第508話 「3人の悪魔」vs「勇者」+2
「……ほ……本気……で、来い!」
そう言い放った後、翔輝が手にしている長剣が白い光を纏い、その形を変えた。
それはかつて水音が女神マールに操られた時に、春風に対して振るった剣型の神器によく似ていた。
その剣型の神器を構えた翔輝に続くように、左右に立つ「神騎士」と呼ばれた2体の異形の騎士達も、それぞれ剣と盾を構えて、翔輝を守るように彼の一歩前に出た。
その様子を見て、
「く。ま、前原君……」
と、春風が辛そうな表情になると、
「ハル、ここは戦おう」
と、リアナが春風の隣に立ち、
「そうだよ春風。戦って、彼を助けよう!」
と、水音が春風の肩をポンと叩いたので、
「リアナ、水音……。ああ、わかった」
と、春風も覚悟を決めたと言わんばかりの表情になった。
その後、リアナは「燃え盛る薔薇」を、水音は「魔剛剣ガッツ」を、そして、春風は「彼岸花・神ウチ」を構えて戦闘態勢に入った。因みに、ループスとヘリアテスは後ろの方へと下がっていて、イチはというと、
「必要になったら合図するから、ループス様達と一緒にいて」
と、水音に言われて、ループス達の側にいる。
王城前にて、お互い睨みあう両者。
彼らの間を、ヒュウと風が吹き抜けて、その場に緊張感が走る。
そんな雰囲気の中、
「……」
上空ではモーゼスが彼らを見下ろしていた。
そして、数秒の沈黙後、
「行くぞ!」
「うん!」
「ああ!」
春風達は前に向かって飛び出し、
「……」
それと同時に、翔輝と2体の神騎士も、前に向かって飛び出し、ガキィンという音と共に、お互いの武器をぶつけた。
ループス達がゴクリと固唾を飲みながら見守る中、リアナと水音は2体の神騎士を、春風は1人、翔輝を相手にしている。
「ハァッ!」
リアナは燃え盛る薔薇を用いた技と魔法を、
「ハァアッ!」
水音はガッツと「鬼の闘気」を用いた技を駆使して、2体の神騎士を攻撃にする中、春風も彼岸花・神ウチと、この世界での日々を過ごす中で鍛えた魔力操作を駆使して、目の前の翔輝と激しい戦いを繰り広げていた。
(く! この感じ、モーゼスの言う通り、遠山君達の時とは違う!)
と、春風が心の中でそう呟きながら、
「前原君! 俺の声が聞こえるか!?」
と、目の前の翔輝に声をかけるが、
「……」
残念なことに、今の翔輝には届いていないようで、彼は無表情かつ無言のまま、春風に向かって何度も剣型の神器を振るった。
(ちくしょう! 前原君、こんなに強かったなんて! これじゃあ、目的のものに届かない!)
と、再び心の中でそう呟いた春風が視線を向けているのは、翔輝の耳についているイヤリングだった。
それは、遠山達を操っていたイヤリングより少し派手なうえにドス黒いオーラを纏っていたので、それが遠山達につけられていたものよりも強力なものだというのが理解出来た。
春風は翔輝に攻撃の隙をついて、そのイヤリングを壊そうとしているのだが、翔輝は「そうはさせるか!」と言わんばかりに、それよりも早く反撃をしてくるので、中々壊せずにいた。
「ちぃ!」
それが、春風をだんだんと苛立たせいたが、
「春風様、落ち着いてください!」
と、彼岸花・神ウチからジゼルがそう叫んだので、
「っ!」
と、春風はイカンイカンと首を横に振って深呼吸すると、
「うん、大丈夫です。ありがとうジゼルさん」
と、彼岸花・神ウチ内のジゼルに向かってお礼を言った。
その後、春風は改めて翔輝に向かって突撃し、彼に彼岸花・神ウチを振るった。
当然、翔輝も剣型神器でそれを受け止めた。
お互い一歩も引かずに鍔迫り合いをする中、
「前原君! 目を覚ますんだ!」
と、春風が再び翔輝に向かってそう声をかけると、
「……ゆ、幸……村……」
と、翔輝が無表情のまま口を開いた。
「っ! 前原君!」
と、春風がまた声をかけると、
「……た、頼む……」
翔輝はゆっくりと口を動かして、
「ぼ……僕、を……」
ーーーーーーー。
「……え?」
その言葉を聞いて、春風は戦闘中にも関わらず、頭上に「?」を浮かべながら首を傾げた。




