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ŪNDER WΦRLD  作者: 赤神裕
Scene 10:ENDER WΦRLD ―終焉の世界―
82/85

Episode 75:バイバイ……

みなさん、おはこんにちばんわ

第75話になります。


それでは続きをお楽しみください。

 アストロは笑った。笑って突き出した手を引っ込める。アストロは息切れしていた。それもそのはずだ。無数の光線を出現させた状態でドリウスとルフェルに加え、オビリオン中の化物から力を借りてそれを支えていたのだから。アストロはその場にへたり込んだ。


「案外疲れるもんだぜ?」


 アストロが笑いながら言った。


「……イヤ、マダだ。マダ止まってイなイ」


 カオスが呟く。その声にアストロは空を見た。デドロの塊は渦巻きながら穴へ入っていく。先ほどまで止まっていたはずなのに、動き出している。


「何で止まらないのだ!! おい、止まれ!! オレ様が止まれと言っているだろう!!」


 ドリウスが足をバタバタと踏み鳴らしながら右手でデドロの塊を指差して命令する。ドリウスは至って真面目だったがその行為はふざけているようにしか見えなかった。


「言っても無駄だぜ。またアレをやるしかない!」


 アストロはふらつく身体を起き上がらせて右手を構える。すると突然、男の子のショルダーバックが暴れだし、中から黒いものが飛び出した。クロだった。


「ボ、ボクが……。あれ、止める……」


 クロはニュッと足をデドロの塊に向けた。


「止めるって、一体どうやって止めるというのだ!?」


 ドリウスが問うた。


「ぼ、ボクは、特殊なんだ。あ、普通のデドロとは、違うんだ……。デドロは、ぼ、ボクから生まれたから。だ、だから、ボクならできる。ぼ、ボクが、あそこに行って止める!」


 男の子が首を横に振る。


「ダメ! クロ、行っちゃダメ!」


「でもこのままだと、人間界が滅びちまうぜ」


 アストロが言う。男の子は首を横に振った。


「クロは友達だもん。クロは守らなきゃいけないんだもん。ドリウス、そうだよね!」


 ドリウスは視線をそらした。男の子が駄々をこねる。オビリオンに来て初めてだった。男の子が自分の欲のために駄々をこねたのだ。アストロが男の子の頭を撫でる。


「お前さんが決めてやらないと、いつまで経ってもクロは幸せになれないぞ。お前さん、クロにとっての幸せは何だか解るか?」


 男の子に問う。男の子は首を横に振った。


「クロの幸せは、お前さんを守ることなんだよ。お前さんだけじゃない。オビリオンも人間もどっちも守ること。これがクロの幸せなんだ。解るね?」


「わからない! クロは友達だもん。ずっと一緒にいる! バイバイはいや!」


 男の子はクロがこれから何をしようとしているのか分かっていた。行かせてしまえばもうクロとは会えなくなってしまう。そんなの嫌だ。男の子は拒否する。そんな男の子の頬にクロは優しくニュッと足を伸ばした。


「ぼ、ボクもバイバイはイヤ……。でも、しなくちゃ。カオスともバイバイしなくちゃ」


 クロがカオスの方を向く。カオスは申し訳なさそうに俯いた。


「だ、大丈夫。ボクは。クロは、カオスの中に生きてるから……。カオスは元々ボクだから。マトハっていう。一人の人間だから。ぼ、ボクは、カオスの中に戻るだけだよ。カオスも、ボクがデドロをとめたら消えちゃうけど、マトハは残るから……」


 男の子は涙を堪えていた。拳を握り締めて泣くのを堪えていた。


「そ、そろそろ行かなきゃ……。バイバイ、あ、ありがとう、ね。いっぱい、いっぱいありがとう……。カオス。いいよね? もう、ボクが居なくても、大丈夫だよね?」


 カオスはコクリと頷いた。カオスの中には既にクロとしての心が、優しい心が芽生えていた。クロが走り出す。デドロの塊に向かって走り出す。


 その小さな身体でオビリオンのため、人間界のため、戦おうとしていた。男の子が追いかけてきている。だが、もう二度と振り返ることはない。クロはデドロの塊の中へ飛び込んだ。


「クローーー!」


 男の子が泣き叫ぶ。クロが飛び込んだデドロの塊は一層大きくなった。クロが他のデドロを捕食していた。そしてどんどん大きくなる。クロは大きな塊となった。


 クロは自分の身体を食べ始めた。痛みに耐えながら、捕食していく。カオスが唸っている。クロとカオスは同体だった。クロが食べたところから煙が噴出す。カオスもまた、煙になっていく。


「バイバイ……」


 クロは最後の一欠けらを食べると能面のようなものだけを残し消え去った。カオスもまた煙となって消え去り、白黒ボーダーのセーターを着た人間の子供――マトハが残った。マトハという一人の人間から生まれた闇の存在カオスと、優しさや勇気をもったクロ。


 クロはマトハから分離して最初は闇を抱えて不安定だったものの、男の子の勇気や決心に触れることでマトハの優しい心に戻ることができた。


 牢獄でクロと男の子が干渉して暴れたのも、それはクロの中にあった闇と男の子の闇が干渉したに過ぎない。それはお互いに克服できている。


 カオスもまた、闇でしかなかったが男の子に触れて変わった。カオスの中にはクロが生きている。カオスはマトハに戻れたのだ。


 男の子が泣いている。アストロが男の子の頭を撫でた。男の子はアストロのローブに顔を埋めて泣いた。マトハが目を開ける。男の子の泣き声が聞こえた。マトハは起き上がると男の子に近づいていった。


「ごめんね……。ぼくのせいで、辛い思いさせちゃった……。ごめんなさい……」


「マトハよ。すまぬ。私のせいだ。私がもっと早くそなたの闇に気がついていれば、こんなことにはならなかったのだ。本当にすまなかった」


 王がマトハに言う。マトハが拳を握り締めながら首を横に振った。


「泣いてもよい。人間界では既に時が経っておるが、今は、オビリオンにいる間はまだ子供なのだから。私の可愛い息子なのだから」


 マトハは堪えきれなくなり涙を流した。王はマトハを抱きしめた。マトハは子供のように泣いた。男の子に負けないくらい大きな声で泣いた。王もまたつられて、マトハを抱きしめながら泣いた。


 城の裏手にある大きな山の上で、二人と一匹の鳴き声が響き渡る。その声は互いに混じり合い、一匹の悲しげな狼の遠吠えのように聞こえた。

読了お疲れ様でした。

いかがでしたでしょうか。


クロの活躍によりデドロは侵攻を止めた。

優しい心を持った化物『クロ』と闇を抱えた化物『カオス』

二匹は一人の人間『マトハ』から生まれた化物だった……。

続きは76話で!!


それではまた次回お会いしましょう!!

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