第518話 「前原翔輝」という少年10
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
それから間もなくして、春風、水音、歩夢、美羽の4人を「被告人」とした、「学級裁判」が始まった。
その際に明らかにされた春風の「女性関係」についての話を聞いて、
(くぅ、幸村! その顔でハーレム作っちゃうとかありえないだろ!)
と、翔輝は怒りに震え、そこへ更に水音の「女性関係」についての話も出てきて、
(んなぁ! さ、桜庭! 皇女様だけじゃなくその幼馴染みともだと!? なんて羨ま……!)
と、更に怒りに震えそうになったが、
(……いや、僕もある意味他人のこと言えないか)
と、脳裏にクラリッサの姿が浮かんだので、すぐにおさまった。
その後、小夜子から「判決」を聞いてショックを受けた春風達を見て、
(ハッ! ざまぁ! 特に幸村、ざまぁ!)
と、翔輝は誰にも気づかれないように意地の悪そうな笑みを浮かべた。
その後、ウォーリス帝国から新たな皇族や春風の仲間達、更にはグレイシア王国の女王を名乗る女性の登場からの、春風、召喚初日に飛び出した日から今日に至るまでの「冒険」を報告する。
(ぐうぅ、幸村! お前、一体何なんだよぉ!)
そして、一通り報告が終わると、
(こ、これはぁ!)
春風……「巫女」になる。
そのあまりにも美しいその姿を見て、
(グフォ! ゆ、幸村ぁ。なんて美しいんだ。そんなに似合ってるのに、何で男なんだぁ!?)
と、翔輝は心の中で悶絶した。
翌日、春風達が更なる「強さ」を求めてそれぞれの目的地へと旅立つことが決まり、更に翌日、「お互い強くなってまた会おう」といった感じの約束をすると、それぞれ別方向へと出発した。
その一方で、翔輝はというと、ウィルフレッドやイブリーヌ達と共にセイクリア王国へと戻ることになった。
(クラリッサ様、失望するだろうなぁ)
と、王都へと向かう馬車の中で翔輝がそんなことを考えていると、
「ん? なんだぁ!?」
突然、謎の光に包まれて、翔輝は他にクラスメイト達と共に意識を失った。
(う、こ、ここは?)
気がつくと、翔輝は見知らぬ場所にいた。
よく見ると、そこは白い部屋の中で、翔輝はその部屋に設置された固いベッドの上に寝かされていたようで、周囲には他のクラスメイト達も、自身と同じように固いベッドに寝かされていた。
翔輝は訳がわからないまま起きあがろうとしたが、
(あ、あれ? 何だこれ!?)
どうやら両手両足がベッドにがっちり拘束されていて、翔輝がどれだけ力を入れても、びくともしなかった。
すると、部屋に1つしかない扉が開かれて、見知らぬ若い男女が入ってきた。
「だ……誰だ?」
と、翔輝は若い男女にそう尋ねたが、2人ともその質問に答えることはなく、
「な、何をする気だ!?」
2人はそのまま翔輝に近づいて、
「や、やめろぉおおおおおおおっ!」
ニヤリと笑い、翔輝に向かってその手を伸ばした。
それから若い男女に「何か」をされた翔輝は、拘束を解かれた後、何処かに連れられた。
(く、ちくしょう! 体が自由に動かせない!)
と、翔輝が心の中でそう呟いたように、体を動かすことが出来なくなっただけじゃなく、言葉を発することも出来なくなり、まるで「操り人形」になったかのような状態だった。
そして、着いた先で見たのは、
(く、クラリッサ様!)
囚われの状態になっていたクラリッサだった。よく見ると、その隣には妹のイブリーヌもいる。
そのあまりの様子に、
(そ、そんな……ちくしょう! 目の前にいるのに、何も出来ないなんて!)
と、翔輝は心の中で悔しがった。
その後、翔輝と他のクラスメイト達は、「天使」となったモーゼスと共にセイクリア王国の王都へと向かった。
その目的はただ1つ、3人の「悪魔」……というより、幸村春風の抹殺だ。
(ちくしょう、ちくしょう! 僕は……僕は!)
そして現在、翔輝は春風達の前に立った。
「……ゆ、幸……村……」
「ま、前原君……!」
「前原君!」
「……ほ……本気……で、来い!」
それは、翔輝自身の言葉ではなかった。なかったのだが、
(く、な、何故だ? 幸村を前にすると、『怒り』や『恨み』が湧いてくる!)
と、翔輝は心の中で苦しんだ。
そして、戦いが始まり、
「前原君! 目を覚ますんだ!」
春風が翔輝に向かってそう叫んだ。
真っ直ぐな目で翔輝を見て叫ぶ春風。
そんな春風に、翔輝は、
(ああ、わかってる。わかってるさ!)
と、心の中でそう呟くと、
(こんなところで……僕はぁ!)
と、そう叫んだ次の瞬間、何かがカチリとはまったかのような音が聞こえて、
(あ、この感覚……もしかして今なら!)
そう考えた翔輝は、力を振り絞って口を開く。
「……ゆ、幸……村……」
「っ! 前原君!」
声を聞いて驚く春風に、
「……た、頼む……」
翔輝はゆっくりと、力強く口を動かして、
「ぼ……僕、を……ぶん殴ってくれ!」
と、春風に向かってそう頼んだ。
どうも、ハヤテです。
というわけで、これで前原君に関する話は終了です。
短くまとめる予定でしたが、思った以上に長くなってしまいました。
そして、次回からは春風君の視点に戻ります。




