第三十七話 ステータス確認とVS剣聖
そろそろ期末テスト前なので、来週と再来週は更新無理かもです。ごめんなさいm(_ _)m
頑張ってはみますが、更新できなくても怒らずに待っていただけると嬉しいです。
七月三十一日、今日はアーサーさんと手合わせをする日だ。
朝ごはんを簡単なもので済ませ、今日も朝早くからログイン。
UTOにログインしたボクはベッドで目を覚ます。ボクの周りではリル達が寝ている。
あぁ〜身体がモフモフするんじゃぁ〜。
ちなみに、リル達とは昨日の夜、ログアウトする前に本契約を済ませた。リル達がいつか人化することを祈りながら、全員に武器系のスキルを譲渡した。リルには【剣術】と【盾術】。【剣術】を【片手剣術】、【盾術】を【小盾術】に進化させて、モ○ハンの片手剣使いみたいに育ってほしいなぁ。ステータスのバランスを見ると、イナバはAGI·INT型、ヴァルナはSTR·MND型、リルが比較的バランス型と、ステータスの中でVITが一番高いって子がいないんだよねぇ。まぁ、ヴァルナのステータスで三番目に高いのがVITだからメインタンクはヴァルナに任せるとして、サブタンクとまでは行かなくても、ある程度軽い攻撃くらいは防げるようになってほしいかな。
ヴァルナには【斧術】と【槍術】、あとボクのSPで取得した【鎧】。【鎧】は【重鎧】に進化させてメインタンクをやってもらうつもり。あと、昨日の帰り道でハルバードを背負った冒険者を見たヴァルナが「あれ、やってみたい」と言ったのでその意志を尊重することに。ハルバードを日本語に直すと斧槍なので【斧術】と【槍術】を上げていったら生えるかなと、検証の意味も含まれていたりする。
イナバには【刀術】と【二刀流】と【弓術】。イナバはリルよりもVITが低いので短刀二刀流でのスピードアタッカーが合ってるかな?と。それに、ステータスで三番目に高いのがDEXなので【弓術】も向いてると思って譲渡。魔法も持ってるからいずれは【魔弓術】に進化したら近距離遠距離両方に対応できるようになりそうだから期待。
魔法に関しては、リルが【風属性魔法】と【雷属性魔法】、ヴァルナが【土属性魔法】と【鋼属性魔法】、イナバが【水属性魔法】と【氷属性魔法】を持っている。基本的な属性魔法は過半数を三人で持っているので、大抵のモンスターはこの三人がいるだけで弱点属性を突くことが可能だ。
まぁ、ステータスが魔法向きじゃなさそうな子もいるけど。······三人の中で一番INTが低いヴァルナが三人の中で一番MP多いんだよねぇ·········。しかも、そのヴァルナですらボクのMPの半分もない。イナバは精霊獣だからか【魔力自動回復Ⅱ】と【霊力自動回復Ⅱ】を持ってるから魔法メインでも大丈夫だけど、リルとヴァルナは物理メインで頑張ってもらおう。
そんな訳でスキルやSPが減ったり、昨日一昨日の戦闘でレベルが上がったりした現在のステータスがこちら。
スノウ:竜人(魔竜)
Lv37
HP 1800 MP 6900 AP 1200(×1.6)
STR 610(+250) INT 525(+280)
AGI 660(+200) DEX 650
VIT 50(+380) MND 100
LP0 SP190
エクストラスキル
真·竜魔法
精霊交信
世界樹の加護
淫乱竜
仙闘術
精霊術
種族スキル
竜鱗
竜言語理解
竜眼
飛行
威圧
汎用スキル
熟練爪術Lv5
熟練格闘術Lv6
魔導Lv15
魔力操作Lv23
霊力操作Lv10
召喚術Lv1
槌術Lv1
短剣術Lv1
投擲Lv16
筋力上昇Lv23
俊敏Lv5
器用上昇Lv1
無属性魔法Lv2
火属性魔法Lv24
爆属性魔法Lv3
風属性魔法Lv26
雷属性魔法Lv26
水属性魔法Lv14
氷属性魔法Lv6
土属性魔法Lv15
鋼属性魔法Lv6
光属性魔法Lv12
影属性魔法Lv18
聖属性魔法Lv15
闇属性魔法Lv16
古代魔法·時空Lv11
古代魔法·思念Lv8
生活魔法Lv1
調合Lv1
錬金術Lv1
魔法陣学Lv1
鍛冶Lv1
料理Lv17
付与Lv1
魔力自動回復Ⅲ
一次試験、二次試験の戦闘で魔法のスキルレベルが軒並み上がってるけど、【土属性魔法】と【鋼属性魔法】の二つだけは上がり幅が大きいね。······あ、あれか。黒ずくめの自爆を食い止める時に土属性と鋼属性の『魔槍』をタケノコの如くポコポコ生やしたせいか。【魔力自動回復Ⅲ】でも追いつかないスピードで発動させてたから、スキルレベルがいくつも上がるのにも納得。というか、【魔力自動回復Ⅳ】にはなってないんだね。スキルレベルが全部で十段階だから、普通のスキルより成長が遅いみたい。
······あれ?【召喚術】が全く育ってない·········?ユリアは何度も召喚して一緒に戦ってるし、昨日にリル達とも契約してるけど、なんでスキルレベルが微動だにしてないの?ユリアと契約した時に【召喚術】を習得したのに、ユリアと一緒に行動してもスキルレベルは上がらないって······。わけがわからないよ。
ユリア達のステータスはこちら
ユリア:精霊(世界樹)
Lv18
HP 200 MP 4000 AP 4000
STR 20 INT 640
AGI 340 DEX 70
VIT 10 MND 640
LP0 SP120
エクストラスキル
魔力制御
霊力制御
種族スキル
精霊術
物理無効
浮遊
汎用スキル
無属性魔法Lv15
水属性魔法Lv24
土属性魔法Lv17
光属性魔法Lv23
聖属性魔法Lv24
木属性魔法Lv26
古代魔法·幻影Lv22
回復魔法Lv24
支援魔法Lv29
魔力自動回復Ⅲ
霊力自動回復Ⅲ
リル:魔獣(嵐牙狼)
Lv1
HP1500 MP1200
STR 280 INT 180
AGI 220 DEX 20
VIT 130 MND 140
LP0 SP0
称号:《嵐の加護》
風属性魔法と雷属性魔法の威力+50%
消費魔力-20%
種族スキル
超嗅覚
統率
疾走
汎用スキル
剣術Lv1
盾術Lv1
風属性魔法Lv1
雷属性魔法Lv1
筋力上昇Lv1
敏捷上昇Lv1
ヴァルナ:魔獣(鋼鎧狼)
Lv1
HP 3600 MP 2000
STR 450 INT 120
AGI 50 DEX 20
VIT 380 MND 420
LP0 SP0
称号:《鋼の加護》
土属性魔法と鋼属性魔法の威力+50%
消費魔力-20%
《炎の加護》
火属性魔法と爆属性魔法の威力+50%
消費魔力-20%
種族スキル
超嗅覚
統率
鋼気功
汎用スキル
斧術Lv1
槍術Lv1
鎧Lv1
火属性魔法Lv1
爆属性魔法Lv1
土属性魔法Lv1
鋼属性魔法Lv1
筋力上昇Lv1
耐久上昇Lv1
精神上昇Lv1
イナバ:精霊獣(白雪兎)
Lv22
HP 600 MP 1800 AP 1800
STR 40 INT 340
AGI 820 DEX 280
VIT 20 MND 25
LP0 SP210
称号:《雪の加護》
水属性魔法と氷属性魔法の威力+50%
消費魔力-20%
《逃亡者》
逃走中、AGI+100%
エクストラスキル
魔力精密操作
霊力精密操作
種族スキル
精霊術
物理半減
危険察知
跳躍
汎用スキル
流水魔法Lv14
氷結魔法Lv18
刀術Lv1
二刀流Lv1
知力上昇Lv14
弓術Lv1
俊敏Lv24
魔力自動回復Ⅱ
霊力自動回復Ⅱ
······皆ステータス高すぎない?特にリルとヴァルナ、君達まだレベル1だよね?
ヴァルナとイナバの二人のバランスがものっすごい悪いけど、高い能力値は本当に高い。······いやマジでヴァルナのステータスがヤバい。STR、VIT、MNDがレベル1のそれじゃない。しかもHPがボクの二倍あるじゃん······。
イナバはリル達が生まれる前から生きていたらしい。結構ハードな兎生を送ってきたようで、今のレベルは22、スキルもいくつか二次スキルに進化しているほどだ。······どのスキルよりも、なんならベースレベルよりも高い【俊敏】と《逃亡者》がその過酷な経験を物語っている·········。どれだけ逃げてんの······?
INTとAGIが高いから、高火力移動砲台みたいな戦闘スタイルで挑めば勝てたんじゃない?まぁ、STR的にMND高いモンスターとかち合ったら逃げるしか選択肢無さそうだけど。VITも低いから一撃食らったら終わりだろうし。
それにしても、ヴァルナがマジで硬い。さっきも言ったけど、レベル1が持っていいステータス値じゃないんだよねぇ。マーナガルムさんは、リル達はまだボクより弱い、的なこと言ってたけど、ヴァルナはタンクとしてはボクなんか足元にも及ばないくらいだよ?ボクはダメージディーラー、ヴァルナはタンクと強さの方向性が違うとしても、マーナガルムさんの強さの基準高すぎないかなぁ?
『おかーさん、おはよー!』
『······眠い』
『おはよーなのです!』
あぁ、今日もうちの娘達は可愛いなぁ。一人まだ目が完全には覚めていない子もいるけど。っと、ユリアも召喚しとかないと。
『召喚:ユリア』
「おはよー。そういえば今日はアーサーっておっさんとの模擬戦だったわよね?」
「うん、そうだよ。朝ごはんを食べたらアルフに連れていってもらうつもり」
居候させてもらっている身として、おじさん達のご飯はボクが作っている。【料理】のスキルレベルはまだ高くないけど、おじさん達からは好評なようで安心している。さて、今日は何を作ろうかな。
◇◇◇◇◇◇
「今日も嬢ちゃんの飯は美味ぇな」
「それはよかったよ」
今日はリオンのリクエストで、白ご飯に味噌汁、そして鮭の塩焼きだ。どうやら、獣人達の食事が日本のそれと似ているみたい。
「最近食べてなかったからなー。懐かしいよー、この味」
口に合ったなら幸いだよ。日本でも地域によって味付けが色々だから、リオンの好みに合うかは自信が無かったんだよね。
「うむ。いい嫁になれそうじゃな」
その褒め言葉はあんまり嬉しくないかな······。
「確かにそうよね〜。ねえスノウちゃん、裸エプロン着てみない〜?」
「固くお断りします!」
最初はちゃんと取り繕ってたのに段々本性をさらけ出してきたねこの人!?しかもなんで裸エプロン!?
「(エプロンか······いいな)」
「どうしたの、アルフ?もしかしてこういう料理は苦手だった?」
「へあっ!?い、いや美味しいですよ!」
少しどもりながらそう言うアルフだが、顔が赤くなっている。熱でボーッとしてたりしないよね?
「大丈夫?風邪引いてない?」
「っ!」
ボクのおでことアルフのおでこをくっつけて熱を計る。······うん、大丈夫そうだね。
と、ここでアルフがいきなりガタッと立ち上がる。
「ちょっと落ち着かないので外を走ってきます!」
勢いよく部屋から出ていくアルフを呆然と見送るボク。
調子が悪いのかな?それなら休んでていいんだよ?街の人に聞けば、家の場所も分かるだろうし。
「あやつはアルフレッドの気持ちなど微塵も分かっとらんのじゃろうな······」
「ここまで無自覚なのは厄介だよねー」
「リオン、エメロア、何か言った?」
「「何も言って(おらん)(ないよー)」」
怪しいなぁ。
『おいしいのー!』
『···美味』
『おかわりなのです!』
おーよしよし。いっぱい食べて大きくなるんだよ〜。
······それにしても君達、ワンコ食いで料理を溢さないなんてよく器用なことしてるね?
結局、アルフが戻ってきたのは十五分ほど経ってからだった。その後にシャワーを浴びて、今に至る。
「すいません、お騒がせしました」
「別にいいけど、何があったの?」
「え!?あ、それは···その······」
アルフはまた顔を赤くして黙り込んでしまった。やっぱり体調不良?でも、体調不良だったら走り回るだなんてできないよね。
「嬢ちゃん、それよりシュヴァルツ家に行かなくていいのか?俺の記憶だと、そろそろ時間のはずなんだが」
「あ!そうだった!」
アーサーさんとの約束の時間は午前十時。そして今の時刻は午前九時五十二分。
ヤバい!遅刻しちゃう!
「いや、数分くらいなら大丈夫でしょう。父上は大ざっぱな人物ですから」
「そうなの?まあ早いに越したことはないから早く行こう!あ、リル達は皆首飾りに戻って!あとユリアも髪飾りにね」
『『『はーい』』』
「しょうがないわね」
よし、これで準備OK。さっきのご飯で給水度も満腹度も回復したし、戦闘態勢は十分にできている。
◇◇◇◇◇◇
シュヴァルツ侯爵家宅の闘技場。ボクはアーサーさんと向かい合っていて、少し離れた所にアルフとその妹、ジャンヌさんがいる。アルフは審判役として、ジャンヌさんはただ戦いを見たいとのこと。
お互いに強化魔法を発動させていて(ボクのじゃなくてユリアのだけど)、あとは開始の合図だけだ。
「準備はよろしいですか?」
「うむ」
「うん」
「それでは······始め!」
試合開始の合図と共に、アーサーさんが全身鎧とは思えないスピードで向かってくる。シュヴァルツ家宅に向かう途中にアルフから聞いたから対応できるけど、初見だったら対応できなかったかもしれない。
アルフによると、アーサーさんは力が強く、防御も硬いそう。攻撃魔法は不得手だが、回復魔法や強化魔法は得意らしい。ボク達プレイヤー風に言えば、STR、VIT、MNDの三つが高い筋肉僧侶って感じ?もしくは神官戦士。そんな訳でAGIはあまり高くないらしいのだが、アーサーさんが今のように高速移動できているのにはある理由がある。
基本的に素早さはAGI依存だが、踏み込みの強さ、つまり脚力はSTR依存である。短距離であればAGIが低くても高速移動はできるのだ。
アーサーさんがボクの左上から両刃の剣を振り下ろしてくるが、ボクは半身になって躱す。跳躍し、〈双月〉を発動。本来は、片足での回し蹴りからのもう片足での後ろ回し蹴りという二連撃なのだが、今回はまず左足での後ろ回し蹴りで剣を逸らし、その勢いで右回し蹴りをアーサーさんの左側頭部に放つという変則的な使い方をした。
アーサーさんは構えていた盾でボクの蹴りをあっさりと防ぎ、ボクの左下から斬り上げを放つ。
また足で逸らすには姿勢的に厳しかったので、今度は左の裏拳で剣を弾く。そしてまた左側頭部に蹴りを放つが、また盾に防がれたボクは、今の蹴りの反動を使って横向きに一回転し、かかとをアーサーさんの右側頭部に打ち込む。
今度は剣の腹部分で防がれたので、その部分を蹴って一旦距離を取る。
「貴殿は速いな。油断していれば何回かは食らっていただろう」
よく言うよ。あっさり防いだくせに。
「あっさり防いだ貴方にそれを言われてもね」
「それもそうか。では今度はこちらから参る」
ちょ!?それはキツいって!
◇◆◇アーサーside◇◆◇
我が息子、アルフレッドに勝った竜人の女性であるスノウ殿。アルフレッドはまだ未熟ではあるが、場外決着とはいえそこらの有象無象に負ける程の弱者ではない。果たしてどれほどの武人かと思い手合わせを申し込んでみたが、ここまでとは予想していなかった。
セイリア王国でたった六人の武人に与えられる称号であり特殊職、《セイリア六聖》。それぞれの武術に一人きりで、剣術を扱う者には《剣聖》、槍術を扱う者には《槍聖》という称号が王家から与えられる。この六人は、十二英傑の方々を除いたうえではセイリア王国の頂点ともいえる。
私の称号は《剣聖》。十二英傑の方々以外ならば大抵の者には大して苦戦せずに勝てると思っていたが、スノウ殿は少し難しいかもしれない。
私は剣速にはそれなりの自信があったのだが、スノウ殿はさも当然かのように見極め、容易く蹴りで逸らした。躱すだけではなく、蹴りで捉えたのだ。そのような芸当をするには、類まれなる動体視力と素早く蹴りを繰り出す為のしなやかな肉体が必要不可欠だ。
そこらの貴族令嬢など鼻で笑うほどの美貌を持ちながら、セイリア六聖である私と渡り合うほどの武術の腕を持っている。スノウ殿には何か事情があるのだろうか。スノウ殿くらいに可憐ならば、武人の道に進まずとも他に将来があるだろう。
いや、人の過去を詮索するのはあまり褒められたことではない。女性の過去ならなおさらだ。手合わせの最中に余計なことを考えては失礼だ。今は手合わせに集中するとしよう。
「貴殿は速いな。油断していれば何回かは食らっていただろう」
スノウ殿は速い。動きもだが、攻撃に対しての判断速度は歴戦の武人と見紛うほどで、私が今まで戦ってきた相手の中でもかなりの上位に入る。これはアルフレッドが負けたのにも疑問はない。
「あっさり防いだ貴方にそれを言われてもね」
私からすると結構危うかったのだが、スノウ殿から見ればそう見えたのか。
「それもそうか。では今度はこちらから参る」
攻め続ければ反撃を食らうことはほとんど無いだろうが、スノウ殿に攻撃を当てられる自信はない。
最初のように勢いよく踏み込むと、スノウ殿も最初と同じように素早く向かってくる。
先程の打ち合いで振り下ろしと斬り上げは躱されたため、今度は水平斬りを放つ。普通ならば後ろに回避するが、スノウ殿は跳躍し、私の剣を踏み台に再び跳躍した。また頭部に蹴りを打ち込んでくるのかと思い盾を構えたが、予想と違い、高く飛び上がったスノウ殿が上空から魔術を放ってきた。
なんだと!?
竜人が放出系魔術を使えるなど聞いたことがない。だが、スノウ殿に生えている角や翼、尻尾はどう見ても竜人のものだ。色々と事情がありそうだが、気にするのはやめておこう。私のガラではない。
降り注いでくる魔術を盾でしのぎ、スノウ殿が着地した瞬間に、着地の隙を狙ってシールドバッシュを放つ。回避もできないタイミングだ。これをどう捌くのかと思えば、スノウ殿はその拳で打ち合うつもりのようだ。
もうこの手合わせでスノウ殿の右手は使い物にはならないだろう。私の盾はアダマンタイト製だ。同じアダマンタイト製の武器でないと一方的に破壊する。ましてや拳と打ち合うなど、拳の骨が砕けるに違いない。
そして、私は長年鍛えてきた筋力がある。スノウ殿の細腕では、とても私と打ち合えるくらいの筋力はないだろう。
ズドン!
だが、スノウ殿は私の予想をまた上回った。私の盾とスノウ殿の拳を打ち合わせて、少し後ずさるだけで済んだ。今の音と衝撃、魔力などの動きから推測するに、スノウ殿は仙闘術を修めている。二十にも届いてないだろうに、魔術、体術、さらには仙闘術までもこの水準で扱えるとは、恐ろしい限りだ。もしかしたらスノウ殿はいつか《闘聖》の称号も得るかもしれない。
現に今も、《剣聖》である私とほぼ互角に打ち合っている。回避と受け流しが主だが、ここまで私と長く戦える武人はそうはいない。
これほどの腕なら、アルフレッドの嫁に迎えるのも異存はないというものだ。
◇◆◇スノウside◇◆◇
この人硬ったいなぁ······。ボクの攻撃が通ってる気がしないんだけど?
ボクのAGI、DEXで回避、受け流しは出来てるけど、このままじゃボクに勝ち目はない。決め手がない。『魔砲』や『閃華』でも、ダメージを与えることはできても決着はつけられないと思う。
う〜ん。どうしたものかな。負けることはなくても、勝つこともない。これはもう降参するしかないかも?
そんなことを考えていたら、急にアーサーさんが動きを止めて口を開いた。
「うむ、この辺りでいいだろう。貴殿の実力は把握できたからな。それに、このまま続けても、決着が着かないだろう」
あ、アーサーさんも同じことを考えていたみたい。ボクにアーサーさんの防御を抜いて決着を着けるほどの火力は無いし、アーサーさんにはボクの回避や受け流しを崩せるほどの素早さがない。言っちゃえばほぼ千日手。唯一の決着の道がスタミナ切れだけど、それには時間がかかっちゃうからね。
「じゃあ、もう終わりましょうか」
と、ここで少し離れた所から拍手が聞こえる。拍手の主はジャンヌさんとアルフだ。
「すごいわ!まさかお父様と引き分けるなんて!」
ジャンヌさんに褒めてもらえるのは嬉しいけど、相性で言えばボクの方が有利なのにアーサーさんの防御を崩せなかったから、実質ボクの負けなんだよね。
しかも、アーサーさんはかなり手加減してたからねぇ。
「相性もあるとはいえ、父上と引き分けることのできる人物はそう多くありません。十分誇っていいことですよ、お嬢様」
このままいい雰囲気で終わりそうだったのだが、ここでアーサーさんが爆弾発言をかました。
「うむ。アルフレッドがスノウ殿を嫁に迎えることを認めよう」
············え?
「父上!?」
「アーサーさん!?」
「なんだ、アルフレッドはそのつもりではなかったのか?」
「いや、なんというか、その·········」
アルフは顔を真っ赤にして黙り込んだ。あれ?この光景、おじさん宅でも見たような。
というか、今日のアルフはよく顔を赤らめるよね。今日何かあったっけ?
「いいじゃない!スノウさんはそこらの貴族令嬢よりも綺麗だし!」
ジャンヌさんはそう言うけど、ボクは異界人だからアルフとは結婚できないよ?まず、ボクの心は男だし。
アルフはテンパっているのか、そのことには気づいてないようだ。なんでこんなにテンパってるんだろうね?
「スノウ殿はどうなのだ?」
「ボク?ボクは別に嫌ってはないけど、まずはアルフに気持ちを聞かなきゃじゃないですか?」
「(······もう分かりきったことだがな。)アルフレッド、お前の気持ちはどうなのだ?」
「私は······えっと·········」
「ほら。アルフはいきなりそんなことを言われて戸惑っているみたいですよ。こういう大事なことは、ゆっくり決めることじゃないですか?いつかアルフにも好きな人ができるでしょうし」
「お嬢様!?」
うん?アルフとしては自分の口から言いたかったのかな?
あ、アルフが膝から崩れ落ちた。どしたの?
「哀れな·········」
「あ、そういうことね······」
アーサーさんとジャンヌさんは何か分かっているみたい。やっぱり家族だからかな?
『いや、今回は私でも普通に分かるわよ?多分スノウやリル達以外は分かってるはずよ』
『リル達はどう?』
『『『分かんない』』』
本当だ。
『それで、今はどういう状況なの?』
『んー······スノウが気づくまで言わないでおくわ』
えー?なんでよー?




