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対立 1

「それで……本当に大丈夫だったのか?」


 友田さんは不安そうに僕に尋ねてくる。


 結局、次の週の金曜日まで大本は僕と友田さんの教室にやってこなかった。


 内田さんからも連絡がないので、少し不安である。


「まぁ、この一週間も特に何も言ってこなかったし……大本も僕たちに構うの飽きちゃったんじゃないかな?」


「それならいいんだが……私は正直、ああいうタイプのやつは……好きじゃない」


 屋上に向かう途中、友田さんは不機嫌そうな顔でそう言った。


「……じゃあ、内田さんのことは、好きなの?」


 僕がそう言うと友田さんは少し恥ずかしそうに僕のことを睨む。


「べ、別に……アイツのことも、私は好きじゃない……」


「フフッ。友田さんはわかりやすいなぁ」


「なっ……! 酷いぞ、尾張。からかうなよ……」


「ごめんごめん。とにかく、内田さんも待っているかもしれないし、早く行こう」


 そう言って、僕と友田さんは屋上に急ぐ。そうだ……きっと、大本は僕たちに飽きたのだろう。


 でも、それじゃあ、内田さんへのイジメはどうなっているのだろう。大本が前に言った通り、本当に激しくなっていたら……そう考えると、僕はやはり不安だった。


「尾張、着いたぞ」


 友田さんに言われて僕は我に返る。いつのまにか、屋上に続くドアの前に立っていた。


 僕はドアを開く。気温はすでにかなり下がっている。それこそ、初めて内田さんと会ったときから比べると本当に寒くなった。


「え」


 そんな寒い屋上でフェンスにもたれかかっている影……髪型は内田さんのように見えたのだが、その髪の色は間違いなく茶色だった。


「あ、変態クン。やっと来たんだ」


 僕と友田さんが来たのに気づいたのか、大本はこちらに振り返った。


「な……なんでアイツいるんだ?」


 友田さんが僕に耳打ちする。僕は首を横にふる。


 僕たちが困惑していると、大本はニヤニヤしながら僕たちの方に近づいてくる。


「へぇ。アンタ達、ホント、仲いいんだね。もしかして、毎週ここに来てるわけ?」


「……お前には関係ないだろ」


 強い口調だが、友田さんは僕の背後に隠れながら、小さな声でそう言った。


「えっと……アンタ、友田ちゃん、だっけ?」


「え……そうだが……」


「前ははっきり聞かなかったけどさ、アンタ、変態クンと付き合ってんの?」


 大本は嬉しそうな顔でそう言う。友田さんは少し面食らっていたが、小さく咳払いした。


「……私と尾張は、そういう関係じゃない。だが、仲はいい……と思う」


 そう言って、友田さんは僕のことを見る。いや、そんな目で見られても僕は何も言えないのだが……


「はぁ。じゃ、お友達って、だけなのね。じゃあさ、なんで毎週この屋上に来てるわけ?」


 相変わらずニヤニヤしながら、大本は僕と友田さんを見る。


「それは……色々と話すためだ」


「色々? 何を?」


「何って……今日あったこととか、悩みとか……とにかく、色々だ!」


 友田さんは最後の方は少しヤケになっていた。それを聞いて「ふーん」と特に反応することもない大本。


「じゃあ、それ、アタシも参加していいの?」


「……へ?」


 友田さんが間の抜けた声を出すが、僕も、同じような反応だった。大本の言った言葉の意味がわからなかったのだ。


「だから、その色々なお話に、アタシも参加していいのか、って聞いているの」


「え、えっと……それは――」


「駄目ですよ」


 僕と友田さんが困惑していたちょうどその時、背後から声が聞こえてきた。


「……はぁ? なんで、駄目なわけ? 内田」


 大本が怪訝そうな目つきで見る先にいたのは……同じく鋭い目つきで大本を見る内田さんなのであった。

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