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お互いに 2

「え……依存するって……」


 いきなりそう言われても僕も流石に戸惑ってしまった。


 依存する……まぁ、そう言ってくれるのは嫌な気分ではないのだが……どうすればいいのだろうか。


「はい。どうぞ、私に依存してくださいね」


 得意げな表情でそう言う内田さん。だから、どう依存すればいいんだって話なんだが……


「う~ん……じゃあ、その……励ましてくれないかな?」


「はい? 励ます……ですか?」


 僕はその時ふいに思いついたことを内田さんに言ってみた。実際、その時僕は落ち込んでいたので、誰かに励ましてほしいと思った。


「うん。その……なんでもいいからさ。僕のこと励まして」


「なんでもいい……そう……ですか……」


 少し内田さんも考え込んでいるようだった。まぁ……正直、僕もどうでもよかった。そんないきなり励ましてくれと言っても中々難しいだろうし、僕も期待していなかった。


「あ……いや、ごめん。なんか変なこと言っちゃって……」


「……いえ。わかりました。励ましますよ」


 そう言って内田さんは僕のことをじっと見ていたかと思うと、なぜか急に微笑んだ。


「見ればわかるのですが……今日はひどい目に合ったんですよね?」


「え? あ、ああ……まぁね……」


「でも、大丈夫です。だって、尾張君は悪くないんですから」


「あ……まぁ、そうかもね……」


「いえ、というより、悪いのは尾張君をイジメる人達です」


 そう言うと内田さんは少し怖い顔になった。苛立たしげになぜか急に不機嫌な表情になっている。


「……だって、おかしいじゃないですか。尾張君が何をしたっていうんですか?」


「え……まぁ、何もしてないね」


「そうでしょう? だったら、イジメられる理由もない。それなのになぜ、尾張君をイジメるんですか? おかしいと思いませんか?」


「あはは……まぁ、そうだね……」


 僕がそう曖昧に微笑んでいると、内田さんは急に僕の近くまで近寄ってきた。そして、迫真の表情で僕を見る。


「そうだね、って……分かってます? 君はイジメられるような人間じゃないんですよ!?」


「え……まぁ、そうなのかな?」


「そうです! 君はとても優しい……こんな私にも優しくしてくれる人なんですから……まぁ、それを分かっているのも私だけなんですから」


 そういって内田さんは今一度ニッコリと微笑む。


「だから、自信を持ってくださいね」


 ……なんとなくだが、内田さんなりに頑張ってくれているという感じはするのだが……励まされている気分になるかというと微妙だった。


「あ……ああ。ありがとう」


「え……駄目、でしたか?」


 内田さんは不安そうな表情になる。僕は慌てて首を横に振る。


「いや、そんなことないよ……実際、内田さんは僕のことをよくわかってくれているしね」


 そう言うと内田さんはふいに真顔になった。そして、また何かを少し考え込む。


「……いえ。言われてみると知りませんね」


「え? 何が?」


「私、君のことを知りません。君はどうですか?」


 内田さんにそう言われ僕は思わず思考がストップしてしまった。知らないって……僕が内田さんのことを知らない、ということだろうか。


「まぁ……知らないかもしれない」


「そうでしょう? そうですね……わかりました。では、教えましょう」


 そう言って内田さんはなぜか屋上の出口へ歩き出した。


「え……どこへ行くの?」


「どこって、私の家ですよ。ついてきて下さい」


 ……へ? 意味がわからなかった。僕はその場に完全に硬直してしまう。


「ほら、早く来て下さい」


 内田さんは本気らしい。とにかく、僕はその時ようやく内田さんに自分の家に来るように誘われていることに気づいたのだった。

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