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辛辣 4

「あの人、またここに来ますね」


 それからしばらくして、内田さんが屋上にやってきた。僕は少し気まずい思いをしていたが、仕方なく内田さんと会話していた。


「え……でも、僕、結構委員長に酷いこと言っちゃったし、酷いこともしちゃったんだけど……」


「……でも、最後には謝っていたでしょ?」


 お見通しだと言わんばかりにそういう内田さん。僕は否定できなかったので小さく頷いた。


 内田さんは小さくため息をつく。


「それに……あの人、居場所がほしい、って言いましたよね?」


「……え? なんでそれ、知っているの?」


 内田さんは僕のことを見つめている。いやいや……見つめるんじゃなくて、なんでそのことを知っているのかを教えてほしいのだけれど。


「……いいじゃないですか。知っているものは知っているんですよ」


「え……もしかして……聞いてたの?」


 僕がそう言っても内田さんは答えてくれなかった。もし、内田さんが僕と委員長の会話を聞いていたから屋上に来るのが遅くなったとすれば……辻褄は合うのだが。


 内田さんは気不味くなったのか、コホンと小さく咳払いをする。


「とにかく……あの人は居場所がほしい、そして、ここはあの人にとって、自分のスクールライフで唯一構ってくれる尾張君がいる場所……来ないわけがないじゃないですか」


「……内田さんは、委員長がここに来るのが嫌なの?」


 僕がそう言うと内田さんはさらに不満そうな顔で僕を見る。なんでそんな不機嫌そうなのかは僕にはわからなかったが。


「……別に。いいですよ。あの人が来ても。そんなことより……尾張君、私とのこと、覚えてますよね?」


「え……覚えているって?」


 僕がそう言うと内田さんはわざとらしく大きくため息をついて、僕を睨む。


「……私達、ここから飛び降りるためにこの場所に来ているんですよ。そのことを……あの人にもちゃんと伝えてくださいね」


「え……いや、委員長にはそう言ったけど……」


「……やめろって言われたんですよね? 別に関係ないですよね? そもそも、あの人より、私とここで先に会ってますよね?」


 怒涛の勢いでそう言う内田さん。僕は思わずたじろいでしまった。


「あ……はい……言っておきます」


「当たり前です。しっかりして下さいね。来週からは」


 と、内田さんはやはり不機嫌そうな様子で僕に背を向けて去っていってしまった。


 残された僕は今一度内田さんが今さっき言った言葉を反芻する。


「……死ぬために、か」


 今一度フェンスの向こう側を見ながら、僕は来週からどうなってしまうのか、本当に委員長は来週からここに来るのか……そんな事を考えていたのだった。

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