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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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136 マンスール伯爵

魔族の指揮官をとらえた聡史たちですが、その前に……

 聡史兄妹が大暴れをしている頃、砦から離れたとある場所では明日香ちゃんとカレンがのんびりとした昼下がりを過ごしている。



「カレンさん、日本はだいぶ寒くなりましたが、ここはポカポカして眠くなりますよ~」


「明日香ちゃん、眠気覚ましにミルクティーを淹れましたよ」


「ふわぁ~… とってもいい香りですね。ああ、お砂糖は3杯お願いします」


 明日香ちゃんはいつの間にかずいぶん大きくなってしまったよう。つい半年前までは魔法学院ブッチギリのビリという存在であったのが、いまや天使となったカレンの給仕でミルクティーを嗜むまでに成長している。


 世の中には本物の天使が淹れたミルクティーなら何億円出しても惜しくないと言い出す人間が山ほどいるであろうというのに、明日香ちゃんは当然のような表情で砂糖山盛り3杯入りのミルクティーで満たされたティーカップを受け取っている。



「カレンさん、お天気がいいのでこうしてボーっとしているのも悪くないですが、一体いつになったら桜ちゃんたちが帰ってくるのでしょうか?」


「そうですねぇ… 意外と早く片付けて戻ってくるんじゃないかと思いますけど…」


 そういえばこの二人のツーショットというのも比較的珍しいケースのような気がする。とはいえ常日頃から桜の監督のもとに槍とメイスで打ち合っている間柄だけに、互いの心技体を通じて常に肉体言語でやり取りしている仲でもある。


 カレンにとって明日香ちゃんはいまだに一本取れないライバルであり、いつかは越えてみたい目標でもある。もちろんこれはカレンが胸に密かに秘めている明日香ちゃんに対する気持ちであって、こんな話を面と向かってすれば明日香ちゃんがわざと負けようとするのは明白。


 一言付け加えるとすれば、これは人間としてのカレンが持っている感情といえる。天使の目を以って見えてくる明日香ちゃんの本質は、カレンからすれば自ずと異なる様相を示しているのであろう。それはカレン本人に聞かなくてはわからないであろうが…



「それにしても今回は残念でしたね。私と明日香ちゃんだけ出番がなくて」


「カレンさん、それは大きな間違いですよ~。戦いなんていう面倒事は全部桜ちゃんに押し付けて、私はずっと楽をしていたいんですよ~」


「明日香ちゃん、その悪い癖さえなければ、今頃はダンジョンのラスボスくらいは簡単に倒しているかもしれないのに…」


「えっ? カレンさん、何か言いましたか?」


 どうやらカレンの呟きは明日香ちゃんの耳には入っていないよう。まあいいかと考えを切り替えて、カレンは明日香ちゃんに別の話題を振っていく。



「ところで明日香ちゃんは、未だに職業が決まっていないんですか?」


「そうなんですよ~… 早く魔法少女になりたいんですけど、ステータスには相変わらず何も出ないんです」


(いやいや、魔法少女になりたいんだったら、もっと色々努力を…)


 カレンの口から思っていることが出掛かったが、寸でのところでストップが掛かっている。努力するかどうかもすべては本人次第なのだと思い直した結果だろう。



「はぁ~… 楽して簡単に魔法少女になる道はどこかに転がっていないんですかねぇ~」


「さすがに私も、そんな都合のいい方法なんて心当たりはありません。悪いものと契約して色々利用された挙句に不幸になるかもしれないですよ」


「そうですか… 地道に頑張るしかないんですかね~。はぁ~… 私の職業って、一体なんでしょうね?」


 お気楽に生きている明日香ちゃんも、どうやらこの件ばかりは目下の体重以上の悩みらしい。このところ間近で天使だの大魔王だのといった人間を超越した存在の爆誕を目撃しているだけに、明日香ちゃんとしても自分の職業が中々決まらないモヤモヤした胸の内を抱えているのだろう。




 そうこうしているうちに、遠くに人影が浮かび上がってくる。聡史兄妹と美鈴が三人並んでこちらに向かってくる姿が遠くに豆粒のように映ってくる。



「やはり早めに戻ってきたようですね。あの三人で出撃すれば、まともに立ち向かえる敵などどこにもいませんから」


「また桜ちゃんがドヤ顔で私に色々と報告するんですよ。きっとそうに決まっています」


「ドヤ顔って… 多少のことには目を瞑ってあげてください」


 桜は滅多に他人に手柄話などしないのだが、明日香ちゃんにだけは色々とこれ見よがしに報告してくるよう。一番気を許せる相手には、レベル600オーバーの桜といえども聞いてもらいたい話の一つや二つはあるのだろう。




 二人がミルクティーを口にしながら待っていると、聡史たちはテーブルを置いてある場所に戻ってくる。カレンはサッと天使の領域を解除して、戻ってきた三人を迎え入れる。



「おかえりなさい。えーと、聡史さんが引き摺っているのは何者ですか?」


「こいつは砦にいた魔族の指揮官だ。自分をマンスール伯爵と名乗っていたぞ。多少痛めつけてやったから、回復してやってもらえるか」


「足が折れているし、引き摺ったせいで体中ボロボロだし、多少と呼べる痛めつけ方ではないような気がします」


 聡史の強引な論法に若干引き気味になっているカレンがいる。どう見ても体全体がボロボロなのだから、彼女の言い分のほうが正当性が高い。すると、ここで桜が横から口を出す。



「カレンさん、息があるだけでも実に寛大な処置ですわ。砦にいた魔族は千人単位で今頃全員お喋りができなくなっていますから」


「お喋りができない? 何かの魔法でも掛けてきたんですか?」


「そんな手間は必要ありません。物を言わぬ死体に変えただけですの」


「あー…」(察し)


 この短時間の間で千人の魔族が立て籠もる砦を襲撃してひとり残らず死体に変えてきた… 桜の話を聞いてカレンはさらに引いている。そしてここですかさずその耳に明日香ちゃんがそっと囁く。



「ほらね、カレンさん。桜ちゃんがドヤ顔をしまくっていますよ」


「明日香ちゃん、お手柄なんですから、その辺には目を瞑ってあげてください」


 可愛くないんだから… という表情で桜を見つめる明日香ちゃんを宥めにかかるカレンがいるのだった。





   ◇◇◇◇◇





 聡史が引き摺ってきたマンスールの回復が終わって、あとは目を覚ますのを待つだけとなる。5分程度経過すると、ゆっくりとマンスールの目が開いていく。



「こ、ここはどこだ? やや、貴様らは人族かっ?! なぜ人族風情が我の目の前に…」


 聡史に意識を刈り取られて、マンスールは記憶が混乱しているよう。何度か首を振って、つい今しがた起きた出来事を思い出そうとしている。



「やっと目を覚ましたか。さて、知っていることを全部吐いてもらおう」


「その声で思い出したぞ! 貴様は我の部屋に押し掛けてきた人間だな! 我の魔法で灰ひとつ残さず滅ぼしてくれる!」


 マンスールはデビル&エンジェルに向かって魔法を放つ構えを見せる。だが…


 ドカッ!


 声高らかに滅ぼす宣言をしたマンスールは、顔面に桜のフックを食らって右方向にすっ飛んでから地面で8回バウンドしてようやく停止している。ちなみに首が変な方向に曲がっており、呼吸はパンチを食らった瞬間に停止していた模様。



「おや、ちょっと加減を間違えましたわ」


「桜はしょうがないヤツだなぁ~」


「「ハハハハハハハ」」


「ハハハ… じゃないでしょうがぁぁ! 情報を得るためにせっかく生け捕りにしてきたのに、ここで死なせてどうするのよ!」


 兄妹のほのぼのとした日常会話をぶった切るように、ここまで敢えて口を出していなかった美鈴が盛大にツッコミを入れている。なんだったら小一時間説教も已む無しという覚悟を決めた表情が見て取れる。



「まあまあ美鈴さん、そんなに熱くならずに」


「そうだぞ、こんなトラブルは桜がいる限り当たり前の出来事なんだからな」


「そうですわ。お兄様の言う通り、私がいれば当たり前… なんですってぇぇぇ!」


「やっぱり桜ちゃんはトラブルの原因だっていう自覚がありますよ~」


 今度は妹が兄に食って掛かっている。そこに明日香ちゃんまで加わって中々カオスな状況。傍で見ているカレンとしては一刻も早くこの場を収拾する必要に駆られてしまうのは当然であろう。



「と、取り敢えず復活させますから、少々お待ちください」


 カレンが天界の光を当てるとマンスールの体がピクリと動く。そして何事があったのかと不思議そうに首を振りながら立ち上がる。



「き、貴様らは砦に押し掛けてきた人族であるかぁぁぁぁ! この場で皆殺しにして…」


 ドカッ!


 マンスールのセリフを最後まで言わせずに桜のアッパーカットが繰り出される。その体は地上30メートルまでロケットのように飛び出したかと思ったら、重力に導かれて落下する。


 ドスーン!


 地上に落ちてきたマンスール、またもや首が変な方向に曲がっており、明らかに心臓が止まっている模様。



「またまた加減を間違えましたわ」


「桜、面白いからわざとやっているだろう」


 兄に突っ込まれてテヘペロ顔をする妹がいる。先ほどと全く同じ展開に美鈴をはじめとしてカレンも呆れた表情で桜を見ているのは言うまでもない。明日香ちゃんさえも、もう何も喋る気はなさそうな表情をしている。


 このままでは永遠に同じやり取りが繰り返されると危惧した美鈴が立ち上がる。



「今度は私が対処するから、桜ちゃんは手を出さないでいてね」


「面白くありませんわね」


 美鈴に釘を刺されて、桜はつまらなさそう。だがその表情には一切の反省の跡がない。これほどまでに図太い神経の持ち主は広大な宇宙全体を探しても桜以外は見当たらないだろう。



 美鈴がカレンに目で合図をすると天界の光アゲインで、またもやマンスールが復活して立ち上がる。



「き、貴様らは砦に押し掛けてきた人族! 我の手でこうして… グアァァァァ!」


 マンスールのセリフが終わらないうちに、今度は強大な力で地面に張り付けにされる。マンスールが魔法を撃ち出すよりも圧倒的に早く美鈴の重力魔法が発動した結果、マンスールは身動きひとつできないように地面に寝かされたまま拘束されているという情けない姿に。


 

「闇より生まれし者なれど、まことに取るに足らぬ矮小な存在であるな」


「あ、あなた様は何者であられまするか?」


 マンスールが震える声でルシファーさんに尋ねている。何の抵抗も出来ないままに魔法で寝かしつけられた驚きだけではなくて、目の前に立つ存在が放つ圧倒的な威厳に完全に気を呑まているよう。



「我は闇を統べる存在。矮小なるそなたに敢えて答えるとしたら大魔王と名乗ったほうがわかりやすいか」


「ななな、なんという… 神話に登場する尊き存在の大魔王様が…」


 美鈴の言葉を聞いたマンスールは魂のレベルで目の前に立つ圧倒的な存在がウソ偽りなく大魔王なのだと認識している。


 というのも、マンスールを見下ろす美鈴の眼光がルシファーの魂を帯びているのがその原因。たったそれだけで周囲には圧倒的な闇の支配者が降臨した荘厳たる雰囲気が出現している。


 何とか重力の軛から逃れようとジタバタしていたマンスールも、眼前に現れた存在が振りまく雰囲気にのまれた表情で目だけを上に向けてその姿を呆然と見ている。



「闇から生まれし矮小なる者よ、そなたに問おう。何ゆえに悪戯に人の命を奪う?」


「そ、それは… 我が主である魔王様がお命じになったまでのこと」


「魔王の命か… まことに下らぬな。このルシファーが直々に出来損ないの闇の魂を滅してくれようか」


「お、お助けを! どうか、お慈悲を!」


 魔王など物の数ではない圧倒的な威厳を目の前にして、マンスールは為す術なく慈悲を乞うしかできない様子。それほど眼前のルシファーが放つ荘厳なる闇の支配者としての雰囲気に身も心も飲まれている。闇の属性を体に宿す魔族からしてみれば、闇と暗黒の支配者ルシファーは絶対神にも等しい存在に違いない。



「そこなる矮小な存在よ、このルシファーに従う気はあるのか正直に申せ」


「従いまする! この身を賭して従いまする!」


 はい、1匹釣れましたー! 的な眼光を一瞬浮かべた美鈴ではあるが、言葉にする際は億尾にも出さずに威厳に包まれながら申し渡す。



「よい、その言を認めて進ぜよう。今後は大魔王の命に従うがよい」


「ははあぁ… 身に余る光栄でございます」


「ところで、そなたの名は何者が授けた?」


「魔王様から頂いた名でありまする」


「そうか… この大魔王に仕えるには、その名では響きが安っぽいな。そうよなぁ~… よかろう、以降は魔公爵レイフェン=クロノワールと名乗るがよい」


「ありがたき幸せにございまする。このレイフェンめは、命を懸けましてあなた様にお仕えいたしまする」



 こうしてひとりの魔族が美鈴の軍門に下るという結果を見ることとなる。それはただ単に従う程度の生易しい誓いではない。逆らえば即座に命を取られても構わないという、神を目の前にした強烈な信仰心にも似た自らの存在そのものを懸けた誓約として両者の間に結ばれている。


 自分に従うという誓いを立てたレイフェンの態度に満足して、美鈴は重力魔法を解除してから聡史たちに向き直る。すでにルシファーの魂は引っ込めてあるのは言うまでもない。いつまでもあのような強烈な個性を持った神を顕現させておくと、話がなかなか進まないとわかっているよう。



「知性がない魔物を従えるのは無理だけど、魔族を従えるのはどうやら簡単なようね。これが大魔王という職業がもたらすスキルかしら?」


「美鈴、多分そんな生易しいレベルの話じゃないぞ。この魔族は美鈴に従うと誓ってから何やら顔付きまでガラリと変わっているじゃないか」


「それはそうよ。言ってみれば魂ごと私に縛られているのも同然なんだから、顔付きぐらい変化してもらわないと」


「そういうものなのか。俺にはわからないけど、ルシファーさんの力が働いているんだったら大人しくしてくれそうだな」


「今の状態なら日本に連れていっても問題はないと私が保証するわ」


「そうか、これで魔族の国の様々な事情も明らかになるだろう。ところで美鈴はこいつを身近に置いておくのか?」


「そうねぇ~… 当面は大魔王の執事でも務めてもらいましょうか。レイフェン、それでいいかしら?」


「我が敬愛するマム、このレイフェンを一命を賭して神託に身を捧げまする」


「いい覚悟ね。さて、レイフェン、私たちについてきなさい。今からあなたを私たちの世界に連れていくわ」


「敬愛する我がマム、かしこまりました。すべては仰せのままに」


 こうして美鈴の配下となったマンスール伯爵改め、レイフェン=クロノワール魔公爵を連れたデビル&エンジェルは、日本に戻るためについ先程出てきたばかりのダンジョンへ戻っていくのであった。


なぜか魔族が美鈴の配下に、このまま日本に戻ると、そこではまた騒ぎが…… この続きは明日投稿いたします。どうぞお楽しみに!



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