激情 6
「……それで、大丈夫だったのか?」
委員長は心配そうな顔で僕に訊ねる。
内田さんは委員長を無視してそのまま帰ってしまったらしい。そして、僕と委員長は合流し、先程まで僕と内田さんの間にあったことを話し合っていた。
「うん……心配させちゃってごめんね」
「あ、いや……尾張が謝ることじゃないと思う」
委員長のことを見ながら、僕は内田さんのことを考えていた。
依存する……内田さんは確かにそう言った。そして、僕と携帯の連絡先も交換した。
内田さんは……僕に依存してくるのだろうか? 依存するっていっても……どんな形で? そもそも、依存するって……どういうことなのだろうか?
様々な疑問が頭を駆け巡るが答えはさっぱり出なかった。
「あ……ところで、尾張」
そんな事を考えていると委員長が少し遠慮がちに僕に話しかけてきた。
「え? 何? 委員長?」
「その……アイツとは連絡先とか交換したんだよな?」
「え? あ、うん。それがどうかした?」
「……あー……私も一応、携帯は持っているんだが、その……教えてほしいんだ。尾張の、その……連絡先」
委員長はなぜか恥ずかしそうにそう言った。僕はこんな珍しいことが同じ日に二度も有るのは珍しいと思ったが、断る理由がなかったので、委員長と連絡先を交換した。
「よし! これでいつでも尾張に連絡できるな!」
「……もしかして、委員長も、僕に依存したいとか言わないよね?」
思わず僕がそう言うと委員長は少し残念そうな顔で僕のことを見る。
「え……駄目なのか?」
「いや、だって、委員長は……大丈夫でしょ?」
「なっ……! 私だって、辛い時はあるぞ! そういうとき誰かに頼りたいと思うことはあるじゃないか!」
委員長は不満そうに僕にそう言う。僕はそんな委員長を見て思わず笑ってしまった。
「わ、笑うな! おかしいことを言ったか?」
「あ、あはは……いや。全然。ごめんね。でも、わかったよ。委員長も辛いことがあったらなんでも連絡してね」
僕がそう言うと委員長はまた少し戸惑いながらも、話を続ける。
「……じゃあ、さっそく、辛いと思っていることがあるんだが……相談してもいいか?」
「え? 何?」
「……その……委員長って呼ぶの、やめてほしいんだ」
いきなりそう言われて僕は戸惑ってしまった。
辛いと思っていること……そうか。委員長は今まで「委員長」と呼ばれることを嫌だったのか。
「あ……ごめん。そうとは知らず……」
「あ! いや! 別に謝らなくていいんだ! ただ、私は別に委員長じゃないし……その……」
と、慌ててそう言った後で、また委員長は恥ずかしそうに話を中断してしまった。不思議そうに僕が見ていると、委員長は小さな声で先を続ける。
「……尾張には……名前で呼んでほしいから」
委員長はそう言って僕のことを見ていた。予想外の発言に僕は少し戸惑ったが……それに返事するように優しく微笑む。
「わかった……えっと……じゃあ、これからもよろしくね。友田さん」
そう言うと、委員長……ではなく、友田さんは満足そうにニッコリと微笑んだのだった。




