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第60話 服や髪が同じだったら半分くらい気付かない勇者御一行サマ


 俺の名前はサカギリ ヨシハル。


 ごく普通の男子高校生……だったのは今は昔の話。


 いきなりワケの分からん異世界に飛ばされ、いきなり勇者に任命され、いきなり魔王(きらい)の討伐へと出発させられた……なんともかわいそうな美形だ。


 旅の途中で出会ったおかしな仲間たちと協力し、どうにかこうにか魔王(にくたらしい)の城に辿り着き、魔王(むかつく)を卑怯な…………もとい、完璧に卑怯な作戦で追い詰めた。


 までは良かった。


 勝利を目前にして油断しまくっていた俺に、あの魔王(におう)はとある呪いを掛けやがった。



 呪いの名は『ベタノロ』。



 その名の通り、冒険する上でベタな展開……すなわち異世界マンガやアニメにありがちな行動をしたり、よくある展開が起こってしまうと、俺の身に様々な苦痛が降りかかる、そんな呪い。


 いみわかんない。


 しかもこの呪い、時間を冒険のスタート地点まで強制的に巻き戻してしまうという害悪すぎる副作用つき。


 その代わり発動者の魔王(きたない)の魔力はしばらくスッカラカンになるみたいだが、そんな事どうでもいい。


 スゴロクで俺のゴール直前に『ふりだしにもどる』のマスを無理やり踏ませやがった魔王(じじい)を、必ず叩き潰さなければ。


 こうして冒険が二周目に突入した俺は、泥だらけ傷だらけになりながらも、どうにかこうにか一周目で共に戦った仲間を集めることに成功した。

 


 そして今日、魔王(あほ)軍との全面戦争が始まる。



 スタート地点であるこのシルベラ王国でチンタラチンタラと遊んでいたヨシハルくんたちに、シビレを切らした魔王(はげ)が、手下を総動員させて今からここに攻めてくるらしい。


 こっちから再び魔王(へやくさそう)の城まで出向く手間はなくなったものの、面倒なのは変わらない。


 世界の命運がこの手に握られている。


 しかも、ベタノロという厄介極まりない縛りつきで。


 コイツのおかげで、敵の弱点を突いて戦うという定石を踏むこともできず、更に『最初に戦う敵がスライム』など、全く俺に責任のない状況でも、それがベタである限り呪いは発動してしまう。


 理不尽にも程がある。


 とにかく、早く魔王(せいりてきにむり)を倒して呪いを解かねえと……!



「ふいい……しっかし天気いいなぁおい。こりゃお弁当でも持ってくるべきだったかね?」



 決戦の日に相応しくない、なんとも平和な青空を見上げ、ボンヤリと一人言をこぼした俺の方へ、五人の仲間たちが一斉に顔を向けた。



「これから世界の命運をかけて戦う人とは思えないほど表情筋がユルッユルだねおにーさん。戦争とピクニックの判別できてる?」



 メリカ=テレット。


 俺がこの二周目の冒険で初めて出会った元気ハツラツ少女。


 まだほんの数日しか一緒にいないが、ボケもツッコミも弾丸役もできる万能さから、すっかり相棒的存在だ。


 

「オーウ……ベリー ベリー キンチョウスルデスネ……デモ ミー ガンバテ タタカウヨ ソシタラ セカイ ハッピーネ」



 セクリナータ=シルベラ。


 今俺たちがいるシルベラ王国の王女で、一周目で最初に仲間になった人物。


 身分に相応しい気品と圧倒的な知識量を持ち合わせており、このパーティーでは一番の常識人。


 だが、キレると一気に暴力的になったり、褒められると茹でダコ状態になり行動不能に陥ったり、重度のアイドルオタクであったりと、彼女もまた、決して完璧ではない。



「ガチガチの汗だくじゃねえですかシルベラ王女さん、情けねえですね。あと、ウチは後ろからアンタらのサポートに回ろうと思います。痛いのも死ぬのもまっぴらゴメンなんで」



 クムン=ハレープ。


 セクリと同じく一周目からの仲間で、超がつくほど無気力で怠惰な少女。


 だがアーチャーだけあって弓の腕前は本物で、純粋な戦闘力だけでいえばこのパーティー内でもトップクラスだろう。


 ただコイツはマジで眠くなったら戦いの最中だろうと何だろうと帰りやがる可能性があるんで、しっかり見張っておこう。


 

「ズッ、ズルいですわクムンさん! わたくしだって痛いのはイヤですのよ! あっ、でも女性の方に傷付けられるのならイイかも……うふふふ…………ふぁぁ……」



 メノージャ=ロエリー。


 一周目で最後に仲間になったアルラウネ。


 極端な同性愛者かつ男嫌いであり、女が近付くと発情し、男が近付くと気絶する。


 昨晩は遅くまでエロ本を読み漁っていたらしく寝不足のご様子。決戦前日に何やってんだコイツ。


 ツタを用いた物理攻撃と、対象を魅了状態にするチャームフレグランスといった魔法攻撃の両方が扱える、変態だが強力な魔物だ。



「気が合いますねメノージャさん。まあワタシは傷付けるのも傷付けられるのも大好物ですが。とりあえず魔王の配下にパイオツの大きな方がいることを切に願っています」



 ヒューサ=テレット。


 メリカの母親である絶世の変態美女。


 かつてはその名を知らぬ者がいないほど優秀な魔導師であったらしく、今でもその実力は衰えていない。


 魔王軍の配下である女科学者のアタラポルトに両親を殺された過去を持つ。


 夫はクムンの師匠でもあるジレゴという名の人物で、アタラポルトを倒しに行くと言って家を出ていったきり、現在もなお消息不明だそうだが……。


「……俺が言えた義理じゃねえが、お前らもびっくりするほどいつも通りなのな」


 メリカも、セクリも、クムンも、メノージャも、ヒューサさんも。


 皆、普段と何も変わらない。


 それが今、すごく安心する。


「誰一人欠けることなく、全員でここに帰ってこよう。約束してくれ……絶対に死なねえって」


 俺の言葉に五人が頷く。


 まっ、殺しても死なねえような厄介者ばかりだ。


 こんな約束、無意味だけどな。


 たとえ何千何万の魔物が相手でも、コイツらがいれば余裕で勝てる気がする。


 コイツらがいれば、何でもできる気がする。



 きっと、世界だって救える。




「てか今気付いたんだけどこいつセクリじゃなくね?」




「アンタほんとぶっ殺されたいの?」




 突如、背後から殺意たっぷりの声が聞こえてきた。


 振り向くと、顔中に青筋を張り巡らせたセクリちゃんの姿が。


「ハイヒールが脱げちゃったから急いで履き直して追い付いてみたら、さっきまで自分がいたはずのポジションに縦にも横にも巨大な黒人のオッサンが、ごくごく自然にパーティーに溶け込んでた時の私の気持ち……アンタに分かるかしら?」


「いや悪い途中までマジで気付かなかった。だってほら、このオッサンもベージュ色セミロングだし白ドレスだし赤ハイヒールだし、何の違和感もなかったわ」


「ベージュ色セミロングで白ドレスで赤ハイヒールのオッサンが自分のパーソナルスペースにいる時点で違和感覚えなさいよ。アンタぜっっったい最初から気付いてたわよね……?」


 冷静な口調でそう言うと、俺に強烈なチョークスリーパーをかましてくるセクリ。


「なぁにが『誰一人欠けることなく、全員でここに帰ってこよう』よ!! 思いっきり私が欠けてるじゃないのよこのバカヨシハル!!」


「ほげえええええええええいたいいたいいたいくるしいくるしいくるしい!! すみませんすみません初めから気付いてました!! ただなんかいきなりセクリにそっくりな格好した黒人の巨漢が混ざってきたんでクソ面白くてしばらく泳がせてました!! やめてやめて頭とれる頭とれる!! 助けてくれ偽セクリ……改めニセクリ!!」



「オーウ……ストップストップ ボウリョク ヨクナイヨ ブラザー」



「誰がブラザーよ!! そもそも何なのコイツは!? さっきまでどこにも居なかったじゃないこんな女装ジャンボ!!」


 混乱したセクリは、俺に技をかけるのをストップして頭を抱える。


 いやホントに何なんだよこの巨大なオッサン。


 何でセクリのファッション完コピしてんだよ。

 

 さっき皆に『お前らもびっくりするほどいつも通りなのな』って言ったとき、笑い堪えるの必死だったわ。


「まあまあ別にいいじゃねえか。セクリとニセクリで名前も似てるし」


「そりゃ似るでしょうよアンタが勝手にニセクリ呼ばわりしてるんだから!! ちゃんとホントの名前聞いたの!?」



「ミーノ ナマエ ソクリナーチョ=スルベラン イイマス ヨロシク ブラザー」



「だからブラザーって呼ぶな!! あと名字も名前も絶妙に似てるの腹立つわね!! ぬああああもういいからどっか行きなさいよアンタ!!」


 怒りのあまり半狂乱状態のセクリに怒鳴られ、ソクリさんはガックリと肩を落として去っていった。


 よく考えたら悪いこと一つもしてないのにかわいそう。容姿がセクリだったばっかりに。


「お、お願いだから戦いの前にムダな体力を消費させないでよ……大声ツッコミとか慣れてないんだから私……はあ……はあ……」


 セクリちゃん疲労困憊。ごくろうちゃん。


「ていうか、ヨシハル以外の皆はあのソクリナーチョとかいう気持ち悪いオッサンに違和感なかったわけ?」


「あたしは赤ハイヒール履いてたから気付かなかったなぁ。ハイヒールもちゃんと赤かったし、何よりハイヒールが赤色だったから」


「ウチは当然分かってましたけど、めんどくせえから別に言わなくてもいいかなって。本物より強そうでしたし」


「わたくしは特に不信感は抱きませんでしたわね。ちょっといつもよりサイズが大きいなぁとは思いましたけれど、普通に成長期かと」


「オレもわっかんなかったッスね~。そもそも昨日会ったばかりでそんな面識ないッスから」


「ワタシは教え子なのでギリギリ気付けましたね。非常にギリギリでしたが」


「何で気付いた派と気付かなかった派で接戦なのよ……ヨシハル含めてちょうど3対3とかふざけ……………あれ?」


 セクリがこてんと首を傾げる。



 なんか…………一人多くね?



「やぁやぁおはようございまッス、勇者御一行サマ。気持ちのいい朝ッスねぇ」



 ソクリさんと同じく、なんとも自然に会話に入ってきやがった間の抜けた声の男から、俺たちは一斉に距離を取る。


「よお、昨日ぶりじゃねえか……フメルタ」


 フメルタ=カガエス。


 魔王の配下の一人。



 倒すべき、敵。



「おつかれッス勇者さん。昨晩はよく眠れたッスか? まあ眠れるワケないッスか……なんせオレらとの戦争前日なんスから、お布団の中でビクビクだったッスよね?」


「あいにく昨夜は何の緊張感もなくグッスリだったわ。体が重くてしょうがねえから、寝起きの運動がてらちょっとぶっ倒させてくれや……雑魚配下さん」


「あはっ、大した勇者さんッスねぇ……せっかくなんで出血大サービスでもっかい眠らせてあげるッスよ。目覚める保証はできないッスけど」


 フメルタは、昨日は持っていなかった武器……二丁の拳銃を取り出し、微笑を浮かべたまま銃口をこちらに向ける。



 壮絶な戦いが、ついに始まる。



「フメルタ ツヨソウネ ガンバテ クダサイ ブラザー」


「どっか行けって言ったでしょいい加減にしないとアンタからぶっ倒すわよ」


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