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第14話 ヤメロ……、オレ ヲ ソンナ目デ ミルナ……!!

「おい、そこの四人止まれ」



 衛兵に声をかけられ指示通り立ち止まる四人。



「見ない顔だな。ここへは初めてか? どこから来た?」



「あぁ、ここへ来るのは初めてだ。ずっと西にある田舎から出てきてね、名前もないような小さな集落さ。ここへはハルモニアの入試を受けにきた」



 テュールが一歩前に出て衛兵の質問に答える。



「ふむ、なるほどな。まぁちと怪しいが満更嘘っていう感じでもないな、ではまず手の平を見せろ」



 衛兵の一人が四人に対し、そう要求してくる。当然この慣例は知っていたため戸惑うことなく手の平を見せる四人。



 ちなみにこれは犯罪者かどうかを調べるものであり、手の平に犯罪者の証である刻印があるかを見るものである。当然四人にあるわけもなく──。



「……よし、いいだろう。では入場パスを発行しよう。一人あたり一万五千ゴルド。四人で六万ゴルドだ」



(ゴルド……? ゴルド……。ゴルドかぁ…………)



 ゴルドとはロディニア大陸共通の貨幣で、日本の貨幣価値とほぼ同価値と考えてよい。つまり、六万ゴルドは日本円で六万円程度である。



(そういや、イルデパン島にいる頃って全て自給自足だったから実際のお金って見たことなかったなぁ。なぁ? ……お金持ってる?)



 他の三人に目で尋ねるテュール。



 ふるふる。



 三人がゆっくりと首を横にふる。



 一方、そんな窮地に立たされているとは思ってもいないイルデパン島では──。



「あっ……」



「ん? どうしたんじゃ、ルチア?」



「いや、そう言えば当面の資金を渡すの忘れてたさね、あたしとしたことがうっかりだ」



「ガハハハ、まぁ歳も歳だ! ボケても仕方あるめグロガヮァッッッ!!」



 フシュ~。……ピクッピクッ。



「リオンも懲りないねぇ~、まぁ、けどテュール達ならなんとかするでしょー大丈夫だよ、きっとーハハハハー」



「そうじゃな、あやつらならまぁ上手く機転を利かせて乗り切れるじゃろいホホホ」



「……そうさね。まぁもう過ぎちまったもんはしょうがない。あいつらも立派な大人だ、己が道は己で切り拓くさね」



「ガハハハ、そうだな!! ガハハハハ!!」



 こうしてルチアは今まさにというタイミングで思い出すが、わりと適当だった。



 そして、そんな機転を利かせられるかどうかの場面では──。



「ん? どうしたんだ? 顔を見合わせて……、なんだ足りないのか? まぁ田舎から来たって言ってたしリバティは他の街と比べ入場料が高いからな、で、今いくら持ってるんだ?」



(いくら……、ゼロか、ゼロっていうのか? 流石に田舎から出てきたとしても一銭も持っていないのはおかしいだろ。盗られた? スられた? いや、ここで黙ってしまった時点でこれは怪しすぎる……。かくなる上は……!!)



「ゴルド? ナニソレ? オイシイ? オレ達ゴルド食ベタコトナイネ。オマエ達ゴルド食ベタコトアルカ? ウマイカ?」



 これが彼の精一杯の機転であった。振り返った先、三人の顔はそれはそれは残念そうに、この世の終わりでも見てしまったかのような目で見返すのであった。



(黙れ、お前ら顔がうるさいぞ。もうここまでやっちまったんだ。引き返せないのは分かるな? ならば合わせろ。俺達はいついかなるときも友人であり、家族だ。ほれ、ほれ)



 目と顎でテュールが三人に話を合わせろと催促する。そして、まず執事がやれやれと言った様子で一歩前に出て、口を開く──。



「いいですか? テュール様、ゴルドとはお金のことです。貨幣です。貨幣とは物の価値尺度となるもので、対価を求められる際の媒介物として使います。つまり都市国家リバティへ入場するためには対価としてお金が必要なのです。分かりますか?」



(おいおい、ベリト君シナリオが違うんじゃないかなぁ? これだと俺がただアホの子みたいじゃないか)



「テュール坊ちゃま。テュール坊ちゃまがキラキラして綺麗と言ってさっき川に投げ入れたのがお金だよー? 金色でピカピカしてるけどおもちゃじゃないから今度から投げちゃダメだよー?」



(ヴァナル、お前もか!!)



「すみません、衛兵さん。あの、うちの大将は集落の長の息子で、それはそれは賢い人だったんでさぁ、けれど途中の森で足を滑らせ岩に頭をぶつけてから急に訳の分からないことを言い出すようになっちまって……、入場料としてとっておいた大金貨もこの始末でさぁ……。とにかく医者に見せたい……。金は絶対に返します。どうか入れてもらえねぇでしょうか……!」



 ちなみに大金貨は十万、金貨は一万、大銀貨は千、銀貨は百、銅貨は十ゴルドだ。



「アーアーアー、かゆ……うま……、アー、アー……」



(すっごい白い目で衛兵さんが僕を見つめているんですけど……)



 仕方なくテュールは自ら道化の道を進み、某アンブレ◯社が開発したウィルスを飲んで変貌してしまったかのように振る舞うのであった。



 だが当然──。



「あー、内勤のヤツに連絡して交代してもらうから少しの間、番頼むわー。とりあえずこいつら詰め所に連れてく。おい、お前ら妙な真似はするなよ? 腕の一本や二本失くなっても人間死なねぇんだ。余計な手間かけさせてくれんなよ?」



 そんな苦しい芝居が通用するはずもなく、衛兵に縄を繋がれ連行されることとなる。



(……ッフ、ほ、ほらな? 入れただろ?)



 小さく呟くテュール。



 三人はそれに何も言葉を返さず、ただただ憐憫(れんびん)の視線を向けるだけであった。



 こうして四人は幸先が良いとは言えないスタートを切り、リバティへと足を踏み入れるのであった。

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