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314 模擬戦週間初日、魔法部門の様子

聡史たちが異世界にいる間に、模擬戦週間がスタート……

 異世界に赴いた聡史たちが用件を片付けて帰還の準備に入った頃、こちら魔法学院では模擬戦週間の開幕を迎えている。


 今年から開催要項が変更となっているため特に魔法部門においてはどのような結果が出てくるのか今一つ予想できない面がある。とはいえ生徒たちにとって年間成績に大きく関わる重要なイベントなだけに、ほとんどの生徒が緊張と不安を抱えつつこの日を迎えている。


 だがこの女子生徒だけは人並みの不安や緊張とは全くの無縁であった。そんな彼女が所属するパーティーの開催初日の朝食の様子をお伝えしよう。



「いや~、やっと始まるのか。楽しみすぎて昨日はよく眠れなかったよ~」


「美晴ちゃんたら、ベッドに入って5分もしないうちにグッスリ眠っていたじゃないの」


「真美さん、こういう場合はちゃんと同意してくれないと、せっかくの私のコンディション不良アピールが無駄になっちゃうよ~」


「美晴ちゃんのコンディション不良なんて誰も信じないから安心しなさい。しかもあなたの初戦は今日じゃないでしょう」


「いや、でもそこは、他の生徒の試合が始まるってだけで、こう、なんというか、ワクワクしてくるもんなんだよ~」


「大人しくクラスの仲間を応援するのよ。ちょっと目を離すと自分の試合みたいにエキサイトするんだから、くれぐれも自分の席から立ち上がらないでね」


「取り敢えず我慢できる範囲で自重します」


 色々とツッコミどころが多い美晴ではあるが、他の生徒の試合を観戦するにあたって真美からこれだけの注意を受けている。他の生徒の試合を見ているだけで、ついつい高ぶる血潮が抑えきれなくなるのであろう。


 その横では、ほのかと千里が…



「美晴ちゃんは相変わらずよね~。私たちのトップを切るのは千里だけど、準備は大丈夫?」


「私としてはやるべきことは済ませてあるけど、気掛かりな点が…」


「何が気がかりなの?」


「せっかくの舞台なのに、師匠が戻ってこないから」


「ああそうか。魔法部門は明日の一発勝負だから、師匠は間に合わないんだね。ちょっと気の毒かも」


 魔法部門は競技形式の一発勝負に方式が改められており、初日は1年生、2日目は2年生というスケジュールが発表されている。いまだ聡史が日本に戻ってきたという報告がない以上、どうやら千里の晴れ舞台を聡史に披露できずに迎えなければならないのはほぼ決定的。



「でも師匠がいない以上は私たち自身がしっかりしなければいけないんだから、足元を掬われないように頑張ってよ」


「ベストは尽くすけど、今ひとつ張り合いがないのは事実」


 千里が本音をぶっちゃけている。ピアノの発表会なのに父親が仕事の都合で見に来てもらえない子供の心境なのかもしれない。



「それにしても師匠は無事なのかな~?」


「無事に決まっているでしょう。桜ちゃんと美鈴さんまで一緒なんだから、何かあるなんて考えるだけで無駄に決まっているじゃないの」


「それもそうだった。予定では明後日頃に戻ってくるんだったよな。早く元気な顔が見たいな~」


 心配するセリフを漏らした美晴に真美が突っ込んでいる。確かに今回異世界に渡ったメンバーが何か事故に巻き込まれて怪我や命を失うといった事態はどうあっても考えにくい。彼女たちは知らないが、そこにあの怪物ジジイまで加わっているのだから、何があっても無事に戻ってくるのは最初から確定事情といえる。



「ともかく師匠がいつ戻ってくるかどうかは横に置いて、自分たちがしっかりと力を発揮することだけ考えなさい」


「真美さん、その点は大丈夫だよ。いざ試合が始まったら相手をブッ飛ばすことしか頭にないから」


「美晴ちゃんだけは、相手に怪我をさせないことをしっかり頭に入れておくのよ」


「は~い、善処します」


 美晴の生返事が響いている。試合開始の合図と共に思考が野獣と化する点は本人も認めているところ。相手に怪我を負わせるかどうかなどという甘い考えは頭から追いやって常に全力で突っ込んでいくのが美晴のスタイルであった。それだけに対戦相手は心から気の毒としか言いようがない。


 

「そろそろうちの開会式が始まるよ」


「それじゃあ、行きましょうか」


 こうしてブルーホライズンはグランドへと向かっていくのであった。






   ◇◇◇◇◇





 開会式は何事もなく終了して、屋外の各訓練場では格闘部門の1回戦が開始される。そしてこちらは第1屋内演習場。午前9時半から1年生の魔法部門がスタート。


 今年から導入された競技は、シールドで仕切られたフィールド内に30メートルの距離を隔てて立っている土を固めて作られた5体のゴーレムを魔法で倒すというもの。とはいえゴーレムは競技者の存在を感知して包囲しようと、人が歩く程度のスピードで移動する。この動く標的に対していかに確実に攻撃を当てて撃破していくかというのがこの競技の内容。もちろん包囲されて身動きが取れなくなった時点で終了となるので、自分とゴーレムの位置関係を常に把握しながら魔法を撃ち出さなければならない。


 ちなみにゴーレムの強度だが、1年生の場合はレベル30の魔法使いが5発の爆裂式ファイアーボールを命中させると壊れるように設定されている。もちろん氷魔法や風魔法でも、同等のダメージがあれば壊れる仕様。とはいっても5体すべて倒し切るには合計で20発の魔法を当てなければならないので、意外とハードルが高い。これが上級生ともなればレベル50程度の設定となるので、ますます厳しい内容に変化する。


 当然競技開始から時間が計測されており、より短時間でゴーレムを倒し切った生徒が上位になる仕組み。同様にゴーレムに包囲されてギブアップした生徒に関しては、より長い時間粘ったほうが評価される。もちろんその際には倒したゴーレムが多いほうが上位になるのは言うまでもない。


 したがって競技に臨む生徒は自らの魔法レベルに合わせて様々な戦術の組み立てをしなければならない。高威力の魔法で一気に短時間でゴーレムを倒すのか、それとも自分が捕まらないように常に位置を変えながら着実に魔法を当てて標的を倒していくのか。時には魔力量が足りなくなって、ゴーレムを倒すのを諦めて逃げに徹するといった作戦も点数を稼ぐという意味では有効となってくる。どのような戦術を生徒が選択しようとも、それは個人の自由に委ねられている。


 非公式ながらこの競技においてのこれまでの最高記録は以下の通り。


・第1位  神崎カレン   0.78秒


・第2位  西川美鈴    1.25秒


・第3位  楢崎聡史    3.47秒


 これは本番の競技が正確に実施されるかという予行記録会でマークされた数値となっている。その際に用いた各自の術式であるが、聡史は魔剣に風魔法を纏わせて一気に振り切るという荒業で5体のゴーレムを一撃で両断していた。ただし剣に魔力をチャージするために時間を食ったおかげでこのような数値で終わっている。


 美鈴は得意の重力魔法で押し潰した結果がこれであった。必要時間の大半は「グラビティ・インパクト」という魔法名を口にするために消費したもの。実際に魔法が発動してからは、コンマ0.0何秒でゴーレムがグシャッと音を立てて潰されていた。


 そして5体のゴーレムを倒すのに1秒を切るという驚異的なタイムをマークしたカレンだが、その際に用いた術式は驚くことに〔再生〕であった。主に彼女が重篤な怪我人を治癒したり、死んでしまった人間を生き返らせたり、破壊された建造物を元通りに戻したりと、非常に便利に使用している女神の術式。だが厳密に述べるとこの術は、過去の任意の時点でのその物体の姿を再現する術と定義される。つまり怪我を負った人間であるのなら、怪我を負う前の姿を再現することによって元通りの体に戻るという形で結果が導き出される。このようにカレンの術はあくまでもある時点の姿の再現であって、正確に言えば治癒の術式ではない。そして彼女はこの記録会に当たって、ゴーレムに壊れた状態を再現させていた。その結果が破壊につながるという効果をもたらしたのは、さすがとしか言いようがない。とある時点における物体の姿を思うままに再現可能というのは、まさに女神の力に相違ないだろう。


 実はこの記録会では参考記録ながら、桜によって0.38秒というあり得ない数字が叩き出されている。単純に拳から打ち出した5連発の衝撃波で破壊しただけなのだが、魔法が使用されていなかったので非公式な記録にも残されていない。他にも明日香ちゃんの1.47秒という記録もあるが、これはトライデントの性能をフルに生かしただけの数値なので扱いが保留とされている。明日香ちゃん自身が何ら魔法術式に関わっていないというのがその理由。現実にはトライデントから主と認められている時点でとってもスゴイんだけど…


 ちなみにこれらの数字は人間の目では判断できないので、後からビデオ解析によって導き出されたタイムとなっている。結果が出てから桜が残した一言は…



「やはり魔法よりも手っ取り早く殴ったほうが早いと証明されましたわ」


 いや、こんな芸当が可能なのはお前だけだろうが… 桜自身、このようなツッコミ待ちの心持ちだったのであろうか?


 さて、こんな一般的な人間の範疇からウッカリ足を踏み外してしまった面々は横に置いといて、今回の公式な競技会に目を移そう。1年生は正式なランキングが今回の模擬戦週間によって決定されるので、入試時点の成績順で競技が開始されていく。上位から順に競技を行うので、開始早々はAクラスの生徒たちがズラリと列をなす。



「1年Aクラス,鴨川歩美」


「はい」


 開始戦の前に立つ歩美。入試の時点で主席だった安部優一は格闘部門にエントリーしているので、第2位の彼女が魔法部門のトップバッターを務める。歩美が立つ横にはボタンが取り付けられた台が一つ置かれている。このボタンを押すとタイム計測が開始されて、同時にゴーレムも始動を開始する仕組み。


 一番向こう側の壁に沿って並ぶゴーレムの姿に目を遣りつつ、何回か深呼吸を行ってから歩美は何かを決断した表情でボタンを押す。



「スタート」


 無機質な機械音声が競技の開始を告げると同時に、ゴーレムが緩々と動き始める。双方の距離は約30メートル。魔法の照準に自信がない場合はこちらから前に出ていくことも考えられるが、歩美は躊躇わずにその場で右手を前に掲げて術式の構築開始。



「ホーリーアロー」


 右手から飛び出すのは白い光の矢。こちらに向かって真っすぐに歩き出すゴーレム目掛けて一直線に飛翔すると、狙いを過たずに着弾する。


 ドゴーン


 演習場内に響き渡る爆発音。轟音の後には飛散してバラバラになったゴーレムの残骸が転がっているだけであった。さらに歩美は続けて4発のホーリーアローを射出していく。すべてが狙い通りに標的を撃ち抜いて、あっという間に歩美の出番は終わった。



「結果、5体すべて破壊。所要時間、8.17秒」


 ウオォォォォォ


 観覧席に詰めかけた生徒の歓声が沸き上がる。歩美の魔法があまりに見事過ぎて、誰もが手放しに称賛の声を上げざるを得ないよう。



「凄いな、さすがは聖女だ」


「神聖魔法の威力って、やはり半端ないな」


「あんな攻撃魔法が使える上に、回復魔法までできるんだろう。もう無敵じゃないか」


「1年生でこの記録を抜ける生徒なんか誰一人いないだろうな」


「ああ、トップバッターで優勝は決まったも同然だ」


 確かにスタンドの生徒たちが口々に認めるように、歩美の魔法は術式の構築から展開、照準の合わせ方まで非の打ち所がない見事なもの。聖女の本領を見せつけられた以上、スタンドの聴衆たちは喝采を浴びせるほかないようであった。


 続いてAクラス上位の生徒たちが続々競技に臨むが、誰も歩美の記録にはカスりもしない。それどころか5体のゴーレムを倒すのがやっとという状況が続いていく。そもそもAクラス上位の生徒であっても現在レベル30前後で、ファイアーボール30発程度の魔力量しか持っていない。そんなギリギリの状態でムダ打ちを避けつつ5体のゴーレムに的確に魔法を当てていくのは中々至難の業といえる。


 中にはパニックに陥って遮二無二魔法を放った挙句に魔力切れ寸前になって座り込む生徒の姿もチラホラ登場する。Aクラスの生徒でさえこんな状況なので、Bクラス、Cクラスと進んでいくにしたがって更なる苦戦が続く状態が予想される。ゴーレムが攻撃してこないからいいものの、仮に本物の魔物であったら命を落としかねない。Aクラスからエントリーした生徒の競技が終わると、その後はBクラスへと移っていく。だが登場した生徒たちはますます苦戦していく模様。5体すべてを倒し切る生徒はまず見当たらない。



「やっぱり課題が難しすぎるよな~」


「普通に考えて無理だろう。術式を構築している間にゴーレムがどんどん迫ってくるし、1発2発命中してもビクともしないんだから」


「やっぱりAクラスはすごいんだな。全然太刀打ちできないよ」


 こんな声がスタンドのあちこちから漏れ聞こえてくるようになった。そんな状況が続く中で、すでに競技を終えた歩美は演習場から姿を消して療養棟にやってきている。



「カレン先輩、無事に出番が終わりました」


「歩美ちゃん、お疲れさまでした。成績はどうだったの?」


「はい、8秒ちょっとで全部倒しました」


「まあ、スゴイじゃないの。1年生でそれだけ出来れば大したものよ」


「カレン先輩、終わった競技よりも私にとって大事なのは回復魔法の技術です。カレン先輩と一緒にここに待機して、運ばれてくる怪我人の治癒に当たらせてください」


 歩美が療養棟にやってきたのは、怪我人が多く出るこの模擬戦週間中に可能な限りカレンから回復魔法のノウハウを教えてもらおうという目的であった。聖女としては攻撃魔法も大切だが、彼女自身回復や治癒に重きを置いている姿勢が窺える。確かに攻撃魔法は他の人間でも可能だが、回復を担えるのは自分とカレンだけ。自らの技量を高めておけばカレンの負担が減るという思いがあるよう。いかにも聖女らしい中々感心な心掛けではないだろうか。


 こうして午前中は怪我をした2名の生徒が運ばれてきて、カレンの指示に従って歩美が治癒していく。格闘部門が熱を帯びてくるのはこれから先であって、その際は怪我人は次第に増えていくことが予想される。ともあれ午前中のスケジュールは順調に進んで、二人は一緒に昼食を摂って午後に備えるのであった。





   ◇◇◇◇◇





 午後に入って屋内演習場では相変わらず魔法部門の競技会が継続中。トップバッターの歩美こそ見事にゴーレムを破壊したが、後続の生徒たちは苦戦が続く。ことに午後に登場してきたCクラスやDクラスに至っては、1~2体倒すのがやっと。中には1体も倒せずに包囲されてゲームオーバーとなる生徒の姿も。だがこんな重苦しい状況を一変させたのがEクラスであった。


 全部で六人の女子しかいないEクラスの魔法使い組ではあるが、彼女たちはかなり前から第ゼロ屋内演習場でこの方式の訓練に取り組んでおり、ゴーレムの動きに慣れていた。しかも彼女たちの現在のレベルは概ね40といったところで、Aクラスを相当上回っている。そのせいもあって的確な位置取りと動く標的に対する照準の定め方などが実に洗練されている。確実に1体ずつダメージを負わせながら破壊していって、五人は3分以内に全てのゴーレムを倒し切っていた。今のところ歩美のトップは揺るがないが、ベストテンの2位~6位に彼女たちがズラリと並んでいる。



「何が起きているんだ?」


「Eクラスがこんなにいい成績を取るなんて…」


「術式の構築が早い上に、照準が正確過ぎるぞ」


「無駄弾がひとつもないのは、訓練方法なのか?」


「それだけじゃない。位置取りが的確なんだよ。絶対にゴーレムに捕まらない位置に素早く移動しつつ魔法を放つから、全く危なげないんだ」


 スタンドからは驚きの声が漏れている。もちろん彼女たちは訓練開始当初は何も出来ないうちにゴーレムに捕まっていたのだが、今はその緩慢な動きを逆手にとって翻弄するまでに成長している。



「2年生もAクラスよりもEクラスが実力が上だという噂だけど、この学院はどうなっているんだ?」


 1年生にとっては公式戦が初めてということもあって、実際のEクラスの能力を正確に認識している生徒はごく少数と言ってもいい。だからこそEクラスの魔法使い組の活躍には大きな違和感を覚えているよう。


 そして最後に登場するのは美咲であった。中学時代は保健室で過ごしてきただけに、入学試験の成績は堂々のビリ。昨年度のビリだった明日香ちゃんと比べれば同情すべき事情は多々あるが、それでも学年で最下位には違いない。



「1年Eクラス、長谷川美咲」


「クックック、この悠久なる大魔導士がついに下々の眼前でその真の姿を披露するとは」


 聡史がこの場にいないせいで美咲の厨2フレーズが止まる所を知らない。眼帯と左手の包帯は外したものの、その両手には聡史からプレゼントされた黒革の指抜きグローブ。しかも右手で顔の半分を覆い隠すような実に香ばしいポーズを公衆の面前でカマしている。その痛い姿のまま開始戦に立つと、ようやく顔から右手を外してボタンプッシュ。



「スタート」


「クックック、我が深淵なる闇からいずる炎よ、呼びかけに応えてこの場に召喚せよ。燃やし尽くせ漆黒の炎よ、我が意思によりてあれなる土塊を白き灰に帰すべし」


 その直後、美咲の右手からダークフレイムが吹き出していく。火炎放射器のようにゴーレム目掛けて伸びて行き、美咲が手の平を左から右に動かすと横並びの他の個体も炎に巻かれてたちまちその動きを止める。普通は燃えるはずがない土でできたゴーレムだが、ダークフレイムは容赦なく灰に変えていく。漆黒の炎が収まると、そこには確かに灰に変わった残骸があるのみ。



「結果、5体すべて破壊。所要時間、7.69秒」


 恐るべき闇魔法の威力。ちなみに所要時間の大半は美咲の厨2詠唱にかかった分。実際に魔法が発動してゴーレムが燃え尽きるまでは1秒ちょっとであった。それでもアッサリと歩美の記録を超えているのだから、美咲の魔法の実力は凄まじいといえよう。その背景にはつい先日桜によってダンジョン最下層まで連れ込まれた結果、レベルが85まで上昇しているせいもある。


 こうして全エントリー生徒が競技を終えて、公式な結果がまとまる。



「1年生魔法部門優勝は、Eクラス長谷川美咲。2位、Aクラス鴨川歩美。3位、Eクラス下田麻衣」


 まさかの大逆転劇にスタンドは水を打ったような静けさに包まれる。だが、Eクラスの魔法使い組は別で、全員がフィールドに雪崩れ込んでくる。



「大魔導士様、ついに優勝しちゃったわよ」


「美咲、スゴイなぁ~」


「やっぱり私たちの大魔導士様よねぇ~」


「クックック、この悠久なる大魔導士に称賛など不要。だがどうやら我が力を完全に隠蔽するのは困難なようだ」


「そうそう、優勝したんだからパーッと封印も解いちゃっていいわよ」


「今日はお祝いのパーティーしよう」


「そうだね、全員上位に食い込めたし、今日は無礼講よ」


「クックック、そなたたちはそれほど我が封印を解いた姿を見たいというか。よかろう、我が闇のすべてをこの世に顕現させよう」


 セリフはアレだが、どうやら美咲もこの結果に喜んでいるらしい。こんな調子でも以前よりはずっと魔法使い同士仲良くなっているので、周囲からは厨2セリフもさほど気にされてはいないよう。美咲にとってはたぶん好ましい方向に動いているのであろう。






   ◇◇◇◇◇





 この結果を療養棟のモニターで見ていたカレンと歩美は…



「まあ、歩美さんは最後の最後で美咲ちゃんに逆転されちゃったわね」


「カレン先輩、気にしないでください。それに彼女は西川先輩から色々と教えてもらっている人だし、現在の私の力はこんなものだと納得しています。それよりも回復魔法をしっかりと身に着けるのが今の私にとっては急務だと考えています」


「そう、さすがは聖女ね。そういう心構えでいてくれると私も教え甲斐を感じます。今日はもうお仕舞みたいだけど、明日からもぜひここに来てくれると嬉しいわ」


「もちろんです。模擬戦週間が終わるまではカレン先輩に付きっ切りでご指導いただくつもりですから」


「そうね、よろしくお願いします」


「こちらこそ、どうかよろしくお願いします」


 こうして静かな療養棟内には、カレンと歩美の和やかな会話が夕食時まで続いていくのであった。

厨二病の美咲がなんと初日に優勝を決めました。盛り上がる1年Eクラスですが、もちろん2年生も負けてはいられません。聡史たちがいない間に奮戦する様子をご覧いただきたいと考えています。この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言]  2-Eにも頑張ってもらわねば。  ……あの連中って一部を除けば学力テストではド底辺だから、ここでいい結果を残さなければ、"やっぱりEクラスだった"と思われるのがオチでしょうしねぇ(- -;…
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