対立 2
「う、内田ぁ……」
友田さんが少し嬉しそうに内田さんを見る。内田さんは僕と友田さんに対して少し優しく微笑むと、大本をにらみつける。
「なんでアナタ、ここにいるんですか?」
「何? いちゃわるいわけ?」
「ええ。アナタはここにいるべき人ではありませんから」
大本は腹立たしそうに内田さんを見る。
「……やっぱ、嫌な奴」
大本が小さくつぶやいたのは、僕にだけ聞こえたような気がした。と、なぜか大本は僕の方を見る。
「ねぇ、変態クンはどう思う?」
「え……僕?」
「そうそう。アンタもさぁ、アタシはここに来ない方がいいと思う?」
予想外の質問に、僕は困ってしまった。
正直、大本が来なくなれば今まで通りの僕と内田さん、友田さんだけの場所である屋上が戻ってくる。
でも……ここでなぜか、大本を明確に拒絶していいのか、少し迷ってしまった。
「えっと……僕は……正直、大本に来ないでほしいとは思うけど……かといって、別に来ちゃ駄目とは僕たちは言えない気がする……」
あまりにも優柔不断だとは思ったが、実際そのとおりだと思ったので、僕はその通りを述べた。
内田さんは少し不機嫌そうな顔で僕を見ていた。大本の方は……意外そうな顔で僕のことを見ていた。
「……へぇ。じゃあ、変態クン的にはどっちでもいい、ってことなんだ」
「どっちでもいいというか……あ、でも、内田さんや友田さんの意見も聞きたいんだけど……」
僕がそう言うと内田さんは小さくため息をつく。
「尾張君がそう言うのなら、私は何も言いません」
とても引っかかる感じで内田さんはそう言った。実際……ちょっと怒っている感じだった。
「わ、私も……尾張がそういうのなら、言うことはないが――」
「よし! じゃあ、アタシがここにいても問題ないってことね!」
嬉しそうにそういう大本。なんだがさすがに調子乗り過ぎな気がする。
そもそも、コイツは内田さんに酷いことをしているのだろう。だったら、内田さんとしてはきっと、大本といる事自体苦痛なはずなんだ。
でも……僕はコイツを完全に拒絶できなかった。だったら――
「じゃあ、せめて、謝って」
僕は自然とそう言っていた。
「……は?」
大本が僕のことを怪訝そうに見る。しかし、僕は引かない。
「ここにいたいのなら、せめて、内田さんに謝ってよ」
自分でもまたしても面倒なこと言ってしまったと思いながらも、僕は大本にそう言ってしまったのだった。




