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闇の発露 2

 そして、僕は大本に言われるままに、屋上までやってきた。


 大本は何も言わずに僕に背中を向けている。流石に今になってみると……随分と馬鹿なことをしたものだ。


 そもそも、内田さんは大丈夫なんだろうか……これで、イジメが激しくなったりすると、僕はどんな顔をして内田さんに会えばいいのだろう……


「なぁ」


 僕の方に顔を向けずに、大本が僕に話しかけてきた。


「……何?」


 僕はとりあえず返事をする。大本は僕が返事をすると、大本は鋭い目つきで僕を見る。


「……お前、自分が何をしたか分かってんだよな?」


 そう言って大本は僕の方に近寄ってくる。僕は何も言わずに小さく頷く。


 おそらく、これから始まるのは報復だ。きっと、僕が思わずやってしまったことよりも、もっと酷いことをされるだろう。


 でも、それは一時の感情に身を任せて動いてしまった僕自身が招いたことなのだ。誰かに助けを求めることもできないし、僕は自分自身への罪と考えるべきなのだろう。


「ああ……分かっている」


 僕がそう言うと大本は少し驚いたようだった。そして、ニヤニヤしながら更に僕の方に近づいてくる。


「へぇ……自分が女の子の首を絞めて、殺そうとしたこと、理解しているんだ?」


「……否定はしないよ。実際、僕はお前を……殺そうと思ったよ」


 そう言って僕は大本を睨む。大本はひるむどころか、ますます嬉しそうに僕のことを見る。その目つきは少し狂気じみていて、恐ろしかった。


「そっかぁ……じゃあ、覚悟はできてるんだよね?」


 そういって、大本は僕の右腕を掴む。僕はただ、大本のことを睨んでいるのが精一杯だった。


「……この手かぁ。アタシのこと、マジで殺そうとしたのは……」


 そういって、大本はなぜか僕の右手を自分の手でさすっている。


 まるで、これから獲物を飲み込もうとしている蛇が獲物で遊んでいるかのようで、僕は動けなくなってしまった。


「初めてだったんだよ……? マジで殺されそうになるなんて……フフッ……」


 なぜか嬉しそうに笑う大本。僕は思わず右手を反射的に引っ込めてしまった。


「あ……なんだよ。ノリ悪いなぁ。アンタもアタシと同類のくせに」


「……はぁ? お前と……同類?」


 大本は不敵に微笑む。短い茶髪が、冷たい風に揺れている。


「そう。アンタもアタシとおんなじ……弱い者いじめが大好きな変態、でしょ?」

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