俺より可愛い奴なんていません。8-3
「美雪はそういうのあんまり興味ないの?
たとえば、恋愛系とかさッ!」
美雪に尋ねるように静は、主に恋バナに変わりつつあったが、占いの話を振った。
「う~~ん。 確かに興味はありますよ?
何時頃結婚できそうか~とか、子供は何人できそうだ~~とかは……。
ただ、運命の人にいつ会えるとかは、あんまりそれを優先して聞きたいとは思わないですかね……」
「へぇ~~、結構変わってるね……。
映画とかのネタバレを食らうみたいな、嫌な感覚でもあるの??」
言葉に出した静はもちろん、晴海も美雪を不思議そうに見つめ、興味深そうに美雪の話を聞き入り、続けて美雪は質問に答えた。
「あ、えっとそういうのは無くて……。
う~~ん、なんて言ったらいいかな~……。
運命の人とか、好きな人とかってその時にはっきりとわかるじゃないですか?
だから、あまり聞く必要な無いのかなって……。
それよりも、その人の事が好きだと気付いた時に、その人が私の事をどう思っているのかを知りたいですかね……。
好意を持った相手の事を知りたいです。
まぁ、占いでそれがわかれば、ですけどねッ」
美雪は最初、言葉に詰まりながらも、きちんと丁寧に自分の考えをまとめ発言し、そのことを話す美雪はまるで誰かの事を考え、想っているようにも見え、柔らかな優しい笑みを浮かべながら、それを話した。
「あぁ~~、なんとなく分かるかも……。
自分の占いもそうだけど、他の人の占いされているところも、見てみたりしたいしね!
それでもし、好きな人と結婚する時期が同じで、生まれる子供の数も一緒だったりすると、なんだか、自分のこれからの人生と、その好きな人の人生が交わっているような感じがして、嬉しいし」
美雪の意見は静や晴海の賛同でき、静は「なるほど~~」と続けて呟き、晴海もうんうんと首を何度も縦に振りながら、同意していた。
「あれ? てゆうか、橋本さんのその好意を持った相手って……、もしかして一昨日二人で話してた時に出て人??」
「あ、いや、別にそういう特定の人の話とかでなくッ!
例としての話ですよ!!」
静は一昨日、海の上で二人で話した際の会泡を思い出し、美雪を少しからかう様にして、その事を尋ね。
美雪は、急な話の展開に驚き慌てつつ、今まで自分が行ってきたことを照らし合わせて考えると、一昨日静にした、気になる尊敬する人の話とダブった。
そして、美雪がその気になる人が自分をどう思っているのか、知りたいという意味にも充分捉えられ、それが分かると、どうしようも無く恥ずかしく感じ、顔を赤らめさせた。
「え!? 美雪ちゃん好きな人がいるのッ!?
知らなかった!!」
「へッ!? いやッ! そんなんじゃホントに無いよッ!?
ただ、尊敬……みたいな……? 私なんかが恐れ多いし…………。
多分、そういうんじゃないし……。
それに…………」
静と美雪の話を聞き、晴美はなんとド直球で美雪に言い放ち、美雪もシンプルに聞かれたことで、今まで以上に慌てふためいたが、結局のところはそれを否定し、更に何か彼女は思い出す様にしてどんどんと声のトーンも下がり、暗い雰囲気のまま呟いた。
「どうかしたの?」
暗く俯いた美雪に晴美は優しく、心配するように声を掛けた。
そんな晴海に美雪は、すぐに気丈に「なんともない」と答えるつもりで顔を上げたが、その言葉は上手く出ては来ず、何かを言いかけたところで美雪はやはり口を紡いだ。
美雪のそんな態度に、晴海も静も不思議に思い、お互いに顔を見合わせながら、それでも少しの間、美雪からの言葉を待った。
そして、少しの間三人の間には沈黙が流れ、その中で美雪は何か決心がついたのか、一呼吸置いた後、再び二人の顔へ視線を向け、ゆっくりと話し始めた。
「あの、どうしても二人に相談したい事があるんだ……」
美雪は真面目な表情で、二人から視線を逸らすことなく、はっきりと二人に伝えた。
美雪のそんな反応に、益々二人は困惑したが、それでも彼女の真剣さは強く伝わり、茶化すことなく、二つ返事で美雪の話を聞くことを承諾した。
◇ ◇ ◇ ◇
時間は流れ、時計は既に午後12時を回っていた。
真鍋と共に、挨拶周りをしていた葵と亜紀は真鍋の指示の元、昼食を取ろうとしていた。
朝ホテルで用意してもらっていたお弁当を持ち、お昼を取るに適した場所へと移動すると、主に真鍋が二人に会話を振る形だったが、3人で会話をしながら昼食を取っていた。
そして、真鍋は途中、電話がかかってきたことで、その場を離籍し、葵と亜紀は二人その場に取り残され、二人きりになっていた。
会話も無く、ただ目の前に広がる美しい景色をただぼぉっと見つめる二人だったが、その沈黙を呼ぶるようにして、葵が声を上げた。
「なぁ、さっきの話、今した方がいいのか?」
「は? 当然でしょ、さっさと話しなさいよ……。
こっちは待ってんだから」
葵は気を利かせ、様子を見ながら亜紀に尋ねたが、亜紀は辛辣に「早くしろよ」と言わんばかりに、葵にそう答え、亜紀から返ってきた返事にㇺッとし、変に気を使わなければよかったと後悔しながらも、昨日の話を亜紀に素直に伝えた。
そして、亜紀に昨日の起こった出来事を葵なりに亜紀へと説明し終えると、亜紀の表情はどんどんと険しい表情へ変わっていき、これを話せば、亜紀は自分に敵意をより一層むき出しにしてくると、分かっていながらも、すべてを亜紀に話した。
「なるほどね……、アンタが100悪いって事はよくわかったわ……」
葵が全てを話し終えると亜紀はそう答え、再び二人の間に沈黙が流れた。
葵は非難されるのは覚悟の上で話したが、これでこの会話が終わりでは、話した意味が葵にとって無く、この話題を終わらせるつもりは全くなかった。
「それで、橋本の事をよく知るアンタに聞きたいことがあるんだ……」
葵は前置きを話すと、亜紀は鋭い眼光で睨むように葵へと視線を送り、答え始めた。
「何? 仲直りの仕方や方法を知りたいの??」
「――――ッ! い、いや、それは……」
問い詰められるように亜紀に聞かれ、葵の中には確かにその方法があれば知りたい気持ちもあった、朝、ホテルで男女ともに集合した時も、葵は美雪の顔を見ることが出来ず、昨日のあの一件から一言もまだ言葉を交わしてはいなかった。
この状況を打開したい気持ちも、再び彼女と普通に話せる関係に戻りたいという気持ちも確かにあったが、今葵が一番に求めていることは少し違っていた。
「あったとしても教えるわけないでしょ?
私は元からアンタの事は嫌いだし……、協力もしないよ」
亜紀は珍しく、というよりもここまで弱っている葵を見たことが無かったが、それでも彼を責める言葉はやめず、葵が何を求めているのかまだはっきりとは分からなかったが、彼に協力する気はまるでなかった。
しかし、そんな頑なな亜紀に葵は怯むことは無く、決意を固め、亜紀に食い下がった。
「別に俺と橋本の仲を取り持って欲しいわけじゃ無い!
ただ、ハッキリとさせたいんだ」
「…………は? どうゆうこと??」
葵は声を上げ、訴えるようにして亜紀に伝え、葵の抽象的な答えじゃ亜紀には上手く伝わらず、亜紀は自分が考えていた事とは、少し毛色の違う返事が返ってきたことで、驚きながらも葵に聞き返した。
「昨日の話をしただろ……?
その上できっちりと確かめたいんだ……。
桜祭の最終日にお前が俺に伝えたことが、本当に正しいのかどうかを」
葵の言葉を聞き亜紀はすぐに、葵の言いたいことを理解した。
亜紀は桜祭の最終日に、葵に対して、美雪が好意を寄せている人物の話を葵に伝えていた。
「だから、お前には協力してほしい」
「その真実を知ってどうするの?
もし、美雪が本当に真鍋の事を好きだったのなら??」
葵は亜紀に尋ねられ、一瞬たじろいだが、考えが変わることは無かった。
昨日の夜に美雪が見せた表情が脳裏によぎり、その光景が葵の考えを変えることを一切許さなかった。
そしてこれは、美雪の幸せにつながる事でもあったため、葵は亜紀がこの申し出を断るとも思えなかった。
「別に結果が重要なんじゃない……。
もう二度と間違えないように…………。
(あんな顔をさせないように…………)
必要なんだ……」
「わかった……。
それなら協力してあげる……」
葵は亜紀から視線を逸らすことなく、葵の真摯な態度に答えるように、亜紀は葵の申し出を受け入れた。




