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顕示 4

「え……内田さん……なんで?」


 思わず僕は驚いてそんな意味のないつぶやきをしてしまった。友田さんも驚いて何も言えなかった。


 ただ……内田さんだけが肩を上下ながら、苦しそうに僕のことを見ていた。


「はぁ……はぁ……間に合って……良かったです……」


「え? 間に合って、って?」


 僕がいきなりの展開に戸惑っていると、内田さんは僕の方に詰め寄ってきた。


「さっき……怒ってましたよね?」


「え? 怒って……?」


 内田さんはとても不安そうだった。なぜ、そんなにも不安そうなのかはわからなかったが、とにかく、見ているこっちまで不安になってくるくらいに不安そうな調子だった。


「そうです! だって……途中で電話を切っちゃうし……」


「え……あ、ああ。いや、あれは――」


「どうして電話を切ったんです? 私のこと……嫌いになったんですか?」


 内田さんは目に涙さえ貯めて僕のことを見ている。逆にそこまで追い詰めてしまったのかと僕も焦りを感じてきた。


「あ……いや! 全然! そんなことないから!」


 僕が慌てて否定すると、内田さんは少し落ち着いたようだった。そして、静かに小さく息を吐き出した。


「……本当に、もう怒っていませんか?」


「うん。怒ってないよ」


 僕が笑顔で頷くと、内田さんは安心したように微笑んだ。


「……そうですか。急いで走ってきた甲斐がありました」


 おそらく、内田さんはマジで走ってきたのだろう。しかも、それは……もしかすると、自分が僕に嫌われたかもしれないから。


 そんな内田さんの様子を見て、彼女が宣言した「依存する」という言葉を僕は思い出していた。


「……で、なんで内田は尾張に謝っているんだ?」


 と、落ち着いたと思った矢先、友田さんが当然の質問をした。内田さんは面倒くさそうに友田さんを見る。


「ああ……アナタもいたんですね。どうでも良かったので気付きませんでした」


「なっ……! お前! 大体今日は休みだって尾張から聞いたぞ?」


「ええ。ですが、尾張君に会うためにやってきたんです」


「だから! なんでわざわざ尾張に会いに来たんだ? そんなに急を要する大事な要件だったのか? というか! お前は尾張に何をしたんだ?」


 ……段々と心配になってきた。もし、内田さんが友田さんに余計な事を言ってしまったら……

そして、もし、内田さんが僕に何を送りつけたか友田さんに話してしまったら……


「簡単なことです。私は、尾張君に、私自身の全てを知ってもらおうとしたんです」


 得意げな顔で内田さんはそう言った。


「あ……内田さん。その……別にそれは言わなくていいんじゃない?」


「なぜです? この人にもちゃんと言ったほうがいいですよ。この人とは違って、私は尾張くんに全てをさらけ出すつもりですから」


「はぁ? なんだそれ? 尾張! 一体こいつはお前に何をしたんだ?」


 段々友田さんが苛つき始めている。僕はどうすることもできず、ただ、曖昧に微笑んでいることしかできなかった。


 その場から今すぐいなくなってしまいたい……そう思った矢先だった。


「ですから……こういうことです」


 そういって、内田さんは友田さんに携帯の画面を見せつける。


 それは……間違いなく彼女が僕に送ってきた……ちょっと性的な自撮り画像なのだった。

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