったばかりに!!


 そもそも発言内容が同じなんだから一斉に喋ればいいのに……時間が14倍かかっちゃうよ……。



「何をボーッとしとんねん、ヨシハルくん!!」



 筋肉ムキムキかわいいボイスの門番14人衆の登場で脳ミソがバグりかけていた俺の背中を、セクリの母親であるヒノ様がバンと叩く。


「ここはうちらに任して、アンタらは(はよ)う魔王の奴をしばき回してこい!」


「ヒノ様……そ、そんなこと言ったってどうすれば……」


「あの魔法陣を見てみぃ。あない仰山(ぎょうさん)の魔物が出てきよるってことは、アレは恐らく魔界……魔王の()る場所に繋がっとるはずや。アレに向かってピョーンと飛び込んだったら、きっと魔王城に行くことができる!」


 ピョンとか言わないでまた門番のこと気になっちゃうから。


「でも、こんなに魔物がいるんすよ!? このままじゃこの国は……」



自惚(うぬぼ)れるなよ、サカギリ ヨシハル」



 変態バカ王子……!


「ボク様たちの手にかかればこの程度の低劣な雑魚ども、貴様なんぞの手を借りずとも容易に片付く。それに、このままチマチマと下っ端を倒していても、いつまで経っても戦いは終わらぬではないか」


「バカの言う通りや。敵の大将ぶっ倒したらんで、どないして勝つっちゅうねん?」


「マ、ママ上……ボク様はバカじゃなくてヴァカなのだが……ちゃんと下唇を噛んで……」


「ええかヨシハルくん? アンタは余計なこと考えやんと、いつも通りアホみたぁな顔して全力で突っ走ったらええ。この戦いはアンタが…………いや、『アンタらが』終わらさなアカンのや」


 ヒノ様とバカ王子は、立ちはだかる魔物たちを火炎魔法で焼き払い、進路を作ってくれた。


「お母さん……兄貴……!!」


「まったく、本来ならばボク様が魔王を倒し、英雄と崇められたいところだが……ボク様はセクリナータに愛されさえすればそれで良い! だから英雄の座は貴様に譲ってやる! 感謝するがよいわサカギリ ヨシハル!! ヌゥゥゥゥゥゥゥハッハッハ!!」


「うちらが出来るんはここまでや。大事な娘の命、アンタに預けるわ。死ぬ気で守らんかったら承知せぇへんよ、勇者サマ」


 俺たちは何も言わずヒノ様に頭を下げ、壮絶な戦いを繰り広げるシルベラ国民と魔物たちの中を走り抜け、草原にある巨大な魔方陣へと向かった。



「いやボク様にもペコリってしろよ貴様ら!!」



 ほんと、この国はどうしようもねえ馬鹿ばっかりだな。


 安全なお城の中に、大人しくコソコソ隠れとけばいいのに。



 国王さんの言う通り…………最高に『イカれた』良い国だわ。



「ご武運をお祈りしますニャン~!!」


「ご武運をお祈りしますピョン~!!」


「ご武運をお祈りしますワン~!!」


「ご武運をお祈りしますケロ~!!」



 やばいやばい地獄のリレーが始まった早く行こう。



 アンカーの『カナカナ』が喋る前に。




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