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魔王令嬢の教育係 ~勇者学院を追放された平民教師は魔王の娘たちの家庭教師となる~【Web版】  作者: 新人@コミカライズ連載中
第一章:クビから始まる新生活

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第41話:杖と素顔

 フェムが魔法の制御に成功してから三日後の朝。


 限界を迎えて真っ直ぐ歩行する事すら困難になっている足を何とか動かして広場へと向かう。


 そこでイスナとサンとフィーアの三人が輪になって何かを囲んでいるのが目に入る。


 あいつら、何をしてるんだ……。


 重い瞼を擦ってからよく見ると、輪の中心にフェムがいるのが分かった。


「おーい、何やってんだー?」


 少し大きめの声を上げながら四人へと近寄る。


「フレイじゃん。おはよー」

「おう、おはよう。集まって何をやってるんだ?」

「あっ、先生。おはようございます。今皆でフェムちゃんの魔法を見てたんです。わっ、わっ! ほら! 見てください」

「フェムの魔法?」


 更に近寄ってその様子を確認する。


 輪の中心にいるフェムはその手と指先を使って、文字通り魔力を練っていた。


「数字に、図形に、あっ……これはお犬さんです!」


 黒い球体が変形、分裂し、様々な記号や物へとその形状を変えている。


 初めて制御に成功してからたったの数日で目を見張る上達ぶりだ。


 もう魔法に関しては俺が教えられることすら無いように思えてくる。


「すごい緻密な制御ね……」


 姉妹の中では魔法の実力に秀でていたイスナも感嘆の声を漏らしている。


「流石だな。今日はそんなフェムにプレゼントだ」

「プレゼント? その棒が?」


 フェムより先にサンが反応する。

 俺が手に持った長いその棒を見て、怪訝な表情を浮かべている。


 イスナとフィーアもそれが何なのか分からないのか、同じような表情を浮かべている。


 そんな中で、フェムだけがそれを見てわなわなと打ち震えている。


 それが感動に拠るものだと俺にだけ分かる。


「そ、それ……」

「おっ、フェムは分かってくれたか。ほら、修了祝いってわけじゃないけどお前の杖だ」


 その棒、もとい杖をフェムに手渡す。


 自分の身長程もあるそれをフェムが手に取る。


 更に強い感動を覚えたのか、頭部を包む布の向こう側で目を爛々と輝かしているのが分かる。


 杖の形状はその用途や使用者によって様々だ。


 俺がフェムの魔法を制御する際に使った杖は、掌握するイメージを持ちやすくする為に篭手という形を選択した。


 ならフェムにとって最も適した形はなんだろうかと考えた時、すぐにそれが思い浮かんだ。


 持ち手の付いた黒く長い棒状の杖。


 それは彼女が愛読している小説『アーステラ物語』の作中で、『狙撃銃』と呼ばれている後方支援の武器だ。


 作中の表現では引き金を引くと、金属の塊が超高速で飛んでいくという武器だ。


 古龍の牙を加工して、各種魔力触媒を付与しただけの物なので当然その機構は再現されていない。


 しかし、見た目は挿絵及び作中の描写と三日三晩不眠で向き合っただけあって中々の出来栄えを自負している。


 その証拠に受け取ったフェムはまるで小さな子どもがぬいぐるみにそうするかのように、愛おしそうにそれを抱いている。


「いいなー、フェムばっかりずるーい!」

「サンも一端の何かを身に着けたら、その時は俺が作ってやるから頑張るんだな」


 高額素材を追加注文をした時にロゼが若干苦々しい顔をしていたのが少し気がかりだけど大丈夫だろう、多分……。


「体術はけっこー出来るようになったと思うんだけどなぁ」

「まだまだだ。せめて俺からたまには一本取れるくらいにはならないとな」

「えー、そんなの無理だよぉ」

「ねえねえ、フェムちゃん。早速使ってみませんか?」


 不貞腐れるサンを尻目にフィーアがフェムに催促をすると、フェムは小さく頷いて了承の意を示した。


 フェムが堂に入った所作で独特な形の杖を構える。


 近くにあった木製の長椅子に腰掛けて、その様子を眺める。


 フェムが遠くにある一本の木を指差す。

 それを狙うという事だろう。


 四人分の視線がフェムへと集中する。


 そして、構えられた杖の先端から三発の小さな黒い球体が発射される。

 一発、二発三発と立て続けに目標へと命中し、当たった場所を中心に木は砕け散った。


「すごーい! すごいです!」

「かっこい~!」

「な、なかなかやるわね……」


 素直に歓声を上げているサンとフィーア。


 妹の実力を認める言葉を口にしながらも微妙に複雑そうな表情をしているイスナ。


 平穏無事にフェムの実演が終わった事を見届けると、安心して急激な眠気が襲ってくる。


 朝練、昼の準備などが頭をよぎるが、これはちょっと抗えそうに――



****************



「フレイー! 何やってんのー?」


 サンが長椅子に座りながら俯いているフレイに呼びかける。


 しかし、彼は目をつむったまままるで死んだように動かない。


「ありゃ? もしかして寝ちゃってる?」

「寝てる!? 無防備!? もしかしてまさぐり放題!?」


 イスナが目を怪しく煌めかせて、手をわきわきと動かす。


「イ、イスナ姉さん……」

「じょ、冗談よ……。はあ……でも無防備な姿も素敵……」

「あはは……。先生、ずっと頑張ってたみたいですから、今日はお休みしてもらって私達だけでやりましょう」

「ちぇ~っ、久しぶりにフレイに見てもらえると思ったのに……」


 姉妹たちは三者三様の視線で穏やかな寝息を立てているフレイを見守る。


 しかしフェムだけが杖を抱きかかえたまま、たどたどしい足取りで彼の元へと駆け寄る。


「先生、ありがと……」


 そのまま側に立つと寝ている彼だけに聞こえる程の声でゆっくりと喋り始めた。


「私、先生のおかげで……自分のこと、まあまあ好きになれたよ……」

「フェムー! 何してるのー? やるわよー!」


 朝練の準備を始めたイスナがフェムに呼びかける。


「うん! 今行く!」


 フェムは振り返り、普段より大きな声で返事をする。


 そして、自分の頭部を覆っている布を取り払うと、姉妹たちの元へと駆け寄って行った。

ここまでの物語に加筆を含む再構成を行った書籍版の第一巻が8月12日(水)に発売されました! 


更にメロンブックスやとらのあな等の一部店舗で購入して頂けると特典SSが付属されるようです。

内容は「フレイが到着するまであの部屋で待機していた五姉妹の会話」になります。

なかなか良いものが書けたと自負しているので是非合わせて読んで頂ければと思います。

(特典が付属する店舗の情報に関しては下記のサーガフォレスト公式サイトよりご確認ください)


https://syosetu.com/syuppan/view/bookid/4177/

https://www.hifumi.co.jp/books/lineup/9784891996574.html


挿絵(By みてみん)

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[一言] ヤンデレ元生徒にドM次女…… 天使はフェムだったか
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