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誘い 3

 家に帰った後、思い返してみてもあまり良くないことをしてしまったと思った。


 大本と連絡先を交換してしまったのは悪手だった。アイツも一体何を考えているのかわからない。


 考え込んでいてもまったくわからなかったので……それ以上は考えないようにすることにした。


 それにしても、大本にはもう屋上には来ないでほしい。あの場所は身勝手な話かもしれないけれど、僕と内田さんと友田さんの場所なのだから。


 そんな事を考えている……その時だった。なぜか携帯に着信音があった。誰かから電話があったらしい。


 こんな時間に誰だろう……内田さんだろうか。そう思いながら電話を手にする。


「……え」


 表示された携帯番号は……大本のものだった。思わず応答するのにためらってしまうが、かといって無視するのもまずい気がする……僕は仕方なく電話に出ることにした。


「……はい?」


「あ。出た。てっきり無視されると思ったけどね」


 バカにするような調子の大本の声が聞こえてくる。図星であったが、僕はなるべく落ち着いて会話を続行する。


「……何か用?」


「ん? いや、別に。ただ電話してみただけ」


「は? ……用がないなら切るよ」


「え~。酷いなぁ、変態クン。ホントは変態クンの声が聞きたくて電話したのに~」


「は、はぁ? 何それ……」


 僕が慌てると、電話先の向こうの大本は嬉しそうに嘲笑っている。


「あはは! やっぱり変態クン面白いね! こりゃ、イジリ甲斐があるわ。じゃ、また明日~」


「あ、ちょっと……!」


 俺の呼びかけには答えず、大本は電話を切った。いじり甲斐がある……あまり言われて嬉しくない台詞だった。


 要するにお前がイジメられる理由がわかるって、大本は言いたかったのだろうが……やはり、俺は大本のことは好きになれなそうだ。


 と、しばらくしてからまた電話がかかってきた。てっきり僕はまた大本だと思い、電話に応答する。


「あのさぁ! 何度も電話かけてこないでよ!」


「……まだ、今日は一度目なんですが」


 瞬間、僕は血の気がサッと引くのを感じる。


 このどことなく沈んだ感じのテンション低めの声は……


「あ……内田さん?」


「……誰と勘違いしたんですかね」


「あ、いや、その……」


「……あの女ですか」


 内田さんが怒っているのが電話越しでもわかる。僕は焦っていた。


「あ……えっと、内田さん……」


「……そうですか。尾張君はあの女と連絡先を交換したんですね……私のことをイジメるあの女と」


「う、内田さん……その、そうするしかなくて――」


「何が仕方ないのよ! この裏切り者!」


 耳を突き破らんばかりの大声で、内田さんは怒鳴った。


「あ……その……内田さん……ホントに、ごめん……」


「……後悔させてあげます。さよなら、尾張君。いままでありがとうございました」


 その後、電話がブチッと切れた。


 僕は瞬間的に理解した。大変なことをしてしまったのだ、と。

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