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第43話 弾丸にされたら激怒する弾丸


 空中で一世一代の衝突事故を引き起こしたメリカとハーピーは、ヒュルヒュルと力なく降下して不時着。


 ヨシハルちゃまはセクリとクムンを連れて足早に落下地点へ。


 マネキンのようにぐったりと力なく倒れているメリカを、両手を合わせて拝む。


「よくやった、安らかに眠ってくれメリカ。棺桶には等身大の木彫りヨシハルくん人形を入れてやるから、天国で俺だと思っていっぱい甘えてくれ」


「なにそのキモさ満載の副葬品(ふくそうひん)!! 死出(しで)の旅路に粗大ゴミ持たせないでよ!!」


 あ、生きてた。さすがにタフだな。


「じゃあ小型の木彫りヨシハルくん人形を……」


「サイズの問題じゃないっ!! 何でとりあえず木彫りヨシハルくん人形は棺桶のスタメン確定みたいな空気になってんの!? てか死んでないもん!!」


「それにしても見事な突撃だったぞメリカ=ロケット」


「テレットですけど!!」


 すげえ怒ってんなコイツ。


 まあ分かる。俺がメリカの立場だったら全員の髪の毛を伐採してると思う。


「そうプンスカするなよ。この弾丸役はお前にしか務まらなかったんだ」


「納得できない!! そりゃおにーさんやセクリナータ様は仕方ないにしても、小柄が条件ならクムンでも良かったじゃん!」


「ウチが考えた作戦なのにウチが弾丸役になってどうするんですか。脚本を書きながら主役もやるなんて目立ちたがり屋さんにはなりたくないんですよ」


「てめえの汚泥みてえなプライドなんざ知ったこっちゃねえよ!! てめえが考えたんだからてめえが責任とれや犯すぞメンヘラカスロリータ!!」


 やめてやめて犯すとかメンヘラカスロリータとか言わないで。風紀が乱れる。


「まあまあ、結果的に勝ったんだからいいじゃねえか。ほれ見ろ、お前がこの強敵を倒したんだぞ? スライムに次いで二連勝じゃねえか! お手柄だぞメリカ!」



「えへへ……照れちゃうなぁ…………!」



 任期満了直前の乳歯みてえにグラッグラだなコイツの人格。


「ふにゃあ…………なの~…………」


 ハーピーは目玉をグルグル巻きにしてメリカの下敷きになっている。『ふにゃあ』に語尾いらないだろ。


 それにしても強敵だった。


 弓を封じられただけでここまで苦戦することになるとは。


 ベタノロってのは本当に恐ろしい。


 メリカがいなければヤバかったかもしれないな。


 まあいなかったらいなかったでクムンとか、最悪セクリを同じように弾丸役に選抜すりゃ良かったんだけどね!


「じゃあ気絶している間に羽根をいただいちゃいましょう。お母さんに頼まれてた『美金薬』を早く完成させないと」


 そうだった。そういやそのために戦ってたんだよな。色々ありすぎて忘れてたわ。


 散々痛い目に遭わされたが、俺たちの目的は魔物討伐じゃない。


 トドメは刺さないでおいてやるよ。さっき放ったらかしにして泣かせちゃったしな。


 ハーピーの羽根を五、六本ほどプチっと抜き取り、メリカの巾着袋へ。


「これで残りは一つ」


 ヒノ様のおつかいを完遂するための最後の関門。



「アルラウネの花びら……か」



 正直、次が一番面倒なクエストかもしれねえな。


「よっしゃ! 今の戦いでだいぶ消耗しちまったし、いっぺん町に戻って傷を回復しとこうぜ。そんで万全の体調で森に行ってメノージャに会いに……」


「待ってくださいヨシハル」


 意気揚々と町へ戻る俺を、クムンが呼び止める。


「それよりも先に、ウチに説明することがあるでしょ……ねぇ、王女さん?」


 ああ、それも忘れてた。


 セクリがジレゴさんの弓を持っている理由を、クムンはずっと知りたがっていた。


 俺も気になる。何も事情を知らんからな。


 クムンの師匠であり親代わりでもあったらしいジレゴさんってのは、一体何者なんだ?


「さあ、洗いざらい話してもらおうじゃねえですか……一体アンタはジレゴとどういう関係があるんですか」


「…………分かった、説明するわ。でも、ヨシハルの言う通り皆ボロボロだし、ここに長居するのは危険よ。とりあえずヒューサ先生の所へ行きましょう。このことは、先生がいるところで話した方がいいから」



「その必要はありませんよ、セクリナータ様」



 後方から聞こえた静かな女性の声に、俺たちは慌てて反応した。


「ヒューサ……さん……」


 そこにいた絶世の美女は、相も変わらず妖艶な微笑を張り付けたままでこちらを見据えている。


 彼女は傷だらけの俺たちへ順番に目をやりながら、気品を感じさせるゆったりとした足運びでこちらまで移動してくる。


 やがてクムンの前でピタリと立ち止まり、舐めるように目の前の少女を観察し始めた。


「キミがクムンちゃんですね。小柄で華奢で、やる気がなさそうに見えて、全く隙が見当たらない。気だるそうに振る舞いながらも常に周りを警戒している……面白いです。ジレゴさんが気に入るのも頷けますね」


「あ、あんた……誰なんですか? どうしてジレゴの名前を……どうしてウチのことを……」


「ジレゴさんに会いたいですか?」


 ヒューサさんはクムンの質問を無視して話を進める。


「あっ……会いたいです!! あんた、ジレゴがどこにいるのか知ってやがるんですか!? 早く、早く会わせてください!!」


 願ってもない話にすっかり冷静さを失ったクムンは、ヒューサさんにフラフラと近付きながら懇願する。


「そうですか、分かりました…………なら」


 クムンがヒューサさんの両手が届く範囲まで足を踏み入れた。


 その瞬間。



 赤髪の美女はカッと目を見開き、ニタリと邪悪な笑みを見せた。



「すぐに会わせてあげますね」



 その手には轟々(ごうごう)と燃え盛る炎。


 背筋が凍る。


 脳が全身に危険信号を出す。



「クムンッ!!」



 突然の相手の豹変に固まったまま動けないクムンの元へと全力で走った。


 炎が命中する直前、俺はクムンを抱きかかえたまま前方に転がり、間一髪で直撃を回避した。


「ぶはっ…………はあ…………はあ…………!!」


 極限の緊張状態で十数秒ほど無呼吸になっていた俺は、自分の両腕の中に包まれた仲間の無事を確認し、大きく肩を動かして息を整える。


「あーあ、邪魔しないで下さいよヨシハルくん。せっかくその子をジレゴさんと同じ所に送って差し上げようと思ったのに」


「はっ……はあっ…………どういう……ことですか、ヒューサさん!!」


「そのままの意味ですよ。その子が慕っていたジレゴ=テレットはワタシの夫の名前であり、メリカちゃんの父親の名前…………そして」


 ヒューサさんは俺たち全員に向けて、再び悪魔のような笑みを見せ付けた。



「ワタシがこの手でブッ殺してやった、哀れな男の名前ですよ」



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[一言] ...はい!?超展開!!
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