第20話 クラスでの立ち位置
ミドルテッシモ王国を騒がせた事件から1週間ほど経った。
徐々に国内のごたごたも終息に向かい始めたころ、ミドルテッシモ王国国立中央学院特別教育学部第327期生は、いつも通りの時間を過ごしていた。
そんな中、私は1人悩んでいた。
「どうしてこうなった」
つい、こぼしたくなってしまう。
なぜならば、私のクラスでの立ち位置がいつの間にか、すごいことになっていた。
朝、私がホームルームに入ると、なぜかクラスの皆が入り口からずらーっと私の席まで並んでいるのだから。
さらに今までなら私の事をネリアさんなどと呼ばれていたのに、つい最近ではネリア様と呼ばれるようになってしまった。
なぜこうなったかは、どうせ上位者スキルのせいなのは分かっているのだが、今のクラスの立ち位置を聞くのが少し怖くていまだに聞けずにいる。
「どうなさったのですの?ネリア」
「あっ、ミランダか」
いつの間にか私の側にミランダがいた。
まさか、声をかけられるまで気づけなかったとは、かなりぼーっとしていたらしい。
「何か悩みがあるのでしたら、遠慮せずおしゃってください。私とネリアの仲なのだから」
「ありがとうミランダ。それじゃ一ついいかな?」
「どうぞ」
「私って、今このクラスでどんな立ち位置なのかな?」
「立ち位置ですの?そうですわね、このクラスの皆からいえば女王様というところですわね」
「じょ、女王?」
「えぇ」
これはまた凄いことになっていた。
というか、普通そこはミランダが一番じゃないのか?
ミランダは他国とはいえ、れっきとした王女様だ。
それを差し置いて、私が女王とは。なんとも言えないな。
「それでミランダは良いの?本来なら本物の王女である、あなたが一番にならなくても?」
「問題はありませんわ!それよりもネリアの方がお似合いですわよ」
「そうかな?私としては、そんなモノはいらないだけど」
「何を言っているですの!ネリアこそこのクラスのトップであることがふさわしいのですわよ!」
興奮気味にこちらに身を乗り出してくるミランダに、少し私は引いてしまった。
それにしてもなんだかいつもよりも何か違うような気がする。
ミランダが割とテンションが高い事は知っているのだが、それにしても今日は少し、いつもよりも勢いが強い。
それになんだかクラスの雰囲気が、なんだかいつもと違う。
これは何か上位者スキルが何かしているというよりも、何かに惹かれている人のような感じがする。
少しばかり嫌な感じがしたので、久々にステータスのチェックを行うことにした。
「何があっても平常心、何があっても平常心、何があっても平常心!よし!」
いかなるスキル、称号が増えていようがこれで大丈夫。だぶん。
という事でステータスを見てみる。
少しばかり各数値が上がっているのは問題なし。これは体の成長からくるものだから。
なので、次に見るのはスキルの方だ。
今度はスキル一覧を見るように念じる。
ついにこの状況の原因かもしれないスキルが発現しているのを発見する。
「スキル、カリスマか」
スキル、カリスマは、魅了系スキルの1つで、何でもかんでも魅了し、他者を操るようなスキルではなく、他者に対して、スキル保有者の何か一面を強調し、惹きつけるスキルである。
このスキルは、懐柔スキルの派生スキルであるため、懐柔対象に対してスキル効果を高めることができる。
なぜ、懐柔スキルからの派生かといえば、カリスマのある人物は他者を惹きつけ、そして自分の仲間になるという事から来ているらしい。
という事で、それ以外のスキルが増えている様子はなかった。
それにしてもカリスマスキルだけで、このようなことがあるのだろうか。
あくまでも懐柔スキルからの派生スキルで、ここまで強力なのだろうか。
それに派生スキルを取得するには、ある程度そのきっかけとなるものがあるはずである。
という事はスキルでもないのであるなら、残るは称号の中にその答えがあるはずである。
今度は意識を称号に変えてみる。
そして私はついにこの現象の一番の大本と思われる称号を発見した。
「妖艶なる女王!?」
なんだか嫌な予感がする。
この称号からは、ろくでもない予感がするのだ。
とりあえず、称号の内容を確認してみる。
「妖艶なる女王。この称号を保有するものは、男性に対して絶対的な優位な立場になることができる。さらに女性に対しても魅了効果を発揮する。はぁ」
そして、さらに確認してみると説明の最後に、なんか誰かを思い出すというか、この称号を与えた人物の名前があった。
「注釈。この男性に対しての優位性は、たとえ神以上の存在であっても覆ることはありません。By未久美。あー」
確かにこんな称号を面白半分で与えそうな気がする。
というか女王って、どう考えてもこのクラスでの立ち位置を知っていて、そういう名称にしたのは間違いないだろう。
「考えるだけで無駄かな」
あの人がやることに一々反応していても仕方がないので、気持ちを切り替えることにした。
そういうものが付与されたんなら、とことんまで利用してやるだけだ。
使えるものは、よほどのことがない限り使うのは、私の信念1つだ。
それからいつも通りの日々が過ぎていく。
カリスマスキルと、妖艶なる女王という称号が出てから、今まで何となく私が上位の立場であったものが、完全にこのクラスのトップの立ち位置になった。
だからといって、それが私に何か大きな事かと問われれば、私は否定するだろう。
なぜならば、今までよりは反応や態度が以前に増して大げさ気味になっただけで、大きな形では変わっていないからだ。
なので、ちょっぴり疲れ気味にはなったが、それも最初の内だけである。
1週間もすれば、私も完全に馴れた。
という事で、時は過ぎ今日は7ノ月の半ば。そろそろ学院でも夏の長期休暇が近づいてきたころだ。
クラスは相変わらずで、私を頂点にした支配体制が築かれた。
といっても何か険悪なものではなく、特に大きな争いなども起こらず、実に平和なクラスである。
特に妖艶なる女王のせいなのか、それともカリスマスキルのせいなのかは分からないが、ほかのクラスで起こるような派閥は出来ていなかった。
それはそれで非常にありがたいことなのでよしとしよう。
そして今は、すべての授業も終了して、明日以降の連絡を持ち受けているところである。
「皆さん、揃っていますね。それでは連絡事項を言いますので聞き逃さないようにしてくださいね」
そう言って、このクラスの学級担任であるミーナス教諭がホームルームに入ってきた。
「えー、皆さんもこの時期になったら何が行われるか知っているとは思いますが、ついにレベルアップの儀の時期になりました。それで来週の初日に行うことになりましたので、各自準備を怠らないようにしてくださいね。それでは今日はおしまいです」
ついにこの時が来たようだ。
レベルアップの儀は、文字通り今までのレベル1から次のレベル2になる行事である。
なぜこのようなことが行われるかというと、この世界のレベルアップは少し特殊で、初回のレベルアップだけは、どんな魔物を倒そうが、取得する経験値が1であると言事である。
なぜそのような仕様になっているかはよくわかっていない。
多分だが、これもあの人の気まぐれだろう。いや、絶対にそれ以外ありえない。
という事で、どんな魔物を倒そうが、初回のレベルアップ時は必ず取得経験値が1なので、逆に言えばどんなに取得経験値が多い魔物であったとしても必ず1になってしまうのだ。
だからこそ、この行事では取得経験値の少ない魔物、特に取得経験値が1未満の魔物、つまり最弱の魔物であるスライムを狩ることが、この行事の内容である。
「ネリア、ちょっといいかしら?」
「ん、何?」
声をかけてきたのはミランダであった。
このタイミングで声をかけてくるという事は、レベルアップの儀についてであろう。
「ネリアは、レベルアップの儀では誰と組むのですの?」
どうやらレベルアップの儀の時に、組む相手についてだった。
「それはもちろんミランダとだけど、確か最低3人で組むことになっているんだっけ?」
「そうですわ。だからこそ、私とネリア以外では誰と組むかという事ですわ」
「ん~、誰でもいいような気がするけど。それだけでは駄目なのか?」
するとミランダの顔が、微妙な表情になる。
それから少し言いにくそうに答えてくれた。
「それなんですが、そう簡単な話ではないのですよ。ネリアと組むという事は、ひとつのステータスにもなるんですわ。だからこそ誰と組むのかが重要なのですわ」
「あ~ぁ」
これはまた面倒な事になりそうだ。
といっても、正直本当にどうでもよいのだ。
誰と組んでも、特に私が何か被害を被ることはないからだ。
ただ、ここで変な事になれば、このクラスの崩壊もあり得るかもしれない。
とりあえずここで、特に何も考えずに決めるのは、さすがにまずい気がする。
「ん~、当日の朝までには決めとくよ。さすがに今決めるのはまずい気がするから」
「そうですわね。それがいいでしょう。それじゃ私はこの辺で失礼しますわね。ではまた来週」
「あぁ、また来週」
そう言ってミランダは一足先に帰っていった。
私は誰にするか決めるために、落ち着ける場所に行くことにした。
といっても行く場所なんて1つぐらいだが。
という事で、私は研究室に向かう。
「さてと、どうしたものか。単純に決めるのもまずいかぁ。めんどうだなぁ」
私は、ため息交じりに椅子の背もたれに寄りかかり、伸びをする。
「何かいい方法は無いかな?クラスの全員が納得する方法は……、あ!」
そういえば、あまり活用出来てないことでいいものがあるではないか!
簡単な事であった。問題が起きるのなら、起きる余地が無いようにすればいいだけのこと。
ここは妖艶なる女王の副次効果である、支配能力を使えばいいのだ。
まるで傾国の美女のようなやり口だが、この際はどうでもよい。使えるものならなんだって使うのが私のやり方なのだから。
とりあえず問題を解決というか、有耶無耶にしてスッキリしたところで、私は家に帰ることにした。




