第504話 春風の「脱出劇」
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
「春風殿。其方の真似をして、脱獄したのだ」
『ハァアアアアアッ!?』
ウィルフレッドのとんでもないセリフに、春風と仲間達は驚きの声をあげた。
その後すぐに、
「ちょ、ちょっと待ってくださいウィルフレッド陛下! 『俺の真似』をしたってどういう……!?」
と、ハッと我に返った春風がウィルフレッドに詰め寄ろうとすると、
「あ! もしかしてアレのことですか!?」
と、水音が何かを思い出したようで、
「え、水音、何か知ってるの?」
と、「ん?」となった春風は水音を見てそう尋ねると、
「ホラ、春風覚えてる!? 3年前、僕が初めて君と師匠と行った『旅行』!」
と、水音はそう切り出して、春風達に当時のことを語った。
それは、今から3年前。
「うぅ、なんでこんなことに……?」
凛依冴の新たな弟子になって間もない水音は、凛依冴に連れられて、兄弟子の春風と共に国外への『初めての旅行』に出たのだが、立ち寄ったとある小さな町でちょっとしたトラブルに巻き込まれて、その結果凛依冴と春風と共に正体不明の軍隊に囚われてしまったのだ。
「ど、どうしよう。あの人達、正規の軍隊じゃないって師匠言ってたなぁ」
現在、水音は凛依冴、春風と引き離されて、その軍隊の拠点にある一室に1人閉じ込められていた。
「ううぅ、師匠と春風君、今頃どうしてるだろう……」
と、水音が部屋にある簡易的なベッドの上で不安そうに膝を抱えていると、突然、バァンと部屋の扉が開かれたので、
「うわぁ!」
と、驚いていると、
「おーい、水音くーん! 脱出しようぜぇ!」
そこには、満面の笑みを浮かべる春風がいた。
突然のことにポカンとなった水音は、
「……ハッ! え、春風君!? 何で……!?」
と、春風を問い詰めようとしたが、それを遮るように、
「ホラ、師匠が外で待ってるから、行こう!」
と、春風は水音の手を引いてその場から歩き出した。
その道中、
「ちょ、ちょっと待ってよ春風君、君、どうやってここまで!? ていうか、『脱出』って何したの!?」
「ん? ああ、狭い部屋に閉じ込められてたんだけど、死んだふりして向こうに扉開けてもらったんだ」
「は、ハァアッ!?」
というやり取りをしていると、2人の目の前に銃を持った兵士が現れて、
「ーー! ーーーーー!?」
と、明らかに外国の言葉を発しながら銃口を春風に向けた。
「ヒ! や、やばいよ……」
と、水音がビビっていると、春風はスッと兵士の前に出て、
「ーーーーー、ーーーーーーーーっ!」
と、もの凄く堂々とした態度で、兵士が発したのと同じ言語で何かを言った。
その言葉を聞いて、兵士が「えぇ!?」と言わんばかりに驚きに満ちた表情になると、すぐに顔を下に向けて、
「ーーー、ーーーーー」
と言って、春風と水音に道を譲った。
「ーーーーーーーーーー」
と、春風はその兵士に頭を下げながらそう言うと、再び水音の手を引いてその場から歩き出した。
その後、少し時が経って、
「ね、ねぇ春風君、さっきあの兵士に何を言ったの?」
と、水音が恐る恐る春風にそう尋ねると、
「ああ、『何をしてる!?』って尋ねられたから、『退屈だから、脱走してるんだよ』って言ったんだ。そしたら向こうは、『そうか、頑張れよ』って言ってくれたんだ」
と、春風は笑顔でそう答えたので、
「……ハァアアアアアアアッ!?」
と、水音は悲鳴のような叫びをあげた。
その後も2人の前に兵士が現れては、
「退屈だから、脱走してるんだよ!」
と、春風が堂々とした態度でそう言って、
「そ、そうか、頑張れよ」
と、それを聞いた兵士は顔を下に向けて春風達に道を譲った。
そんなことを繰り返していくうちに、
「よっしゃあ、脱出成功!」
見事、拠点の外に脱出することが出来た。
その後、
「あ、おーいハニー&水音ぉ! こっちこっちぃ!」
と、既に外に出ていた凛依冴と合流すると、すぐにその拠点からスタスタと離れた。
そして、そこからかなり離れた町に着くと、
「何だよこれぇ!?」
と、水音はヘナヘナとその場に座り込んだ。
そして現在。
「……ああ、あの時か」
「あらあら、随分と懐かしい話ね」
水音の説明を聞いて、春風と凛依冴は漸くその時のことを思い出して、懐かしさを感じていた。
すると、春風はギギギと壊れた機械のようにゆっくりとウィルフレッドの方へと振り向いて、
「……ウィルフレッド陛下」
「何かな春風殿?」
「まさか、今水音が言ったのを実行したのですか?」
と尋ねると、
「うむ、私達はモーゼスによって牢屋に囚われていたが、その後私は死んだふりをして兵士に鍵を開けさせた後、彼を気絶させて、その後は春風殿がしたのと同じように堂々と城内を歩き、現れた兵士に向かって、『退屈だから、脱走しているんだ』と言ったら、『そうですか、頑張ってください』と彼らはそう言って道を譲ってくれたのだ」
「で、その結果見事に脱出出来て、今はここでのんびり俺達が来るのを待ってたというわけですか?」
「その通りだ」
と、ウィルフレッドは王様らしい威厳に満ちた態度でそう答えた。
その答えを聞いて、
「う、嘘でしょ?」
と、春風がタラリち冷や汗を流すと、
「ゆ〜き〜む〜ら〜」
と、背後で声がしたので、春風は再びギギギとゆっくり後ろを向くと、
「お前は一体何をしてるんだぁああああああ!?」
と、怒鳴る小夜子がいたので、
「ご、ごめんなさいいいいいいいっ!」
と、春風は全力で頭を下げて謝罪した。




