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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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53 ブルーホライズン

本日も2話投稿いたします。2話目は17時~18時の間に投稿予定です。こちらもよろしくお願いします。

 翌日の朝、魔法学院の理事長室で東十条篤胤は、朝の報告を秘書から聞いている。



「ご当主様、特待生暗殺に派遣しました部隊は、失敗いたしました」


「なんだと! 我が流派の腕利きを数多く揃えて送り込んだはずではないのか?!」


「はい、最も気付かれにくい呪蜘蛛の術を操る者を送り込みましたが、2名が死亡して他の者も気絶させられて道路に放り出されておりました」


「あの者たちが死んだだと?! そんなことが有り得るかぁぁ!」


 理事長は机を叩いて怒りを露わにするが、秘書は冷静な表情で報告を続ける。



「残念ながら事実でございます。私にとってもこの結果は真に意外でした。しかしながら、例の特待生に呪蜘蛛の術が破られたと考えて間違いございません」


「特待生のあの2名が、それほどの力を持っているというのか! 俄かにそんな話が信じられぬ」


「ですが、手の者は破れました。これは揺るぎない事実でございます」


 さすがに秘書にここまで理路整然と説明されてしまうと、彼女の話に信憑性を感じざるを得ない。理事長は瞑目しながら、一旦頭の中を整理を試みる。


 学院生といえば通常は駆け出しの冒険者レベル。いやほとんどの生徒がそこまで到達しておらず、いわば冒険者の卵である。プロの陰陽師にかかれば赤子の手を捻るようなものだったはずだ。ところが蓋を開けてみれば、そのプロがあっさりと返り討ちにあってしまった。いくら特待生だからといって、このような信じられない出来事があるのだろうか。しかも今回送り出したのは、最上級の腕を持ったプロであったはずだ。娘の雅美の応援につけた手合いとは、段違いの高度な技の持ち主だった。それが……


 様々な考えが浮かんでは消えて、理事長の頭の中は千々に乱れる。秘書の話を信じようにもこれまでの自身の経験が邪魔をして、事ここに及んでもいまだに耳にした事実を受け入れがたいのであった。


 だが一つだけはっきりしていることがある。それは、このままあの特待生を放置しておくと、学院内での自らの権限は学院長の思うままに剥奪されていくという、断じて許しがたい未来であった。



「絶対に例の特待生をこのままにはしておけぬ! さて、どうすればよいか?」


 理事長の眼光には、何らかの対応策を出せという意味が込められていた。秘書はその意を汲んで、暗殺が失敗した場合に備えて用意していた第二案を提示する。



「此度の暗殺計画が失敗しましたので、東十条家の者では手に負えないと判断して間違いはございません」


「ではこのまま手を拱いているというのか?!」


「ご当主様、そうではございません。外部の者を利用するのです。ちょうどいい具合に、例の特待生に恨みを持つ者がおります」


「外部の人間…… 役に立つのであろうな?」


「役に立たない場合は、使い捨てにすればよいだけです。東十条家には、害は及びません」


「まあ、そうであるな。よかろう、詳しく聞かせてくれ」


「はい、現在……」


 秘書からもたらされる案に聞き入る理事長。そして全て聞き終えてから、彼はその内容に納得した表情で大きく頷くのであった。




 ◇◇◇◇◇




 伊豆の旅行から帰ってきた聡史たちのパーティーは、美鈴を除いた四人が第3訓練場に集まっている。バカンスのために2日間訓練を休んでいたので、その分を取り返す意味で午前中はここでひと汗かこうという目論見であった。


 現在美鈴は、生徒会に顔を出して不在だ。夏休みにも拘わらず、終えなければならない仕事が山のようにあるのだった。むしろこの2日間休んだ分だけ、彼女の元に回されてくる仕事は増えているかもしれない。



 聡史は訓練を開始するにあたって、自分たちのパーティーメンバーに連絡事項を伝えている。



「今日からここにいる〔ブルーホライズン〕の五人が一緒に訓練に参加することになったから、面倒を見てもらいたい。昨日まで一緒に旅行に行った間柄だから、気心は知れているよな」


「「「「「どうぞよろしくお願いしま~す!」」」」


 新入りの五人が頭を下げて挨拶をしている。それを見た桜は……



「お兄様! 私がみっちり鍛えてよろしいのでしょうか?」


「彼女たちは俺が教える。もちろん、桜、明日香ちゃん、カレンの三人にも手伝ってもらうつもりだ」


「お兄様は、女子を囲いたいのですね!」


 桜の底意地の悪い発言に、カレンの目がキラリと光る。表情は笑顔なのに、その目だけが笑っていなかった。聡史の背筋に一瞬冷たいものが駆け抜ける。



「違ぁぁぁぁう! まずは武器の扱いをもう一度基本から教えていくんだぁぁ! 変な誤解を生むような発言は慎んでくれ!」


 同じ場所で準備体操をしているEクラスの男子から一瞬どす黒いオーラが立ち込め掛かったが、彼らはすぐに引っ込めて何食わぬ顔で体を動かしている。いつの間にかずいぶん器用になったものだ。そのうち立派なオーラ使いになれるかもしれない。


 それよりも気になるのは、この場にいる男子生徒の数がいつの間にか増えていることだ。一緒に伊豆に行った8名の他に、今日から新たに3名が加わっている。どうやらカレンと同じ場所でトレーニングできるという話を聞きつけたようだ。Eクラスから名だたるオッパイ星人がこの場に大集結している。



「それでは桜は、明日香ちゃんとカレンの訓練を頼む。俺はこっち側で五人を担当するから」


「わかりましたわ!」


 こうして聡史は桜たちとは別れて、ブルーホライズンの五人を引き連れてひとまずは訓練場の隅に向かっていく。芝生の上に全員を座らせてから、今後の説明を開始した。



「当分はここで武器の扱い方を練習しながら、時々俺が一緒にダンジョンに入っていく。実際にゴブリンと戦う様子を見ておきたいからな。それに先立って、全員のステータスを確認させてもらっていいか?」


「はい! もちろんです」


 即断したのは、リーダーを務める竹内真美であった。自分たちの実態を知ってもらわなければ、どこを重点的にトレーニングしていくのか計画の立てようがないくらいは、彼女もわかっている。


 ということで、五人が順番にステータス画面を開く。




【竹内 真美】  16歳 女 


 職業        剣士


 レベル        5


 体力        36


 魔力        38


 敏捷性       33


 精神力       46

 

 知力        40


 所持スキル     剣術レベル1 パーティー指揮レベル1 




【蛯名 ほのか】  16歳 女 


 職業        剣士


 レベル        5


 体力        34


 魔力        26


 敏捷性       39


 精神力       32

 

 知力        40


 所持スキル     剣術レベル1 敏捷性上昇レベル1




【片野 渚】  16歳 女 


 職業        槍士


 レベル        5


 体力        37


 魔力        25


 敏捷性       28


 精神力       27

 

 知力        35


 所持スキル     槍術レベル1 気配察知レベル1




【山尾 美晴】  16歳 女 


 職業        戦士


 レベル        5


 体力        45


 魔力        11


 敏捷性       22


 精神力       23

 

 知力        25


 所持スキル     戦斧術レベル1 気合強化レベル1




【荒川 絵美】  16歳 女 


 職業        槍士


 レベル        5


 体力        29


 魔力        19


 敏捷性       25


 精神力       27

 

 知力        36


 所持スキル     槍術レベル1 



 こう言っては身もふたもないが、五人ともこれといった特徴がないドングリの背比べといったステータスであった。桜が鍛え上げる前の明日香ちゃんよりも、ちょっとだけマシという感じだ。訓練を引き受けたはいいが、聡史としては前途多難を予想せざるを得ない。



「全員まだレベル5か…」


「はい、すいません。1階層に入っても、3回に1回しかゴブリンを倒せないんです」


 返事をする真美の表情は、申し訳なさでいっぱいの様子だ。彼女の頭の中には『見捨てられてしまったらどうしよう…』という思いが過っている。


 

「倒せない時はどうするんだ?」


「逃げます!」


「は?」


「全員で逃げ出します!」


「逃げるのかい!」


 ほぼ初期の明日香ちゃんを5人も抱えてしまった聡史としても、さすがに抜本的な対策を講じなくてはならないという必要を感じるのだった。

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