第520話 神騎士の正体、そして……
リアナと水音によって胴体を覆う鎧を失った2体の神騎士。
その中にいたのはセイクリア王国の2人の王女、クラリッサとイブリーヌだった。
2人は一糸纏わぬ姿で眠っているかのように両目を閉じていて、両腕と下半身を太い紐のようなもので拘束されていた。
(く、イブリーヌ様に、クラリッサ様……)
春風はそんな状態の2人を見て、ギリッと歯軋りをすると、
「フッフッフ、まさかもう見破るとは、流石は異世界から来た『悪魔』ということか」
と、上空にいるモーゼスが不敵な笑みを浮かべながら言った。
その時、
「モーゼス教主、2人に何をしたんですか!?」
と、水音が怒鳴るようにモーゼスに尋ねた。
その質問に対して、
「フン、女神マール様に逆らった裏切り者の桜庭水音か。いやいや、私は何もしていませんよ。神々にクラリッサ様とイブリーヌ様を捧げたら、このような姿になった。ただ、それだけですよ。恐らく、あなた達の抹殺か、或いは……ウィルフレッド達の処刑をさせる為でしょうな」
と、モーゼスは水音を罵った後、口元を醜く歪めながら答えた。
その答えを聞いて、
「あ、あいつらぁ、なんてことを!」
と、ループスは怒りに震えた。
すると、モーゼスはスッと真面目な表情になって、
「さて、くだらない話はここまでだ」
と言うと、スッと右手を上げた。
次の瞬間、イブリーヌとクラリッサが入ったまま、2体の神騎士の体が光り出した。勿論、地面に落ちた鎧も含めてだ。
その後、2体の神騎士がスゥッと空へ上がると、両方とも全身が眩い光の塊になり、ガシャンという音と共に1つの大きな塊になった。
そして、モーゼスもその光の中へと、その身を沈めた。
やがて眩い光の塊は別の形を成していき、その光が消えると、現れたのは、背中に大きな翼を生やした、先ほどまでリアナと水音が戦っていた神騎士以上の大きさと異形さを持つ騎士だった。
そのあまりの姿に、
「うわぁ、これちょっとやばくない?」
と、春風はタラリと冷や汗を流した。
すると、
「ハッハッハ! さぁ愚かな悪魔ども、このモーゼス自らが、この場で貴様らを葬ってくれるわ!」
と、巨大な異形の騎士からモーゼスの声がしたので、
「にゃろう、モーゼス……」
と、春風はピキッとなって、地面に突き立てた彼岸花・神ウチを握り、引き抜いた。
その後、春風はリアナ、水音と合流し、
「2人とも、いける?」
と、尋ねると、
「「勿論!」」
と、2人は声を合わせて答えた。
その時、
「待ってくれ」
という声がしたので、春風達は「ん?」と声がした方へと振り向くと、
「前原君……」
そこにいたのは、翔輝だった。
翔輝はゆっくりと春風達に近づくと、
「僕も、共に戦わせてくれ」
と、頼み込んだ。
それに対して、
「大丈夫なのかい?」
と、春風が尋ねると、
「ああ、問題ない。それに……」
「それに?」
「助けたい人が、あそこにいるんだ」
と、翔輝は空に浮かぶ異形の騎士を見ながらそう答えた。
そんな翔輝を見て、
「そっか」
と春風が小さく呟くと、リアナが一歩前に出て、
「それじゃあ、私、本気出しちゃうよ!」
と言うと、自身の体を白い光で覆った。
そして、その白い光が消えると、代わりに現れたのは、長く伸びた白髪にピョコンと出てきた狐耳、そして、9本の狐の尻尾を持つリアナの姿だった。
春風はその姿を見て「おお!」と驚きの声をあげると、
「それなら僕も……」
と、水音も一歩前に出て、
「イチ、来てくれ」
と、ループスの側にいるイチを呼んだ。
呼ばれたイチは、
「う、うん、わかった」
と、すぐに水音のそばに駆け寄ると、その勢いで水音に飛びかかった。
次の瞬間、水音とイチの体が、青い炎に包まれた。
そして、その青い炎が消えると、そこに現れたのは、上半身を包む鎧の背中から、狼の頭部を持つ2体のロボットの上半身を生やした、まさに三面六臂となった水音の姿だった。
いきなり姿が変わったリアナと水音を見て、
「おお、何々!? 2人とも凄いんだけど!」
と、春風が感動していると、
「うーん、詳しい話は、あいつを倒してからゆっくり話すよ」
と、水音は巨大な異形の騎士を見ながらそう答えたので、
「オッケー!」
と、春風はそう返すと、腰のポーチに手を突っ込んで、そこから何かを取り出し、
「はい、前原君」
と、翔輝に渡した。
それは、どうやら青い小瓶のようで、受け取った翔輝は、
「これは……?」
と、尋ねると、
「俺特製の回復ポーション。フルーツ味だから飲みやすいよ」
と、春風はそう説明した。
翔輝は「そうか」と言うと、その小瓶の蓋を開けて、中身を一気に飲み干した。
「うん、上手いな。それに、力がみなぎるようだ」
と、翔輝はそう言うと、空になった小瓶を春風に渡した。
その後、翔輝は自身武器である長剣を握り締め、それを媒介に剣型神器を再び作り上げた。
その後、4人は並び立つと、目の前の巨大な異形の騎士をジッと睨んだ。
するとここで、春風が口を開く。
「前原君、今でも『勇者』になりたいって思ってる?」
そう尋ねると、翔輝は視線を巨大な異形の騎士に向けたまま答える。
「ああ、なりたい。だけど、今度は自分の為じゃない、彼女の……クラリッサ様の為の『勇者』になりたい!」
その答えを聞いて、春風は「そっか……」と小さな声で言うと、
「それじゃあ、俺が言うことは1つだ」
と言って、スッと翔輝に右拳を差し出し、
「行こうぜ、『勇者』!」
と言った。
その言葉を聞いて、翔輝は「フ……」と笑うと、
「ああ! 行こう、『賢者』!」
そう言って、春風の拳に自身の拳をコツンと当てた。




