顕示 1
そして、翌週。
僕は屋上に向かっていた。友田さんは課題を提出していないとかで、教室で居残りさせられているため、久しぶりに僕一人だけで屋上に向かっていた。
あれから……つまり、内田さんに「依存する」と宣言されてからも、特に問題はなかった。
むしろ、連絡先を交換したあとは、友田さんの方が毎日のように僕に連絡を送ってくる。これはこれで、少し困ってしまっていた。
もっとも、それ以外は誰からも連絡が来ないのだから、迷惑、というわけではなかったが。
「でも……内田さんからは連絡来ていないんだよな」
屋上につながる扉の前で僕は立ち止まりながらそんな事を考える。
むしろ、連絡がないのが心配だった。
内田さんの精神がギリギリだということがわかった今、連絡がないと内田さんがもしかしたら、既にこの世界にいないのではないか、なんて不吉なことさえ考えてしまう。
さすがにそんなことはないか、と思いながら僕は扉を開ける。
屋上は相変わらずガランとしていて、誰もいない。内田さんもまだいないようだった。
僕は仕方なくフェンスの近くまでいって、空の向こうを見る。空がどこまでも続いている。
一人の屋上はなんだか心細い。世界に僕だけになってしまったような……そんな不安が俄に僕の中に発生してきた。
と、そんなときだった。携帯の着信音が鳴った。
「……あれ? 内田さんからだ」
見ると、メッセージアプリに内田さんからメッセージが届いていた。
『今、屋上ですか?』
僕はそのメッセージを見て、返事をする。
「うん。屋上だよ」
『一人、ですか?』
「そうだね。友田さんはいないよ」
すると、しばらく経ってから内田さんからメッセージが届く。
『実は今日は私、学校に行っていないんです』
「え……そうなの?」
『はい。少し、調子が悪くて……休んでしまいました』
「そうなんだ。お大事にね」
なんだ……内田さんは今日は来ないのか。少し残念な気持ちになりながら、僕は屋上を去ろうとした。
と、またしても、携帯の着信音が鳴った。携帯を確認すると……それは、内田さんからのメッセージだった。
『実は……見てほしいものがあります』
見てほしいもの? なんだろう……全然検討がつかないが、僕はとりあえず、返事をすることにした。
「いいよ。時間もあるし」
と、僕が返事をすると……今度はメッセージではなく、画像が送られてきた。
それは、内田さんの写真だった。どうやら、携帯のカメラで自分を撮ったらしい。
実際、内田さんはマスクをしている。調子が悪いと言っていたのは本当のようだ。
『どうですか? よく撮れていますか?』
内田さんが見てほしいものって、自分の写真だったのか? 僕は少し不思議に思いながら返事を入力する。
「うん。撮れてるよ」
『そうですか。良かったです』
「見てほしかったのって、写真?」
『はい。もう少しいいですか?』
「うん。いいよ」
僕が返事をすると、暫くの間は返信がなかった。僕はフェンスに背をもたれさせながら、携帯の画面を見つめている。
「え」
と、思わず僕は声を漏らしてしまった。
送られてきた画像は……女の子の足の写真だった。
正確には太ももの部分……それは明らかに内田さんの太ももの写真だったのである。




