対立 4
「あの……内田さん。その……大丈夫だったのかな?」
流石に僕も心配になってしまった。さすがにあそこまで明確に挑発してしまうと、大本はその後、報復してくるのではないか……僕にはそう思えてしまったのである。
しかし、予想に反して内田さんは特にいつもとおりの無表情だった。
「はい。別に問題ないのでは?」
内田さんは普通にそう言う。僕は……あまり大丈夫なようには思えなかった。
「だけど、アイツ……普通に土下座するんだな……」
そう言って驚いているのは友田さんだ。まぁ、実際僕も大本が本当に土下座するとは思わなかったけれど。
「それくらい、あの人も追い詰められているということでしょう……はぁ。なんだか今日は疲れてしまいましたね。私、帰ります」
と、内田さんはそう言って僕と友田さんに背中を向ける。
「あ。尾張君、一つだけ言っておくことがありました」
「え? 何?」
と、内田さんは僕の方に思いっきり近付いてきた。いきなりのことだったので、僕も驚いてしまう。
「大本のこと、可愛そうだと思いますか?」
「え……か、可愛そう?」
「はい。私に対して土下座までさせられて、可愛そうだと思いますか?」
そんな質問をされるとは思わなかったので、流石に僕も驚いてしまった。だが、元々は大本が内田さんをイジメているのが問題なのだ。僕は内田さんの味方をしたい。
「……いや、そうは思わないよ」
僕がそう言うと内田さんは少し安心したようだった。
「そうですか。その言葉、忘れないでくださいね」
そう言って内田さんは本当に去っていってしまった。
「……なんか、内田も変な感じだったな」
友田さんが不思議そうな顔でそう言う。確かに僕も内田さんがどうしてあんな質問をしてきたのか理解できなかった。
「仕方ない。とりあえず僕達も帰ろうか」
「……なぁ、尾張」
と、なぜか少し暗い調子で友田さんが僕の名前を呼んでくる。
「ん? どうしたの?」
「その……私達、仲いいよな……?」
「え? あ、もしかして、大本の言ってたこと、気にしているの?」
「あ、ああ……仲いいよな?」
友田さんは不安そうに訊ねる。なんでそんなことを友田さんが聞くのかわからなかったが、僕は笑顔で返す。
「もちろん。それとも、友田さんは僕と仲良くないって思ってる?」
僕がそう言うと友田さんは少し悲しそうな顔をした。その反応もよくわからなかった。
「あ、いや、そういうわけじゃないんだが……」
「え? じゃあ、どういう……?
「……いや。大丈夫だ。なんでもない……じゃあな」
友田さんもなぜか走って去っていってしまった。何故か僕は屋上に一人取り残されてしまう。
「……なんだか嫌な予感がする」
一人そんなことをつぶやきながらも、仕方がないので、僕は帰ることにしたのだった。




