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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
五章 ミスコン優秀賞達
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俺より可愛い奴なんていません。5-8

男子5名、女子5名の大所帯で、ミスコンの優秀賞として学生の財布の味方であるファミリーレストランへと来ていた。


「よしッ! それじゃあ人も多いし、班を2つに分けて、ある程度話したら席替えなんかをしてみようッ!!」


河野こうののその唐突な提案で、気づけば班は2つに分けられ、ほとんどの今日来た者達が、こういった事に慣れている事もあり、ノリノリで否定的な意見はあまり出なかった。


佐々ささき 美穂みほなどは、北川きたがわの前という事もあり、キャラを作っているのか、いつもよりもキャピキャピとした様子で「合コンみたぁ〜い」などと言って喜んでいたが、たまたまその時隣にいたあおいは、逆に凄く不満そうな表情を浮かべ、ため息混じりに「合コンかよ……」と嘆くように呟いていた。


露骨に嫌そうにする葵とは違い、美雪みゆき紗枝さえはあまりこういった男女で、合コンみたいなような事をした事が無い様子で、少し戸惑った様子でいたが、周りが盛り上がる中で、水を差す事や反応をするのも微妙だったため、無理やり笑顔を作り、賛同しているようにしていた。


喋る事が基本好きなあやも、ノリノリで「いいねッ!」などと言ってノリノリだった。


そうして、別れた班は一方が、北川、里中さとなか、葵、七城ななしろ、紗枝、佐々木。


もう一方が、馬場ばば河野こうの、綾、美雪といった班構成になっていた。


当初の予定では、綾と紗枝の位置は逆だったが、こういった事に慣れていない紗枝と美雪をくっつけるのは、葵も綾も不安であり、綾が提案した事で、紗枝と綾が入れ替わっていた。


葵は綾と紗枝が変わったことで少し安心した表情をしていると、綾が葵の方を向いて、「良いことしただろ?」と言わんばかりのドヤ顔をしていたのは、凄くカンに触っていたが、それでも、少し感謝していた。


手早く班は2つに別れ、美雪の行った河野達のテーブルでは、全員が席に着くなり河野や馬場が率先して話題を展開していき、こういった場の彼らの鉄板なのか、元気よく自己紹介を始めていっていた。


一方、葵達の方はと言うと、席につくなり沈黙になってしまい、空気を読み、いつも気を利かせるのが上手い北川が、話を振り出した。


「え、えっと……、僕たちも簡単に自己紹介から始めようか?」


「そ、そうだねッ!」


北川の言葉に、佐々木は直ぐにリアクションを返し、賛同していた。


佐々木の声色は少し緊張している様子で、葵はそんな佐々木を見て、疑問しか思いつかなかった。


(なんでアイツは緊張してるんだ? こういうのは専売特許だろ?

得意分野中の得意分野じゃねぇのか??)


いくら好意を寄せる北川がいるからといって、佐々木の緊張はあまりにも分かりやすく、事情を知らない者にも下手したら、佐々木が北川へ好意を寄せているというのが分かるほどだった。


「じゃあ、言い出した僕から。

えぇ〜と、2年B組の北川 きたがわ あつしです。

今日だと、二宮にのみやとか、加藤かとうとか、佐々木、橋本はしもと、葵なんかと同じくクラスだね。

一応、桜木さくらぎ高校だとバスケ部のキャプテンなんかをやってるかな?

えぇ〜と、よろしくッ」


北川は、見知った顔も多い中で自己紹介をしてい事に、途中で奇妙さを感じたのか、疑問形でこちらの反応を求めるようにしながらも、キッチリと自己紹介を終えていた。


北川が自己紹介を辞めると、佐々木や七城パチパチと手を叩き、祝福するように拍手をし、佐々木や七城に釣られるようにして慌てて、紗枝も手を叩き初めた。


そしてそれに続くようにして、男子陣であった葵や里中さとなかも音が出ているか出ていないか分からないほどの力加減で手を叩いた。


葵と里中のその態度は、あまり今回の食事会に乗り気でないようにも見えた。


トップバッターの北川から変わり、時計回りで初めていく流れだったため、隣に座る里中へと一斉に注目が集まった。


全員が里中の自己紹介を待っている中、里中はただ黙っており、その顔はふてぶてしい表情で、かなり愛想が悪い印象だった。


「お、おぃ……涼太?」


なかなか自己紹介を始めない里中を見て、北川が気を利かせ、里中へと声を掛け、自己紹介を促した。


北川に言われた事で、里中は大きくため息を付いた後、渋々話し始めた。


「2年A組、里中 涼太。今日は淳の付き添いです、よろしく」


里中は短く、あまりに情報の少ない自己紹介をし、口を開いた事で余計に印象を悪くし、かなり取っ付き難い様子だった。


ふてぶてしい態度は変わらず、里中の自己紹介にまばらに拍手が起こり、北川は皆に「ごめん」と頭を下げ、代わりに謝っていた。


里中の反応はいつも通りの事で、学校でも自分の興味の無い相手にはとことん冷たい男だった。


そんな里中だったが、北川だけはかなり信頼しており、北川の言う事だけは素直に聞いたりしていた。


かなりふてぶてしい自己紹介だったが、気にしているのは紗枝や七城だけで、紗枝達は苦笑いを浮かべ、元々今日のイベントにまるで興味の無い葵は、全く気にしていなかった。


佐々木も北川に以外には、まるで興味が無かったため、特に里中の事などを気にすること無かった。


しかし、北川とのせっかくの機会に水を差されたのは気に食わなかったのか、少し不満げに誰にも、特に北川には絶対に気づかれないよう、里中を一瞥した後、自己紹介の番も自分に回ってきたこともあり、一呼吸軽く置くと話始めた。


「それじゃぁッ、今度は私の番だねッ!!

えっとぉ、北川君と同じ2年B組の佐々木 志穂ですッ!

部活は特にやってないんですけど、いつもはバイトかダンススクールに入っているのでそこで練習したりしてますッ

後わ~、えぇ~っと、趣味なんかでよく水族館なんかにいっていますッ!!」


佐々木はなんとかこの思い雰囲気を払拭しようと、できるだけ明るく務め、キャピキャピとした印象で、笑顔を絶やすことなく自己紹介した。


北川の方へよく視線を飛ばすことで、全員に向かっての自己紹介と言うよりも、北川ピンポイントで話している印象すらあった。


そんな佐々木の自己紹介の最後に放った一言で、丁度飲み物を口に流していた葵は、あまりにも佐々木のルックスからは想像もできない趣味を聞き、思わずむせ返り、佐々木の自己紹介を最終的に大きく邪魔した形になったいた。


「わ、わるい……」


葵は内心であきらかにそんな趣味を佐々木が持っているとは思えず、話を盛るにしては少し強引であり、本当だったとしてもギャップがあり過ぎて、耐えきれなかった。


葵がむせた事で、最終的には葵がみんなからの視線を集めることになり、やさしい紗枝や北川、七城までもが葵を心配そうに見つめ、紗枝や北川は、大丈夫かと声もかける始末だった。


葵は心配をしてくれた彼や彼女たちに、大丈夫だと一言伝え、佐々木に視線を戻すと、佐々木は先ほど以上に不満げな表情を浮かべ、明らかに葵をにらんでいた。


葵はそんな気はさらさらなかったが、佐々木の事情も知っているため、少しだが悪いことをしたなと感じていた。


「えぇ~と、水族館だっけ? すごく意外だね!」


葵のトラブルも解決したことで、進行役のような立ち位置になりつつある北川は、佐々木の話を思い出しながら、佐々木に話を振った。


「うんッ! よく言われるんだけど、水族館って行くと結構落ち着くんだよね。

可愛い魚とかもいたりして、最近の一押しだと、レッドテールキャットフィッシュなんかも、ブサカワで超イイ感じだよッ!!」


佐々木は北川に話を振られた事で、再び機嫌を直し、葵を睨んでいたのも北川が佐々木に視線をもどすとすぐにやめ、笑顔で答えた。


しかし、そんな再度の北川とのやり取りも再び葵に邪魔をされた。


先程、むせ返った事でのどがイガイガしていた葵はそれを和らげようと、再び水を口に含むと佐々木の答えた魚の名前が耳に入り、、またもやせき込んでしまった。


ゲホゲホとしだす葵に再び視線が集まり、佐々木は再び不満げな表情で葵を見始めた。


咳き込む中、葵は昨日の事と佐々木の言葉を思い出していた。


(レッドテールキャットフィッシュってあのナマズみたいな顔したやつだろ??

昨日の夜にやってたテレビに特集組まれてたやつじゃねぇかよ。

さすがに、バレるぞ?大丈夫かよ……)


葵は昨日の夜、たまたまリビングで流れていたテレビを見たときに、各地の有名な水族館を紹介する番組が流れており、その時見たのがある水族館の人気の動物の紹介であり、そこで流れていたのが先ほど佐々木が話した佐々木が魚だった。


ここで葵は、佐々木の趣味が作り話だという事に気づき、佐々木がかなり危ない橋を渡っている事にも気づいた。


(絶対ばれるだろ? 大丈夫か??)


葵は内心でそう思いつつ、佐々木以外の表情を確認すると、佐々木のそれに気づいていそうな者は誰もいなかった。


葵から注目が外れ、再びやさしい北川が佐々木に何も知らないといった様子で、レッドテールキャットフィッシュの事を訪ね始め、別に佐々木の恋を応援しているわけではなかったが、ホッと葵は安心し息をついた。


そうして葵が、三度水を飲んでいると、葵の前へ座る紗枝がニコニコと笑顔を浮かべ、こそこそと小声で声をかけてきた。


「立花君! 立花君もレッドテールキャットフィッシュってなんだかわかる?」


「え? えぇ~とっ……、知らない」


葵は一瞬ドキッとしたが、平静を装い知らないふりをした。


すると、紗枝はますます嬉しそうに話し始めた。


「私、知ってるよッ! 佐々木さんも言ってたけど、ほんとにブサカワでかわいいんだよ!

昨日、丁度テレビでやってたんだぁ~」


「へ、へぇ~、そうなんだ……。というか、二宮って結構テレビ見るんだな」


葵は少し冷や汗をかきながら答え、この話は他の人に聞かれるとあまりよくないと思い、話題を変え答えた。


「意外かな? 結構見たりするよ!

綾よりも詳しかったりするしね! ユーチューバーとかは全然わからないけど……」


紗枝は楽しげに葵と会話をし、いつも学校では優秀で、まとめ役なんかをよくする彼女がテレビっ子だというのが、かなり驚きだった。


そして、今のご時世でテレビっ子というのが以外で、テレビの内容を語る彼女はとても魅力的に見えた。


それこそ、佐々木のギャップとは違う、好感の持てるギャップだった。

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