175 救出の顛末
出来上がりが遅くなって申し訳ありませんでした。お待たせ第175話、桜の暴走がますます止まらない……
暗殺者ギルドの本拠地と思しき場所を壊滅させた桜が、美鈴たちの元に戻ってくる。
「アジトにいた連中は全員寝かせてきましたわ」
「目を覚ます予定はあるのかしら?」
「永遠にそのチャンスはありません。その分今頃は何の悩みも感じなくなっているはずです」
「悩みのない人生なんて羨ましいわね」
美鈴も全部わかっていながら適当な相槌を打っている。
「先を急ぎますから、片付けは後回しにしましょう。第3礼拝場に向かいます」
「そうね、寄り道をしちゃったから、急ぎましょう」
こうしてデビル&エンジェルの女子チームは、一旦地下通路から地上に上がっていく。礼拝場の中で待機していた騎士団を伴って第3礼拝場を目指して敷地の奥へと進むと、一行の前進を阻むべく数人の司祭に率いられた聖騎士が百人ほど隊列を組んで待ち構える。
「桜ちゃん、お客さんが大勢待ち構えているけど、どうするつもりかしら?」
「そうですねぇ~… 私一人で片付けてもいいんですが、今は時間が惜しいです。下っ端は美鈴さんにお任せしてもいいですか?」
「あら、私には下っ端しか回ってこないの?」
「もう、美鈴さんったら、戦闘狂の素顔がチラチラ見え隠れしていますよ」
「お前が言うなぁぁぁ」
とかく自分は見えにくい。ましてや面の皮が人の千倍ほどは厚い桜ならば、自分を棚に祀り上げるのはお手の物だ。美鈴にしては珍しい大声を上げるのも仕方がないであろう。
ともかくも今にもこちらに襲い掛かってくる素振りを見せる教団の自称聖騎士たちをなんとかせねばならない。ヤレヤレしている美鈴は、彼らに向かってたった一言術式名を唱える。
「重力監獄」
聖騎士たちに5Gの重力が襲い掛かる。ただでさえ重たい金属鎧をまとっている彼らには、体に圧し掛かる5倍の重さに抵抗ができなかった。まるで絵に描いたように全員が一斉に地面に張り付いて、一切の身動きを封じられる。この様子を目撃した司祭の一人が、やや驚いた形相で声を上げる。
「なにゆえ人間風情が重力を操るのだ? 通常の魔法術式とは別の次元に我らが封じたはずだぞ」
「語るに落ちたわね。今の発言そのものが、人の姿をまとっていはいてもその本質はレプティリアンという動かぬ証拠よ」
入口に最も近い場所にあった大聖堂の至司祭同様に、ここにいる数人の司祭たちもどうやらレプティリアンのようであった。美鈴に指摘されてから、件の司祭はしまったという表情に変わっている。
「ええい、人間如きに見破られようとも、要は口さえ封じてしまえば問題はない。我らが操る真の重力波動を浴びるがよい。圧殺重力波」
「闇のカーテン」
司祭が放つ高重力を伴う闇の波動は、美鈴が展開する闇魔法が残らず吸収されていく… と思ったら、違った。美鈴は敢えて桜がいる箇所には闇のカーテンを展開してはいない。一人だけ前に立っている桜だけは、高重力の波動に包まれている。
「ムムム… この重さの感覚から言いますと、どうやら30G程度でしょうかねぇ~。比叡で体験した時よりもなんだか楽勝ですよ」
うん、桜は安泰であった。比叡ダンジョンのラスボス戦で50Gに易々と耐えただけのことはある。というよりも、これだけの高重力に包まれながら涼しい顔をしている。
「この程度でしたら、身体強化の重ね掛けの必要もなさそうですわ」
言葉通りに一度だけ身体強化を発動すると、桜のスタンバイは完了した。
「この前の50倍パンチにはやや劣りますねぇ~。精々30倍程度にしかならないですわ。まあ私の責任ではありませんから、今回はこれで行ってみましょうか」
一人でブツブツ呟いている桜を見て、重力波を放った司祭は表情を思いっきり歪ませている。自分の最も得意な攻撃を受けて平然としている人間がいるとは、予想外過ぎて口もきけない状態であった。
「それでは、30倍ご臨終パン~チ」
桜がいつもと全く変わらない加速でダッシュを開始する。瞬間的にその姿を見失った司祭たちは、桜が目の前に到達する最後の一瞬まで全くの動けず仕舞いであった。
ドッパァァァァン!
何かが爆発するような音が響くと、最も左端にいた司祭の体が爆発する。人間の姿を模る外殻だけでなくて、中身も同時に粉微塵になって飛び散っている。その後も立っている司祭の数だけ辺りに爆発音が響き、最後に犠牲となったのは重力波を放った司祭であった。わずか2、3秒の間に、桜は合計5体のレプティリアンを葬っている。
「おやおや、死体が跡形も残らずに汚い染みになってしまいましたね。これでは回収のしようがないですわ」
術者が死亡したため、すでに桜にまとわりついていた重力波動は解けている。だが高重力をもろともせずに逆にパンチの威力に変換した桜に対して、周囲は相変わらずドン引きしている模様。
「やっぱり桜ちゃんはおかしいです」
「そうよねぇ~… 30Gで涼しい顔をしているなんて、絶対に変よね」
「いくら攻撃しても通用しないなんて、なんだか敵が気の毒になってきました」
女子三人が口を揃えて桜の変態ぶりに呆れ返っている。人間性もさることながら、レベル600オーバーのその体質があまりに変態すぎるのだ。だがそんな彼女たちに桜はいつもの一言で反論する。
「皆さん、この程度の体なんて、毎日しっかりご飯を食べて鍛錬を欠かさなければ自然に出来上がりますから」
「桜ちゃんと私たちを一緒にしないでください」
「そう言う明日香ちゃんは、デザートの食べ過ぎと訓練をサボり捲っているから、私と違ってブクブク太っていくんです」
「誰がブクブク太ってドラム缶体型ですかぁぁぁ! どさくさに紛れて人の体型をイジるなぁぁぁ」
結局いつもの仲良し二人の茶番劇に落ち着いている。明日香ちゃんを戒める意味で、桜は隙あらばいつでも繰り出す用意をしているのだ。それはともかくとして、美鈴はもっと大事な用件に気が付く。
「桜ちゃん、そんなどうでもいいことじゃなくて、この場に倒れている教団の騎士たちはどうするのかしら?」
「そうですねぇ~… 騎士団の皆さんが暇そうにしていますから、この場で武装解除してもらいましょうか。はい、それじゃあ開始!」
突然仕事を振られた騎士団は美鈴が重力魔法を解除してから倒れている聖騎士を乱暴に小突きつつ、剣や槍、兜、金属鎧などを剥ぎ取っていく。美鈴によって地面に抑え付けられている間、骨や関節がミシミシと音を立てる苦しみを味わった聖騎士たちは、立ち上がることすら儘ならずに武器を手放さざるを得なかった。
剥ぎ取った武器と鎧は桜がアイテムボックスに収納して、十人ずつひとまとめにして首に縄を掛け連ねて正門まで連行していく。約半数の騎士が正門に向かい、この場に残った騎士は十五人程度まで減っている。
こうして待ち伏せていた連中の片付けが終わると、桜は気になった点を美鈴に尋ねる。
「美鈴ちゃん、大聖堂にいた司祭といい、この場にいた連中といい、どうも比叡ダンジョンのトカゲ人間に比べて弱かった気がするんですよ。私の気のせいですか?」
「そうねぇ~… おそらくはクローンじゃないかしら。レプティリアンがそうそう大量にいるとは考えにくいから、自分たちのクローンを作って兵隊の代わりに使っているのかもしれないわ」
「なるほど、クローンですか」
「太古からの記憶を受け継いでいるのが本体で、残りは手足となるクローンなんでしょうね。女王バチと働きバチのような関係かもしれないわ」
「ということは、もっと強い親玉が残っている可能性があるんですね」
桜の瞳が、再びキラキラ光っている。これだけ暴れても、まだまだ足りないらしい。こうなったら美鈴たちもとことん付き合うしかない。
「どうやらあの建物が第3礼拝場のようです」
桜が指さす先には、暗殺者ギルドのアジトとなっていた建物とよく似た造りのドーム屋根の礼拝場がある。近づいてからそっとドアを開いて内部を確認するが、どうやら人の気配はないようだ。
「罠は仕掛けられていないようですから、中に入ってみましょう」
桜に続いて一行は続々と礼拝場へと入り込んでいく。こちらの建物の地下へと続く階段は祭壇脇にある彫像の土台をズラすと現れると、ひっ捕らえた商人たちから証言を得ている。だが桜が土台に手を掛けて力を込めても、重たい像は中々動こうとはしなかった。
「ムム、これは挑戦的な像ですね。面倒だからこうしてやります」
パッカーーン!
あろうことか桜は像の土台を蹴り飛ばして破壊している。ちょっと動かなかったくらいで、短気にも程があるだろう。だが壊れた破片を取り除くと、地下に下りる階段が出現した。
「話で聞いた方法とは若干違いましたが、階段が見つかったんですからオーケーです」
「桜ちゃん、どうやら反対方向にズラせばよかったみたいね」
「本当に桜ちゃんは、何から何まで暴力的過ぎますよ~」
あまりに強引な桜の所業に、美鈴と明日香ちゃんがクレームをつけている。だが桜はケロリとした顔で…
「明日香ちゃんの見解は間違っていますねぇ~。世の中の9割の問題は、暴力で解決可能なんです」
「自分が間違っているという自覚はないのかぁぁぁ!」
明日香ちゃんに突っ込まれている桜だが、本当にこれでいいのだろうか? 思えば桜は文字通りその言葉に従って、陰陽師の本拠地ガサ入れや横浜の某国領事館爆破事件など大抵の問題を力尽くで解決してきた一面を否定できない。本人が何と言い繕うとも聡史というストッパーの目が届かない状態では、桜はブレーキが利かないダンプカーと一緒なのだ。
その件はまあこの際置いといて、桜を先頭にして階段を地下へと降りていく。そこは暗殺者ギルドの本拠地とよく似た造りの、人間が横並びで五人通れる広さの通路が続いている。通路の所々には教団の騎士が三人づつ桜たちを遮るように立っているが、いずれも一瞬で排除されて床に寝かし付けられている。
そのまま進んでいくと、突き当たる場所には大きな両開きのドアが設えてあり、どうやらこの場所が商人たちが証言した悪魔崇拝の儀式を執り行っていた部屋のようだ。
「踏み込みますよ」
バーン! シュシュシュシュシュ…
桜がドアに手を掛けて勢いよく開く。それと同時に開け放たれた入り口に向かって、黒塗りのナイフが飛んでくる。だが一度に10本以上飛んできたナイフは桜によってその半数が叩き落されて、残りの半分は投擲者に投げ返されている。もちろん完璧なコントロールで投げ返されたナイフは、相手の眉間を貫いているのであった。
「ここにもまだ暗殺者が残っていましたか」
地下施設とは思えないほど広い儀式場には、二十人以上の暗殺者が待ち構えていた。だがすでに桜が投げ返したナイフによって、その半数近くが倒れている。
「クソッ、なんて化け物だ。殺せ! 何としてでも殺すんだ」
どうやら最も奥に位置して指示を出している男こそが、暗殺者ギルドの元締めらしい。
「化け物とは誰のことですか? デザート怪獣〔明日香〕ならここにいますが」
「誰がデザート怪獣ですかぁぁぁ。次々にデザートを吸い込んでいくんですかぁぁ」
どうやら明日香ちゃんにも自覚に欠ける部分があるようだ。次々にデザートを吸い込むがごとくに食べているのは一体誰であろう?
こんなくだらない話題を口にしながらも、お仕事を忘れない桜が動き出す。というよりも、見えない速度で儀式場を一回りする。たったそれだけの動きで、この場にいた暗殺者は全員口から血を噴き出して倒れている。暗殺者たちにとっては、回避不可能な拳が振るわれてからしばらく経過して血を噴き出す『あべし』状態であった。
「さて邪魔者はいなくなりましたから、ゆっくりと調べてみましょうか」
「そうね、邪悪な雰囲気が充満しているから、ちょっと調べただけでも色々出てきそうね」
倒れている暗殺者は邪魔なので、美鈴がダークフレイムで真っ白な灰に変えていく。改めてガランとした儀式場を眺めてみると、正面にはヤギの角を頭から生やしたおどろおどろしい石像が据え付けられている。その邪悪な石像は多数の骨やドクロを踏みつけており、まさに悪魔を象徴するがごとくの姿で儀式場を睨み付けている。
「バチカンにあるバホメット像と瓜二つね」
美鈴の中にあるルシファーの知識が、このような言葉を紡ぎ出させている。だからこそ彼女は聡史に対して『バチカンは悪魔崇拝の総本山』と告げたのだった。
「悪魔像の手前にあるのは祭壇でしょうか? どうやらあちこちに血がこびり付いていますねぇ~」
5メートル四方の台には、桜が指摘するように血が流れた跡が残されている。商人の証言通り、ここに気の毒な生け贄が捧げられてその命を奪われていった物証といえるだろう。
「この場は悪魔崇拝の証拠として魔法で封印して保全しておくわ。生け贄として捕らえられている人がいないか探してみましょうか」
「美鈴さん、その前にここで亡くなった人のために祈らせてください」
まだ生きている人間を救おうとする美鈴に対して、カレンは死者も救いたいと申し出ているのであった。天使からすれば生きている魂も、亡くなったままで行き場なく彷徨っている魂も、同時に救うべき対象なのだ。
「悲しみに打ちひしがれて行き場のない死した魂よ、導きに従って天界に召されよ」
その祈りの言葉と共にカレンの体全体から白い光が発せられると、悪魔の力によってこの場に囚われていた魂が一斉に天井を突き抜けて地下から空へと向かって上昇していく。夥しい数の犠牲者の魂が救われたのを見届けると、カレンはひとつ頷いて光を体に戻す。
「おやおや、カレンさんの力で悪魔の像まで壊れていますよ」
桜が指さす方向に全員が視線を向けると、確かにその邪悪な像の脳天から足元まで一直線に亀裂が入っている様子が飛び込んでくる。
「カレンさん、狙ってやったんですか?」
「いいえ、明日香ちゃん。まったく無意識でした」
どうやらカレンも予想外であったらしい。おまけに悪魔の像が壊れただけではなくて、儀式場全体の空気まで変化している。つい先程までのおどろおどろしい雰囲気が、いつの間にかカレンによって浄化されているのであった。
「それでは地下の他の箇所を調査してみましょう」
桜に従って儀式場の別のドアに進んでいくと、その先には何処まで繋がっているかもわからない地下通路が果てしなく延びている。所々にドアがあって一つ一つ開いてみるが、そこには単なる生活空間があるだけで目ぼしい物は何も見つからなかった。
「もうちょっと先に行ってみましょうか」
桜に従って儀式場を出て100メートル程進んでみる。すると、桜のレーダーに何かが触れた。
「この壁から魔力を感じますね」
「確かに強い魔力を感じるわ。見た感じはごく普通の岩壁にしか見えないんだけど… 何らかの術式が込められていないか調べてみましょうか」
桜と美鈴の意見が一致している。壁に仕込まれた魔法を調べようと、美鈴が一歩前に出たその時…
「美鈴さん、下がってください。いちいち調べなくても、こうすれば簡単ですから」
桜の右手が振るわれると、術式と壁を同時に破壊している。
「あーあ、また桜ちゃんが力任せに…」
「明日香ちゃん、これが一番手っ取り早いんですよ」
明日香ちゃんが何を言おうが、桜は平常運転であった。そして壁が壊れた先には、どうやら何らかの空間が広がっている。ダンジョンの隠し部屋を探す時と同様に桜が人が通れるだけの隙間を広げていくと、その先は牢獄のようであった。
手前にある格子付きのいくつかの部屋は無人のままであったが、奥からは小さなすすり泣きのような声が聞こえてくる。
「行ってみましょう」
桜を先頭にして声が聞こえる場所に向かうと予想通りそこも牢獄で、まだ年端も行かぬ少女たちが怯えた表情で固まって座っているのであった。
「今助け出しますから、ちょっとだけ待つんですよ」
桜が声を掛けるが、少女たちは何が起きたのかわからなくてどうやら相当混乱している模様。だがそんな彼女たちにはお構いなく、桜は鉄格子と錠で厳重に閉ざされた出入り口に手を掛ける。
ガッシャーーン!
軽く引っ張っただけで、錠前が吹っ飛んで出入り口が開く。桜は牢の内部に首を突っ込んで、少女たちに声を掛ける。
「さあ、今から助けてあげます。全員外に出られるんですよ」
努めて優しい声で声を掛けるものの、怯えた少女たちは牢の奥に一塊りになって肩を寄せ合って出てこようとしない。次に美鈴が…
「桜ちゃんは殺気が強すぎて子供たちが怯えてしまうのよ。私がやるから、そこを退いてもらえるかしら」
桜が渋々入り口から身を引くと、美鈴が声を掛ける。
「さあ出てきなさい。これから外に出るわよ」
だが少女たちは、益々頑なに身を寄せて動く素振りを見せない。その瞳は、桜以上の怖がり方で見開かれている。
「美鈴さんの雰囲気自体が、彼女たちを怖がらせているんですよ。何しろ大元がルシファーですから」
カレンの指摘に、美鈴はガーン!という表情で甚大なるショックを受けている。本来子供好きで優しい性格なのだが、ルシファーの魂が醸し出すオーラが子供たちを怯えさせているのであった。自信喪失の美鈴に代わって、カレンが天使の微笑み全開で声を掛ける。
「もう大丈夫ですよ。さあ皆さん、出てきてください」
カレンの雰囲気に数人の少女が心を動かされているようだが、やはりこれまでの経験からくる恐怖心が優って出てこようとしなかった。天使のカレンでも用をなさないこのピンチに、何と明日香ちゃんが自信満々の態度で立ち上がる。
「カレンさん、惜しいですけどちょっと違いますよ~。この場は私に任せてください」
カレンを退かした明日香ちゃんは、何も言わずに自分から牢内に入り込んでいく。もちろん少女たちは、恐怖で顔を引きつらせて明日香ちゃんを見つめている。
「怖がらなくていいんですよ。皆さん、クッキーは好きですか?」
明日香ちゃんは背負っている小さなリュックからクッキーの箱を取り出すと、少女たちの前に差し出す。目の前に差し出されたクッキーを彼女たちは見つめているが、初めて目にするだけにいまだ警戒を解かない。そんな少女たちに対して、明日香ちゃんは一人一人にクッキーを差し出して手渡す。
「とっても甘くて美味しいんですよ。さあ、一緒に食べましょう」
明日香ちゃん自身もクッキーを1個手に取って口の中に放り込む。明日香ちゃんの様子を見た少女たちは、恐る恐るクッキーを口にする。そして…
「美味しい」
「甘くて本当に美味しい」
「もっとちょうだい」
「はい、どうぞ」
明日香ちゃんが差し出す箱に遠慮なく手を伸ばしてくる少女たち。もうクッキーに夢中になって、次々と貪るように食べている。箱が空になるまでクッキーを食べ尽くした少女たちは、まだ食べたそうで残念な表情を浮かべて明日香ちゃんを見ている。
「なくなっちゃいましたね。もっと食べたいですか?」
「お姉ちゃん、お腹いっぱい食べられるの?」
「外に出れば、いっぱい食べられますよ」
「お姉ちゃんは優しい人みたいだから、一緒に外に出る」
「いっぱい食べさせて」
明日香ちゃん大人気、すっかり少女たちに囲まれている。こうして牢に繋がれていた少女七人は、明日香ちゃんと共に外に出てくる。
「明日香ちゃん、やるわね」
「私には思いつかない方法でした」
美鈴とカレンが、明日香ちゃんを褒めている。まさかこんな場面で活躍するとは、二人とも全く考えていなかった。
「この子たちと明日香ちゃんは、精神年齢が近いんですわ」
「桜ちゃんは失礼ですね。お菓子があれば全人類は仲良くなれるんです」
絶対的な真理のように明日香ちゃんが唱えている。近いうちに〔お菓子教〕とか〔スイーツ真の道〕などという宗教を立ち上げかねない勢いだ。
とにかくこうして、桜たちは生け贄として捕らえられていた少女たちを救い出して、地下通路から出ていくのであった。
捕らえられていた少女たちを救い出した桜たち、いよいよ教団の最奥に控える教祖に…… この続きは2、3日後に投稿します。どうぞお楽しみに!
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