顕示 2
さすがの僕も戸惑ってしまった。
一体どういうつもりで内田さんはこんな画像を送ってきたんだ? カメラの操作をミスったのだろうか?
いや、それにしてはあまりにも綺麗に写りすぎている……明らかに意図的に太ももを撮影しようとして撮影したものだ。
僕がいろいろと考えている間に、またしても着信音が鳴った。内田さんからのメッセージだ。
『どうですか?』
メッセージはそれだけだった。どうですか……どうと聞かれても、僕もどのように返事をすればいいかわからない。
柔らかそうだね……とか? いやいや。そう見えるけど、流石にそんな返事をするのは不味いだろう。
しばらく僕は考え込んだ後で、メッセージを打ち込む。
「綺麗だね」
考え込んだ末の言葉がそれだった。というか、むしろ、変態性が増してしまったような感じがするが……とにかく、僕は返事をした。
さすがにもうこれで終わりだろう……そう思った矢先だった。
またしても着信音とともに、また、画像が送られてきた。
「こ……これは……!」
送られてきた画像は……胸元の画像だった。
シャツのボタンを外し、大きくはだけた胸元が写っている……ピントはズレていないので、明らかに意図的に内田さんが撮影したものだ。
「さ、さすがにこれは……」
と思いながらも……そんな画像を見るのは初めてだったので、思わずチラチラと見てしまう。
内田さんがなんでこんな画像を送ってきているのかという気持ちとはまったく別に、性的な興奮を少なからず感じてしまっていた。
『どうですか?』
またしてもメッセージが届いた。
どうですか、って……どうもこうもない。
画像を見て驚いたが……意外と内田さんが着痩せするタイプなのだ、ということだ。
確かに、友田さんと並んでも、どちらかというと内田さんは「大きい」方だった気がする――
「……って、そういうことじゃないだろ」
さすがにこんな画像を送りつけてくるのは駄目だ。今度は直接返事をする……というか、注意してやろう。
そう思って、内田さんに電話をかけようとした矢先のことだった。
今度は着信音……しかも、電話の着信音だった。
相手はもちろん――
「……内田さん」
僕は少しためらったが、かといって返事をしないわけにはいかない。
受信ボタンを押し、携帯を耳に当てる。
「……もしもし?」
僕が話しかけると、電話先からなぜかクスクスという笑い声が聞こえてきた。
「……内田さん?」
今一度問いかけると、笑いが止まった。
「……どうですか?」
そして、内田さんの、さも嬉しそうな声が電話の向こうから聞こえてきた。
「内田さん……どうですか、って聞かれても……」
「あれ? 嬉しそうじゃないですね? 駄目でしたか?」
「……駄目、って……その……なんでこんなことを?」
僕がそういうと、なぜか内田さんは電話の向こうで大きくため息を付いた。
「尾張君……がっかりしました。てっきり君なら、私の行動を理解してくれていると思っていたのに」
「え? いや、さすがにちょっと……なんでこんな写真を送ってくるかはわからないなぁ」
「簡単じゃないですか。尾張君に私の全てを知ってもらいたいからです」
さも当たり前のように内田さんはそう言った。ますます僕は混乱してしまった。
「え……その……ああいう画像を見ると、内田さんの全てがわかるの?」
「ええ。だって、私の身体じゃないですか。私の身体はこうなっていますよ、って、依存すうる対象である尾張君に知ってもらいたかったんです」
理屈はよくわからないが……とにかく、内田さんにとっては身体の写真を送ることが自分のことを知ってもらう手段らしい。
「……その、理由はわかったけど……ちょっとああいう画像を学校にいるときに送ってこられると不味いから」
「え? でも、屋上なんでしょう? 今は一人って言ってたし……ああ! そういうことですか!」
と、なぜか内田さんはわざとらしく納得したような声を出す。
「え……何が?」
「ああ、すいません……そうですよね。尾張君も男の子ですもんね。確かに……そういうことをしている現場を誰かに見られたら不味いですよね?」
と、僕は内田さんが何を言っているか理解すると同時に、流石に恥ずかしくなってしまった。
「ぼ、僕はそんなことしないって! もう……! 切るよ!」
「あ! 尾張君、待って――」
さすがに今日の内田さんは僕をおもちゃにしすぎだ……僕は堪らず電話を思わず切ってしまったのだった。




