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344 日本に降りかかる暗雲

久しぶりの投稿となります。半分事実もちりばめた内容はかなりヤバいです。

 魔法学院対抗戦が無事に終了して翌日の土曜日、この日もデビル&エンジェルは弥生を伴ってダンジョンでのレベル上げに勤しんでいる。



「弥生ちゃん、オーガごときに怯んでいたらこの先には進めませんわ」


「桜ちゃん、ム、ムリです。こんな怪物に私の魔法が効果あるとは思えません」


「まったく、弥生ちゃんの性格は明日香ちゃんソックリのヘタレで手がかかりますわ。それっ!」


 迫りくるオーガをパンチ1発で片付ける桜を見て弥生は思いっ切りドン引きしている。もちろん頭では桜や聡史の強さは理解しているのだが、オーガがもたらすビジュアル的な恐怖に足がガクガクして魔法を放つどころの騒ぎではないよう。



「はぁ~、ビックリしました。今までの魔物と比べて迫力が段違いじゃないですか」


「弥生、最初から気持ちで負けていたら何も始まらないんだぞ。お前の魔法が効かなくても周囲がキッチリフォローしてやる。恐怖心に打ち勝ってこそ、新しい世界が開けてくるんだ」


「そうですわ。私が先頭にいる限り魔物は弥生ちゃんのいる場所まで辿り着けませんから、安心して魔法をぶつけることに専念してくださいませ」


「聡史さん、桜ちゃん…」


 頼もしすぎる従兄妹二人の激励に何とか精神を立て直す弥生。続いて通路に登場したオーガに向けてファイアーボールを放つ。だがこちらに向かってくるオーガの足は止めたものの、通路に響き渡る咆哮をあげつつパーティーを睨み付けるオーガ。そこに…



「ホーリーアロー!」


 後方に控えているカレンの右手から光の矢が放たれる。当たり前のようにオーガの心臓を貫いていくホーリーアロー。カレンはここまでアンデッド以外に攻撃魔法を放ってこなかったが、弥生の目の前で初めて神聖魔法を披露している。



「す、すごい… 正確に心臓を狙って、しかも命中させるなんて…」


 弥生が呆気にとられるのも無理はない。本物の女神様が放った魔法なのだから、これくらいの芸当は朝飯前。カレンにとっては目を閉じていても可能な極々初歩的な魔法に過ぎない。ここで美鈴が…



「弥生ちゃん、今のカレンの魔法を見たでしょう。ひと口に魔法と言っても使用する個人によって千差万別なのよ。だからみんなちょっとでも魔法の威力や正確性を高めるために日々努力しているの。弥生ちゃんはダンジョンで戦う行為自体専門ではないかもしれないけれど、技能やスキルを高めておいて損はないわ」


「美鈴さん、ありがとうございます。確かに私はバーチャル空間やネット内で構築された世界が主戦場で、なんというかダンジョンではお客様感覚が抜けきっていませんでした。確かに現実空間でも魔法能力を磨いていくのはいつかきっと自分に役立ちますよね」


 弥生は学院に入学した際の聡史との遣り取りを思い出している。コンピューターネットワークの内部において戦略級の能力は発揮する自分のせいで母親が危険な目に遭わないかという危惧と自分たち母子の命は自分で守りたいと望んだ経緯を改めて思い出しているかのよう。


 こうしてオーガを相手に何度か戦いを繰り返していくと、徐々に弥生も気持ちにゆとりが出来てくる。正確に魔物の足元目掛けてファイアーボールを放って足止めをして、トドメは聡史や桜に任せるというダンジョンにおける一般的な魔法使いとしての役割を果たせるようになってくる。


 その後も順調に討伐が続いて…



「よし、弥生のレベルもノルマをクリアしたようだし、そろそろ外に出るとするか」


「弥生ちゃん、お疲れさまでした」


 聡史の撤収の掛け声に合わせてカレンが労いの声を掛けるが、弥生の表情はもうひとつパッとしない。その理由は…



「弥生ちゃん、午後はレベルに順応するための訓練ですから、どうか頑張ってくださいませ」


「ツ、ツライ…」


 弥生が弱音をこぼすのも無理もない。このあと夕方になるまで桜による容赦ないスパルタ訓練が行われるのだから、それは彼女の心情としてはどこかに逃げ出したい気持ちであろう。


 ということで転移魔法陣に乗って地上に出て、やや遅めの昼食を摂り始める。ちょうどメンバー全員が食べ終わる頃、学生食堂のサンサンと太陽が降り注ぐ大きな窓の外に生徒たちが大勢連れ立って校門の方向に歩いていく様子が映る。



「おや、皆さんどこに行くのでしょう?」


「なんだか全員が校門のほうに向かっているみたいね」


 桜と美鈴が頭の上に???を浮かべつつ言葉を交わしていると、食堂内に明日香ちゃんとクルトワが連れ立ってやってくる。



「やっぱり皆さんここにいましたか。せっかくですから私たちもおやつをいただきましょうよ~」


「明日香ちゃん、ナイスアイデアです。私は秋のマロンパフェにします」


 二人とも昼食時にしっかりとデザートまで食べているにも拘らずいい気なモノ。というよりも、ただ単にデザートにありつくために食堂に来たのだろうか?


 だがそんなお気楽極まりない二人が急に大声をあげる。



「イタタタタタタ! 耳を引っ張らないでくださいよ~」


「イヤァァァァ! 耳が伸びちゃいますからぁぁぁ!」


「これ、明日香とクルトワよ! 本来の用件を忘れるでない」


 二人の耳を引っ張ってデザートタイムを阻止しているのは玉藻の前。何やらデザート友の会で内紛発生かという状況にも見える。ここで桜が玉藻の前の隣に控える天狐に声を掛ける。



「ポチ、一体何の騒ぎですか?」


「主殿、どうやら外敵を討ち果たすために遠征に出ておった者たちが帰ってくるそうでございます。全員で出迎えようという声があったので、こうして外にまかり出てまいりました」


「遠征… ああ、魔法学園対抗戦の選手たちが戻ってくるんですね。なるほど、私たちが不在でもしっかり優勝をもぎ取ってくれたんですから、ここはひとつ出迎えはしないといけないですわ」


 天狐の説明で桜だけではなくて聡史たちもこれから何が始まるのか理解したよう。明日香ちゃんとクルトワはデビル&エンジェルを呼びに来たはずが、ちゃっかりデザートに手を伸ばそうとして玉藻の前に阻止されたというのが事の真相らしい。 


 ということで食事を終えた一同が生徒たちの流れに合わせて校門方面に向かうと、対抗戦の出場選手を乗せたバスが到着する光景が目に飛び込んでくる。大急ぎで両側に人垣を作って、なんとか出迎えの準備は完了する。ちなみに聡史たちは外に出てくるのが遅かったせいもあって一番校舎に近い場所でバスから降り立ってくる生徒を待ち受けている。


 しばらくすると3台のバスから続々と出場生徒が降り立って、出迎えにやや照れたような笑い顔を浮かべつつも人垣の間をゆっくりと歩いて校舎方面に向かってくる。先頭を進むのはどうやら生徒会のメンバーのよう。彼らには縁の下の力持ちに徹してくれて総合優勝を勝ち取った今回の成果に称賛の声が飛んでいる。



「会長、2週間お疲れさまでした」


「選手たちへのフォローご苦労様でした」


「我が校の伝統と名誉をしっかり守ってくれてありがとう」


「総合優勝おめでとう!」


 とまあこんな具合に左右の人垣から盛んに声が飛んでいる。今回も連続優勝というプレッシャーの掛かる中で、デビル&エンジェルの不在といったアクシデントがあったものの見事に優勝を果たした成果に居残りの生徒たちからは大きな拍手も湧き上がっている。


 生徒会メンバーに続いて人垣を進むのは1年生の代表選手たち。先輩たちからは…



「1年生ながら全種目優勝とは大したもんだ」


「来年以降も安泰だな」


「よく頑張ったぞ! 来年もまた頼む」


 などといった歓声が飛んでいる。そして1年生の代表選手たちはついにデビル&エンジェルの前に。先頭を進んでいた学は桜の姿を見つけてすぐさま近寄ってくる。



「桜ちゃん、個人戦に続いてチーム戦も無事に優勝できたよ」


「学君の力を信じていましたわ」


「でも今回の対抗戦で他の魔法学院にも強敵がいるとわかったから、今後はますます鍛錬を積んで強くならないといけないと気付いたんだ」


「素晴らしい心掛けですわ。一度の勝利に慢心せずに高みを目指して精進してくださいまし」


 すっかり師匠と弟子のような会話が交わされている。その隣では目敏く聡史を見つけた美咲が…



「クックック、他愛もない有象無象はこの悠久の大魔導士の前では無力であった。邪龍の封印を解くまでもなくて拍子抜けの思い」


「調子に乗るんじゃない」


 いつものように聡史の平手がペシッと美咲の頭を叩いている。涙目になって聡史を見つめる美咲だが、1週間聡史と離れていただけにその姿を間近で見られてなんだか嬉しそうな表情。こうして聡史に突っ込まれるのが無上の喜びとでも言わんばかり。そろそろ聡史も美咲の気持ちに気付いてやってもいい頃合いではないだろうか。



 1年生が通り過ぎていくと、今度は2年生がやってくる。待ち切れない様子で聡史の元にダッシュしてきたのはブルーホライズン。



「師匠、個人戦の雪辱をチーム戦で晴らしてきました」


「マギーさんたちに堂々と勝利しましたよ~」


「真美さんの作戦が上手い具合に嵌りました」


 メンバーたちが一斉に駆け寄ってきては、口々に自分たちの戦果を報告する。昨年の1学年チーム戦に続いての連覇は胸を張ってもいい成績と言えるだろう。これには聡史も目を細めている。



「うん、全員本当によく頑張ったな。真美の戦術の組み立ては見事だったぞ。それから前衛で体を張ってマギーの猛攻を食い止めたのも立派だった。あとは渚の活躍は一際目を惹いたな。とにかく全員頑張ってくれて俺も嬉しいぞ」


「ヤッタ~! 師匠に褒めてもらえて気絶するまで頑張った甲斐があるってもんだぜ」


「美晴ちゃんが一番体を張ってたもんね」


 美晴は天に向かって大きなガッツポーズ。確かに彼女がマギーの猛攻を食い止めなければ、あっという間に他のメンバー含めて赤子の手を捻るように蹂躙されていたことであろう。その点でいくとやはり最大の功労者は美晴かもしれない。


 こんな雰囲気で聡史に勝利の報告をしているブルーホライズンの隣では、頼朝たちが桜の前で土下座をしている。



「ボス、最低限のノルマでした決勝進出を逃してしまい申し訳ございません」


「力の限り頑張ったんですが、手も足も出ないままにタコ殴りにされました」


「まだまだ鍛錬が足りていないと痛感しております」


「あまりの申し訳なさに、ボスの御前で腹を掻っ捌いて…」


「まあまあ、そこまで深刻に落ち込まなくてもいいですわ」


 桜の口から飛び出した思いもよらないセリフに、土下座している4名が思わず顔を上げる。



「相手がマギーさんたちなら、負けても仕方がありません。ただし来年は絶対に勝つつもりで精進なさいませ」


「ボス、ありがたき温情に感謝いたします」


「今日から1年間、死ぬ気で鍛え上げてまいります」


 桜としてももとより頼朝たちがマギーに勝てるなどとは考えてはいなかった模様。要は彼らに本気で挑ませて、たとえ結果的に返り討ちに遭ったとしても次回の糧にすればよいという考えだったらしい。桜にしては珍しい温情溢れる言葉に、頼朝たちは涙を流して感謝している。桜としてもこれだけ発破をかけておけば頼朝たちは否が応でも奮起して戦闘能力の向上に邁進するだろうと見越しているのだろう。


 ともあれこうして無事に出場選手たちの出迎えが終了して、魔法学院は日常を取り戻していくのであった。






   ◇◇◇◇◇






 弥生の訓練は翌週にも行われて、予定通り10日間で彼女のレベルは100まで到達する。魔力の数値は当初の何百倍にも達しており、これなら相当に高度なミッションを繰り返しても無理なくこなせる目途がたつ。


 ということで11月に入った途端、弥生は量子コンピューターオペレーションルームに詰めっきりの身となる。初日から高度なミッションが組まれており、彼女は端末の前に座りっきり。そのおかげで初日だけでハッカーによる攻撃を撃退するプログラムが完成している。量子コンピューターと連動して国外からのネットワークに侵食する魔の手を封じて、さらに自動的に根源を追跡してかつ反撃までこなすという、ある意味究極のハッカー対策が出来上がる。


 大よその仕組みとしては衛星軌道上の量子コンピューター本体に千体にものぼる弥生のアバターを常駐させて、日本国内へのサイバー攻撃を感知するとそのアバターが出撃してコンマ何秒の単位で攻撃拠点を特定。同時に相手方のファイアーウオールを瞬時に突破して攻撃プログラムを破壊するという手順が組み込まれている。相手がスパコンを用いようとも量子コンピューターの演算速度はその何兆倍にも上るので、手も足も出ないままにプログラムを破壊されて一巻の終わりを迎えるというまさにハッカー殺しのヤバい迎撃方法と言えるだろう。もちろんそこには銀河連邦の技術が組み込まれているのは言うまでもない。さらに弥生の能力まで加わると、まさに無敵のハッカー対策となる。


 もちろんこのプログラムは随時増強されていく予定で、弥生のアバター軍団は最終的に百万体まで増やされる計画。つまり同時に百万人のハッカーを相手取ってネットワーク上の戦争が可能となる。さらに恐ろしいのは、弥生のアバターはけっしてパッシブというわけではない点。つまりこちらからも攻撃を仕掛けるのも可能で、同時に万単位の敵のコンピューターをそのプログラムごと破壊可能となっている。


 ここまでサイバー攻撃に対する備えが万全となった時点で、3日目に例の〔WEB〕というフレーズの解読が開始される。すでにこの時点で量子コンピューターが最重要事項という評価を下している点を鑑みるといつまでも放置はできない。というわけで3日目の朝から弥生は端末の前でミッションにあたっている。



「それでは人民解放軍のアカウントを乗っ取ります」


「オーケー、痕跡を残さないように注意してくれ」


 サブオペレーターとのやり取りもすっかり慣れた様子の弥生。慎重に自らのアバターを攻略対象のコンピューターに潜り込ませていく。もちろんこれはさほど難易度が高いミッションではないので、難なく成功する。当たり前だが相手に気付かれている気配はない。コンピューターを取り扱う人間ですら気付かないうちにいつの間にかアカウントが乗っ取られているなんて、ある意味悪夢と言えよう。だが弥生の能力をもってすれば実に容易い。



「アカウントをハッキングしました」


「いいぞ、それじゃあ本命に取り掛かろうか」


 続いて弥生はまったく別のコンピューターに侵入を試みる。サブオペレーターが「本命」と呼んでいたこちらのコンピューターの持ち主は、何を隠そう米国ホワイトハウスの首席補佐官。表向きは大統領をバックアップする立場だが、彼には裏の顔がある。それはディープステ―ト(DS)が送り込んだ大統領を操る黒幕。現在のホワイトハウスにおいて最も決定権を持つのはこの首席補佐官に他ならない。



「侵入に成功」


「よし、すべてのデータを吸い上げろ」


「了解」


 というわけで弥生によってパソコン内に保存されているすべてのデータが一瞬で手元の端末に読み込まれていく。さらにオマケで…



「それじゃあ、最後のお土産を置いといてくれるか」


「了解」


 お土産といえば聞こえはよいが、その実は悪質な嫌がらせに他ならない。弥生は先程入手した人民解放軍のアカウントをさりげなく痕跡として残している。これでホワイトハウス側は中国からハッキングを受けたと勘違いしてくれるはず。それも政府の中枢が簡単に攻撃を受けてしまったとなれば、セキュリティー担当者のクビが飛ぶのは確実だろう。


 ここまでが弥生の出番。あとはこちらで吸い上げたデータを解析していけばよい。というわけで他のオペレーターも協力して数人で首席補佐官のメールの遣り取りを中心にして解析作業が進んでいく。しばらく無表情でメールの内容に目を通していたオペレーターだが、次第に険しい顔つきになっていく。何か余程重要な内容が発見された様子。


 そしてついに〔WEB〕についての恐るべき内容が判明する。



「室長、これは非常に不味い内容です」


「どれどれ、見せてくれ」


 プリントアウトされた文章を目にしたオペレーションルーム室長の表情が一瞬で強張っていく。



「これは非常事態だ。すぐに本省とダンジョン対策室に連絡する」


 その口振りからすると、どうやらオペレーションルームだけでは手に負えないような内容が記載されているよう。ということで弥生がハッキングした内容は間髪を置かずに防衛省とダンジョン対策室に伝えられていくのだった。






   ◇◇◇◇◇






 こちらはダンジョン対策室。量子コンピューターオペレーションルームからもたらされた情報は、いち早く岡山室長に報告されている。岡山室長はオペレーションルームからもたらされた複数のメールの内容に目を通すと、たっぷり10分間なにも言葉を発せずに瞑目して考えをまとめている表情。やがて…



「おい、下手をすると第3次世界大戦が勃発するぞ」


「室長、穏やかではありませんね」


「これを読んでみろ。ついにDSが本気で牙を剥いてきたようだ」


 怪訝な表情で岡山室長から受け取った紙束に目を通す参謀たち。彼らの表情が徐々に険しくなって、中にはゴクリと生唾を呑む音すら聞こえてくる。その紙束に書かれている内容は大よそ以下の通り。



〔世界緊急同時放送(WORLD EMERGENCY BROADCASTING)〕


 ダンジョンを次々に攻略して未知の力を手に入れようとしている日本の危険性を全世界に訴え、同時に日本の孤立化を図り、異世界で得られる資源をDS並びに我らの主に捧げる。さらに日本を各国で分割占領して二度と立ち上がれないように徹底的にその技術や人的資源を奪い去り、世界の中でも最貧国にまで蹴落とす。なお具体的には中国、ロシア、北朝鮮、韓国に武力を行使させて日本に潰滅的なダメージを与えて、米国は傍観しつつ最後に甘い汁を奪い取る。


 放送は世界各国のすべてのテレビ局やラジオ局、動画投稿サイト、SNS等を利用して毎日4回、各々30分ずつ日本の危険性を誇張して訴える内容を作成して、広く世界中の人間を洗脳して日本に対する反感を高めつつ…


 大まかに要約するとこのような内容となっている。WEBという略称はWORLDのW、EMERGENCYのE、BROADCASTINGのBから取られているらしい。


 それにしても日本にとっては大迷惑な話。しかも日本の周囲に存在する危険な国家が4つもまとめて襲い掛かってくるという内容。同盟国であるはずの米国は傍観に徹して日本には手を貸さないというのがなんとも憎たらしい。これがDSの遣り口かと、岡山室長が危機感を抱くのも無理はなかろう。


 さて戦後70数年、日本の同盟国という位置付けを守ってきた米国がなぜここで急に態度を変えたかというと、それは前大統領の時代まで遡る。不動産王として知られた45代大統領は実はQと非常に近い関係を保っていた。そして大統領の座2期目を賭けた選挙に勝利した暁には世界中にDSの闇を知らせて、その背後に蠢く真の敵であるレプティリアンとの戦いを決心していた。


 人類の歴史に介入して数多の悲劇を生んだ黒幕のレプティリアンの存在を公にする目的で計画されたのが〔世界緊急同時放送〕で、この放送によって人類が新たな歴史に目覚めて不条理な過去との決別がやってくるはずだった。


 だがDSは前大統領の再戦をありとあらゆる方法で阻もうとする。選挙票の水増しでとある選挙区では有権者数よりも投票数が上回るなどといったあり得ない事態が発生。それだけではなくて集計機械のプログラムに細工して、一定の票が現大統領の得票に入れ替わるなどの不正にも手を染めた。


 このなりふり構わない不正の結果、現役大統領が落選してDSの操り人形である現大統領が当選する。選挙不正を裁判所に訴えてもDSの圧力を受けた裁判官が審議を認めずに、史上稀に見る不正選挙が罷り通ってしまった。米国の民主主義が地に落ちた瞬間と言えよう。


 そして現在、11月の初旬に米国大統領選挙を控えている。現大統領のパイソン氏は就任以来過去最低の支持率のままで、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの戦闘に有効な解決策を提示できないでいる。このままでは再選は誰の目にも不可能な状況で、さらには前大統領が虎視眈々と返り咲きを狙うというDS側としては非常に不味い情勢。この不利を覆すには国内世論を掻き立てるようなスケープゴートが必要となっている。そこで白羽の矢が立ったのが日本。日本を世界中の敵に仕立て上げることで選挙戦の不利を何とか乗り切ろうという、DS側としても一か八かの手に打って出た形となっている。


 追い込まれたDSだが、このような状況は日本としても非常に困った状況。何しろ戦後80年近くに渡って平和を享受していただけに、そこに突然世界の敵認定されては堪ったものではない。


 総理大臣官邸と防衛省、さらにダンジョン対策室まで加わって極秘の対策会議が連日繰り広げられていくのであった。


  

米国の裏切りが判明して日本政府はどのような手に打って出るのか。そして世界緊急放送が実際に流れて世論はいかように反応するのか… この続きは出来上がり次第投稿いたします。どうぞお楽しみに!


それから、読者の皆様にはどうか以下の点にご協力いただければ幸いです。


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