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濡れ場の書けない作家

作者: 秋川滝美

「全然萌えません!」


「えー・・これでも結構頑張ったんだけど・・」

「頑張ってこれですか?今時少女漫画だってもうちょっとそそります!」

「え、そうなの?」

「総レースのひらひら少女が頬染めて、木陰からそっと病弱な少年を覗くなんて時代は遠く去りました。」

「純情な少女と少年はどうなったのよ?」

「少女は木陰から覗いて少年を見初めたら、どうした加減かあっという間に使い魔が

召喚されて、少年を魔法で身動きできなくしたあげく、馬乗りであれしたりこれしたり・・」

「うわあ!!!!なんだそりゃあ!!やられっぱなしかよ少年!!」

「かと思ったら、実は少年は前世の記憶持ち覚醒前の魔王で、あれされたりこれされたりの刺激で一気にエロ魔神化。形勢逆転で使い魔蹴散らし、少女を攫って閉じこめて縄やら鞭やら・・・」

「ひー!!勘弁して~!!」

「とかいうのが、普通に立ち読みできる本屋で売ってるわけですよ。」

「世も末だ・・青少年の未来は真っ暗だ。」

「青少年どころか、そういうの書けなかったら先生の未来も真っ暗です!」

「ううーー・・無理だ。私には無理だあああ!」

「経験値低すぎなんじゃないですか?」

「し・・失礼なこれでも経験の一つや二つ・・」

「先生確かずっと田舎の共学校でしたよね?」

「それがなに?なんか問題?」

「どうせ、派手と地味の両極端しかいなくて、しかも先生鉄板で地味子だったでしょ?」

「う・・」

「派手派手一派を横目で睨んで、ほんとは羨ましくてよだれ垂らしてるくせに

『学生の本分は・・』とか言っちゃって、文学書にかじりついてたんでしょ。

 くらーい青春の挙げ句、都会にでてきたは良いけど、大学デビューも失敗して、

 都会ボーイに声かけられて騙されて遊ばれて、『つまんない女』なんて捨てられて、

 願望妄想ならともかく、マイナス感情の恨み辛み全投入で文章に突っ込んだら、

 何故か新人賞取っちゃった・・ってパターンじゃないですか?」

「図星だけど、そこまでいわなくてもいいじゃないの・・(涙)」

「そこまで言われる前にちゃらっと書いてくれれば良かったんですよ」

「健全育成の純情少女のなれの果てには無理だ」

「わかりました。」

「なにがわかったの?」

「忍びがたきを忍びます。」

「なに!?」

「先生に圧倒的に欠けてる色気補填のために、経験値上げて差し上げます。」

「いや・・あの・・」

「全部書いたら出版できないぐらいすごい経験させて上げますよ。頭ん中エロで一杯に

してしまえば多少は漏れだして文章に載るでしょう」

「ま・・待ちたまへ青年!」

「待ちません。中身全然ついてけてないくせに、無駄にエロイんですよ、先生の身体。

調度いい機会だからおいしく頂きます」

「セクハラだ~!!」

「人聞きの悪い。先生が書けないって言うから協力するんじゃないですか」

「そんな協力はいらーーーん!!どんなエロも前提は愛だあ!」

「愛がないとでも?」

「あ・・あるのか??」

「どう思います?」

「そんなこといわれても・・」

「わかんないんですか?」

「え・・と・・」

「わかせらせてあげますよ」

「う・・?」


その後、活字に出来ない経験をさせられた作家がどんな濡れ場を書いたかは定かではない。

(というか・・・やっぱり書けなかった可能性大である)



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