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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
一章 出会い……そして、拉致…………
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俺より可愛い奴なんていません。1-11

神崎かんざき 大和やまとの疑いは立花たちばな おおいの裏切りにより、晴れることなく終わり、彼はおそらくこの数ヶ月は女子から汚い物として見られる刑に処される事となった。


出てきた物が物なだけあって、単なるアダルト雑誌であれば、ここまで酷くはならなかったであろうが、彼が見られたのはとても口に出来ないような内容の物であったため、女子からの対応はかなり辛辣であった。


そんな冤罪によって酷すぎる刑に処された彼も、悪いことだけではなかった。


その事を知った周りの男子からは普通のアダルト雑誌ならまだしも、持っている所を見られたら確実に人生が終わるほどの代物を、学校にまで持ち込む彼に敬意を称し、表向きでは言われなかったが影で、彼は英雄扱いされていた。


思っていても表向きでは彼の事を賞賛しない彼を見て、葵はつくづく男というものは女子の目を気にするんだなと思っていた。


そんな悲劇を迎え、時間が経ち、時間は昼休みへと突入していた。


葵は計画通り、2時限目、3時限目を共に睡眠で過ごし、4時限目は体育だったため保健室を利用し、ベッドで今日1番の快適な睡眠をしていた。


「はぁ〜、すこぶる調子がいいな」


「あんだけ寝てりゃな……。俺は酷い目に合ったというのに……」


朝の酷く不機嫌だった葵の様子はいっさい感じられず、清々しい表情でそう言うと、大和は大きなため息をつき、かなり沈んだ様子で呟くように答えた。


葵と大和は昼休みという事もあり、昼食を取っていた。


「いやぁ、ホント大和はすげぇよ!普通出来ないからなあんな事……」


「ホントホント。大和には悪ぃけど朝から笑わせてもらったわ」


大和のあまりの不幸っぷりをネタにしながら、2人の男子生徒は大和に対してそれぞれの反応をした。


大和と葵の昼食の席には2人だけでなく、同じクラスである中島なかじま山田やまだという2人の生徒も同席していた。


葵、大和、両方と仲が良く、よくつるむ事が多かった。


大和に関して言えば、同じクラスというだけでなく同じ部活の部員でもあり、毎日キツイ練習を共に乗り越え、大会では肩を並べて戦う仲間でもあった。


「これで大和はもう俺達の勝負から落ちたな……」


「まぁ、最初から1番可能性が薄かったからな」


「んな事ねぇよッ!!こんなアクシデントさえなければ……」


中島等の言葉に大和は強く否定し、最後には悲しそうに呟いていた。


「あれ、まだ有効だったのか?てゆうか、もう結果は見えてるだろ」


葵はキョトンとした様子で熱く語り合う3人に彼らとは違った温度差で訪ねた。


葵がいう「あれ」とは、勝負事であり、1年生の頃に大和、山田、中島の3人で勃発した事件の事だった。


大和達3人は、高校に入り、バレーボール部入ってしまい、鬼のコーチ戸塚とづかのもと立てられた恋愛禁止というルールに縛られてしまっていた。


そんなガチガチに縛られ、破ったら地獄が待っているという状況の中、3人は遂に行動に起こし、「彼女を隠れて作る」という結託をした。


そして、ただ作るというだけではつまらないと言う話になり、誰が1番に出来るか競走をする事になった。


「有効に決まってるだろ! ずっと熱い戦いが続いてるじゃねぇか!」


葵のあまりの冷めた言葉と馬鹿にしたような態度に落ち込んでいた大和は一気に復活し、葵に強く突っかかるように答えた。


「はッ……熱い戦い?? いつだよ」


葵は今度はもっと分かりやすい馬鹿にしたようなスカシ笑いをしながら大和達に訪ねた。


「えぇ〜っと、ほら! あの山田の!!」


「あぁ〜!! あれな! ちょっと気になる娘と一緒の保健委員になれた話な!!」


大和が少し時間をかけ、必死に探し出した話に何故か中島が反応し、ちっさい話をまるで大きな話題のように大袈裟に話した。


「は? それだけ?」


「え? んん〜……。そんだけ。」


葵の当然の問いに中島は当時の事と山田の言っていた言葉を思い出そうと唸りながら考えたが、結局何も出てくることは無かった。


そして、そんなちっさな話を中島が大声で大事のように自分の事のように話すのを山田は見て、あまりの不甲斐なさに恥ずかし過ぎて顔を真っ赤にし、黙り込んでしまった。


「ちっせぇ……」


葵が辛辣な一言を呟くと山田は遂に耐えきれなくなり、ガックリと肩を落とし、俯いてしまった。


葵は勝手に自分の話を話され、壮大に恥をかかされ、完全に意気消沈した山田を見て少し不憫に思ったが、スグにどうでも良くなった。


「で? 他は?」


「あ、中島もあったよな!! ラブレター!」


「おいッ! 大和、その話はッ……」


葵の問いに大和は自分の話ではなく中島の話題を出した。


大和の「ラブレター」と言う言葉に反応し、中島はかなり焦った様子で大和を止めようとしたが、葵の興味はもうそれに向き、止まるような状況ではなかった。


「へぇ〜、ラブレターは凄いじゃん。貰ったんだろ?」


「そうそう。すげぇよな!? んで? 中島はあのラブレターどうしたんだ?」


葵はもちろん大和も自分から話題を出して起きながら、その後の事を知らなかった様子で、中島は2人から追求される形になった。


その時、葵の視界の端で何故か先程恥を思いっきりかかされた山田が復活しており、顔を上げニヤニヤとしているのが気になり、山田のその表情から葵は何となく事情を察した。


しかし、葵は別に中島を気遣い、助け舟として話題を変えるような事はせず、葵もまた自然と笑みが零れ、ニヤニヤとした様子で中島の言葉を待った。


「い、いや……、あれな、違ったんだ。そうゆうんじゃなくて……」


「出す相手間違えられてたんだよなぁ〜!?」


しどろもどろに話す中島を見て、山田は遂に耐えきれず声をあげ、悪い笑みを浮かべ中島に先程の仕返しとばかりに話した。


「なッ!」


「いやぁ〜、手紙の内容通り放課後、部活サボってまで手紙に書いてあった場所に行ってたお前は今思いかけせば中々……。その後遅れて部活に来た時のお前の顔は忘れられないな」


山田はニヤニヤと笑いながら、葵はもちろん大和も知らなかった話をベラベラと喋ってしまった。


そんな状況に中島は耐えきれず、先程の山田のように今度は彼が落ち込んで俯いてしまった。


中島にとってそれはまだ癒えていない傷だった。


そんな中島に気を使うこと無く、大和や葵はゲラゲラと笑い、今の中島を見て更に笑っていた。


「はぁ〜……、そんな事があったのか〜。知らなかったな〜」


「その場所に行って何て言われて帰ってきたんだ?」


大和は俯いてこれ以上この話をしたくないであろう中島に追い打ちをかけるように訪ねた。


「俺がその場に行ってら、その手紙の差し出し人らしき人がいて、話しかけたんだ……、

そしたら、なんか相手は戸惑ってて何が起きてるかよく分からないって様子で、一応貰った手紙も持ってきてたからそれを見せながら「これをくれたのは君だよね?」って言ったら、彼女、固まちゃって……、心配になったから「どうしたの?」って聞いたら泣かれちゃった………」


中島はかなり落ち込んだ様子で話終えると大和と山田は大声でゲラゲラと笑い、葵も俯いて体を微かに揺らし、必死に笑いを抑えて堪えている様子だった。


「ひッ……酷い……酷すぎる……」


葵は中島の話から、その光景が想像でき、あまりの光景に笑いが止まらず、ヒィヒィと息を荒立て、いまだに笑いながらも感想を呟いた。


「アハハハッ!! 何度聞いても笑っちゃう!!」


「その後どうなったんだ!?」


山田が感想を漏らす中、大和はまだまだ知りたいのか、悪魔のように中島に追い打ちをかけた

「お前ら笑い過ぎだよ……。どうなったも何も、彼女、凄い勇気を出して手紙を出したらしくて、それでこんな形なっちゃった事が悲しくて仕方なかったみたいで、それだけ言ったら泣いたままどっかに走ってっちゃったよ……」


「そッ……そうか……、それはまぁお前が悪いな……」


中島の落ちんだまま話す様子を見ながら、大和は肩に手を置きからかうように答えた。


「ッ! 他人事だと思ってぇ……。泣きたいのはこっちだよ……。」


泣きべそをかく中島を差し置いて、葵達はどうしても面白くない見えてしまい、笑ってはいけない状況だっだが笑いを堪えることが出来なかった。


「はぁ〜……笑い疲れた……。そういえばさ、昨日は昼休みお前に仕事を回してもらわないよう必死に懇願してたから聞き忘れたんだけどさ、どうして葵は実行委員になったんだ?」


大和はようやく落ち着きを取り戻したのか、呼吸を安定させ、大和は思い出したように昨日聞けなかった疑問を葵にぶつけた。


葵は心の中で(なんでこのタイミングでコイツは思い出すんだ)と呟き、大和を睨んだ。


大和はその明らかに機嫌が悪くなった葵を見て、小さく「ヒエッ」と怯えていたが、中島と山田はそれに気づかず、二人ともその話には興味がある様子で、葵は話さ無ければならないような状況になってしまった。


「ま、まぁ…、あん時も言ったけど、仕事を振れる分、実際委員の方が楽だと思っただけ」


「いや、大変だろ……。だとしても。元々忙し過ぎてそういったルールが出来るぐらいなんだから」


(なんでコイツらこんなアホな会話してるのにこんな時だけ、鋭いんだよ……)


葵はテキトーな理由をでっち上げ答えたが、中島達はそれだけでは納得していない様子で答えてきた。


テキトーにはぐらかせない事に若干葵は苛立ちつつも、もっといい理由を考えていると、そこに彼らに話しかけるように女子の声がかかってきた。


「あの、ちょっといいかな?」


葵達は話が必然的に中断になり、女子の声がする方へ視線を向けた。葵は内心いいタイミングだと思いつつ女子を見たが、その話しかけてきた彼女を見た瞬間、絶句した。


葵達が話しかけてきたのは、今1番に会いたくないその話題の渦中の人、橋本はしもと 美雪みゆきだった。


美雪の後ろにも、彼女を見守るように二宮にのみや 紗枝さえ加藤かとう あやも後ろに控えていた。おそらく、あまり人との交流が得意でない美雪の付き添いだと分かった。


「どうしたの?」


普段から女子、男子とわけ隔たりなく話す大和が聞くと、美雪は少し話ずらそうにモジモジした後、意を決したように話し始めた。


「あの、立花さん、ちょっとお話があるんです」


「あ、委員会? 分かった」


葵はこのまま大和達と話すよりは美雪達と話した方が都合がいいと、珍しく女子の言うことに素直に従い席を立った。


そんな素直な葵を見て、大和達は不思議そうに葵を見つめ、美雪の後ろにいた紗枝や綾すらも驚いた表情をしていたが、葵は気にする事無く美雪の後について行こうとした。


「あ、じゃあ、あちらでお願いします」


「ん……」


美雪はここでは話しずらいと人が少ない方へ葵を誘導し、葵も短く答え、後に続いた。


「なぁ……、あれどう思うよ……」


「怪しい……」


中島と大和は葵の後ろ姿を見ながらお互いの感想をいい、山田も同じ感想だったのか、首を何度も縦に振っていた。

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