俺より可愛い奴なんていません。5-7
今日集まる予定の内の4人が集まり、残りは女子が2人と男子が4人であった。
学生風情であったが半ばお見合いのような、そんなイベントを予定しており、それはミスコンの優秀者5名に送られる景品の内容でもあった。
当初は、橋本 美雪、加藤 綾、二宮 紗枝、七城 葉月の優秀者4名がこの日のイベントに行くことになっていたが、佐々木 美穂の無理で強引な提案を受け入れる事になり、彼女らを覗いて優秀賞に一番近かった葵もこれに出席する事になっていた。
何故かあまり乗り気で無い葵や紗枝、美雪といった者が待ち合わせ場所早く集まり、この日を楽しみにしているであろうその他の者達の姿はまだ見えなかった。
葵は辺りを見渡し、まだ待ち合わせをしている者が、近くに来ていない事を確認すると、再び今さっき訪れたばかりの美雪へと視線を送った。
美雪はあまり年相応では無い格好をしており、可愛いというよりは美しく、かなり大人っぽくカッコイイ服装をしていた。
綾や紗枝もかなりオシャレで魅力的だったが、美雪のソレは少し毛色が違く、高校生には見えず、大学生や下手したら社会人にすら間違われる程の大人っぽさで色気もあった。
「美雪ってやっぱりかなりオシャレさんだよね〜! 私服初めてかなりビックリしたもんッ!!」
葵も美雪の服装に気になっていたが、葵が話題にあげるよりも先に綾が美雪の服装を話題に上げた。
美雪は上は少しフワッとした軽い生地で作られた、明るくも落ち着いた緑色のノースリーブに、白く足先まで伸びた薄い生地のロングスカートを纏っていた。
手には手提げのバックを持ち、かなりのレベルでそれらを着こなしていた。
「いやいや、綾さんや紗枝さんも凄い素敵ですよッ!?
とっても可愛いです! ね? 立花さん?」
「ん? あ、あぁ……、可愛い」
葵は少し吟味する様に、美雪の服装を見るのに集中していたため、急に話を振られた事に一瞬反応が遅れ、特に美雪の意見を否定する理由も無かったため、素直に褒めるようにして答えた。
何ともない様な表情で、素の反応で葵が褒めた事で、紗枝は顔を真っ赤にし俯き、綾もギョッとした様子で一瞬驚いたが、だんだんと紗枝と同じように顔を赤く染め初め、葵から視線を外し、同じく俯いてしまっていた。
葵にとっては、可愛いや美しいなんて言葉に抵抗が無く、普通の男性であれば小っ恥ずかしくて言えない言葉も堂々と、真顔で言う事が出来た。
「そ、そうゆう事を真顔で平然と言うなよ……。
普段、貶すくせに……、ビックリするだろぉ〜……」
綾はまだ葵とは視線を合わせなかったが、口を尖らせるようにしてブツブツと文句を言うようにして、呟いていた。
しかし口に出している不満とは裏腹に、綾の機嫌はそこまで悪くは見えず、「可愛い」と言われた事を嫌がっている様子ではなかった。
「あぁ、悪い。俺と違って言われ慣れてないもんな……、気を付ける」
綾も紗枝も必要以上に照れている様子を見て、葵もなんだか妙な気分になり、わざと綾が突っかかるような形で、相手に自分もつられた事を、感じされるような事が無いように答えた。
綾はすかさず「おいぃッ!」等と葵に突っ込みを入れていたが、葵はそれ以上相手をする事無く、美雪の方へと再び視線を戻し始めた。
「な、何です……?」
葵は感じていた妙な気分から脱すると、真顔で美雪の事をじっと見つめ、葵にガン見されている事で、美雪は少し恥ずかしそうに、恐る恐る葵に尋ねた。
「いや、まぁ……、何でソレを学校でしないのかと…………」
美雪に尋ねられ、葵は一瞬言うか迷ったが、それでも思った事を素直に美雪に伝えた。
「え、えっとぉ……、学校だとオシャレするの難しいですから……。
制服を着崩すとかしか思いつかないですし、割と優等生で通ってるから変なイメージとか付いたりしたりしても…………」
「そう……、イメージね。
確かに大事かもな……、勿体ないけど」
美雪は少しもじもじとした様子で、言い訳っぽく答え、葵もその答え方には少し納得がいっていなかったが、特に指摘することは無かった。
葵は少しの会話だったが、明らかに美雪との会話に違和感を感じていた。
普段であれば、美雪に対しても思った事をスバズバと答える葵だったがそれが出来ず、少し二人の間に距離があるように、妙によそよそしかった。
これには、明らかに葵の方に原因があった。
美雪と真鍋が2人で話していたのを目撃したあの日以降、前よりも上手く美雪と会話する事が出来なくなっていた。
「ねッ! 確かに勿体ないよ〜美雪ぃ〜……。
美雪って今、かなり男子から人気あるんだよ〜? 特にあの文化祭以降さ!」
「え…………」
綾は葵の言葉に大いに賛同するようにして、葵の知らない情報を含めて、美雪の考えを否定するようにそう声を上げた。
綾の言葉に美雪は驚いた表情を浮かべ、紗枝はその事を知っていたのかうんうんと首を縦に振り、葵もまた驚いた表情を浮かべながら、ポツリを声を漏らした。
「そ、そんな事無いですよ……」
「そんな事あるってッ!! だって、こないだうちのクラスの男子とか、あれ以降から結構美雪の事狙ってる人結構居るんだよ?
とゆうか、前から美雪は人気だったからね??」
謙遜なのでは無く本心から否定する美雪に対して、綾は強くそれを否定し、色々な情報で美雪を説得しようとした。
「確かに、美雪は前から結構男子から噂されてたよ?
も、もちろんいい噂ねッ!? 立花君もそれは知ってるんじゃない??」
綾に続いて紗枝もまた、美雪が密かに男子から支持を得ていた事に賛同するように話し、一番そういった話が集まりそうな、男子である葵に不意に尋ねた。
「え? あ、あぁ……、どうだろうな…………。
学校じゃ目立たないし……」
「おいッ、なんでここで反対意見言うんだよ」
葵は咄嗟に話を振られた事で、少し動揺したが、直ぐに冷静さを取り戻すと、真面目な様子で淡々と答えた。
その素の様子で答える葵は、本心を言っているようによく見え、なんとか美雪が、モテる方の女性なのだと理解してもらおうと話していた綾は、すかさず空気の読めない葵に突っ込んだ。
そんな綾の反応を他所に葵は他の事に気を取られており、正直構ってやる余裕はなかった。
葵は色々と記憶を辿り、学校で交わした自分の会話や、小耳に挟んだような話までも思い返していった。
その中で、確かに美雪を美人だと評価する男子生徒達が確かにいた事を思い出し、そこで初めて葵は美雪がそれなりに男子から人気だと言う事を認識していた。
(確かに思い返せば色々思い当たる節はあるな……。
今更だけど普通に、橋本って男子から人気あるんだよな、それも今とは違うミスコンに出る前から……
今日会う奴らの中でも、橋本の事をそうゆう風に思ってる奴とかが居てもおかしくないよな?)
葵はどんどんと思い当たる節が出てきており、それはミスコンの前にも及び、美雪が普通に学園でかなりの人気を得ている事に気付いていき、考えれば考える程どんどんと焦っていった。
しかしそんな葵だったが、不意にある光景が過ぎり、一気にその熱は冷めていった。
(――――いや、別に俺には関係ねぇか……何でこんな焦ってんだが…………。
真鍋がいるのにな…………)
葵は不意に過ぎった真鍋と美雪が楽しげに会話をしていた事を思い出し、先程の焦っていた自分をバカバカしく思った。
そんな事を考えていると、近くから聞いた事のある男性の声が聞こえてきた。
「おぉ? 俺らが最後か??」
聞き覚えのある声で、恐らくこちらに向かって掛けられている、その言葉に葵達は反応し、声のする方へと視線を向けると、そこには今日出会う予定の残りのメンバーたちの姿がそこにあった。
河野 弘樹、馬場 雅也、は七城 葉月を挟んで並ぶようにして立ち、里中 涼太は、特に仲の良い北川の隣に並び、佐々木 美穂も今日の目的である北川の隣をしっかりと陣取っていた。
端から端まで美男美女のその並びは、かなり眩しく、まさに学校の人気者達といった陽キャラオーラをガンガンに放っていた。
葵はその自分とはあまりそりの合わなそうなその団体に、一瞬目眩を覚え、これからここに集まるメンバーで数時間過ごす事になるのかと思うと憂鬱としか思えなかった。




