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誘い 1

 結局、その日は僕一人で帰ることになってしまった。


 それにしても……内田さんも友田さんもどこか様子がおかしかったな……なんか僕が変なこと言っただろうか……


 そんな事を考えながら、校門から出たその時だった。


「おーい」


 ……聞き覚えのある声が聞こえてきた。僕は嫌な予感を感じながら、声のした方に振り返る。


「……なんで?」


 僕が振り返った先にいたのは……茶髪のギャルっぽい女の子……大本だった。


「おーっす。変態クン。話、終わった?」


 いかにも気さくに話しかけてくる大本。僕は流石に嫌な顔をしてしまった。


「な……なんでいるの……?」


「は? いちゃ駄目なの?」


「だ、だって……内田さんにあんなこと言われたから、てっきり帰ったのかと……」


 すると、大本は嬉しそうにニンマリと微笑む。コイツがこういう顔をするときはロクな事を考えていないときだというのは、短い付き合いだが理解した。


「アタシはさぁ、内田とお話したいわけじゃないの。マジでアイツのこと、アタシ嫌いだし」


「じゃあ、なんでいるの?」


「そりゃあ、変態クンとお話したいからに決まってんじゃーん」


 悪魔じみた笑みを浮かべてそういう大本。僕の予想は当たってしまったらしい。


「……僕は話したくないんだけど」


「いいじゃーん。それとも何? アタシと話したくないわけ?」


 その質問に僕は答えたくなかった。何も言わずに僕は自分の家の方向にあるき出す。


「もしかして、内田に悪いと思ってんの?」


 そう言われて僕は……図星だった。実際僕は大本と話すことは内田さんに対して悪いことをしているかのような……そんな気がしたのだ。


「……だって、君は内田さんをイジメているんだろ? だったら……」


「だったら、何? それって、アンタに関係ある? そもそも、別にアタシ、アンタをイジメたりしてないんだけど」


 大本の質問に対して僕は何も答えられなかった。いや……どのように答えればいいかわからなかったのだ。


 関係あるか、と聞かれると……確かにそうかもしれない。でも、同時に僕の脳裏に内田さんの言葉が浮かんでくる。


「……関係はないかもしれないけど、僕は内田さんの友達だから」


「へぇ。じゃあ、アンタは内田のために、アタシのこと、無視するんだ。それって、酷くない?」


 言われて僕は少し衝撃を受けてしまった。そうだ……僕や内田さんは確かに弱い立場の人間だ。でも……ここで、大本に対する無視を貫いてしまったら、それは僕達に対して酷いことをしてきた奴らと同レベルになってしまうのではないか、と。


「……わかったよ。僕、帰り道こっちだから」


「へぇ! 奇遇だねぇ。アタシもこっちなんだ~」


 嬉しそうに俺に並んで歩き出した大本。なんとなくだが、この判断で良かったのかと僕はやはり心配になってしまったのだった。

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