第496話 春風編57 「賢者」春風と……
「俺は幸村春風、『賢者』の固有職保持者だ!」
と、かっこよくポーズを決めながらそう言った春風。
そんな春風を見て、
「け、賢者……」
「遂に、ハルッちが賢者に!」
「スゲェ。なんか、雰囲気がスゲェことになってる!」
と、春風の仲間達は驚きに満ちた表情になった。
すると、
「フーちゃん!」
「ん……って、うわぁ!」
と、歩夢が春風に駆け寄ってきて、ガバッと抱きついてきた。
それを見て、
『あーっ!』
と、凛依冴、美羽、ルーシーが悲鳴に似た叫びをあげたが、春風はそれをスルーして、
「ちょ、ちょっと、ユメちゃん……」
と、抱きついている歩夢に何か言おうとすると、
「……すっごく、心配した」
と、歩夢は春風を抱きしめる力を強めながらそう言ったので、
「……ごめん、心配かけたね」
と、春風は歩夢の頭を優しく撫でながらそう謝罪した。それを見て、凛依冴をはじめとした春風を好きな女子・女性達は皆、
『ムー』
と、不満そうに頬を膨らませていた。
ところが、
「ねぇ、フーちゃん」
「何?」
「その真っ赤な髪の女の子、誰?」
と、チラリと春風の隣で浮いている真紅の髪の少女を見ながら、歩夢がそう尋ねてきたので、春風は「え? あー」と気まずそうにしながら、
「……信じられないかもしれないけど、彼女はジゼルさんだよ」
と答えた。
その答えを聞いて、歩夢達は「え?」と頭上に「?」を浮かべると、
「はい、私は精霊のジゼル。元・おばあちゃん幽霊ですよ」
と、隣で浮いている少女はそう名乗った。
それを聞いて、歩夢達は4秒ほどフリーズした後、
『えええええええっ!?』
と、全員驚きに満ちた叫びをあげた。
無理もないだろう。なにせ、自分達が知っている「ジゼル」という名の精霊は、見た目20代くらいの若くて美しい女性なのだが、今目の前で「ジゼル」を名乗っているのは、どう見ても春風や歩夢と同じ歳ぐらいの少女なのだから。
驚いている様子の歩夢達と、「アハハ」と気まずそうに笑う春風を前に、「ジゼル」と名乗った少女が口を開く。
「そう、私は『零の精霊ジゼル』。精霊・彼岸花ちゃんと共に刀の中に入っていたところ、春風様と共に『ランクアップ』を果たし、見事、彼女と融合して新たな存在へと生まれ変わった」
そして、春風と同じようにかっこよくポーズをとりながら言う。
「故に、今の私は『零の精霊ジゼル』改め、『零と花の精霊ジゼル・リコリス』! 今後とも、よろしくね」
と、とても元・おばあちゃん幽霊とは思えないくらいの明るくて若々しい言い方に、誰もがポカンとなっている中、
「まぁそんなわけで、みんな、よろしくね」
と、春風が何食わぬ顔でそう言うと、
「貴様らぁ! 私を忘れるなぁあああああっ!」
という怒声が聞こえたので、春風達は「ん?」と一斉に怒声がした方へと向くと、そこには明らかに怒っている様子のモーゼスがいたので、
「あ、モーゼス忘れてた」
と、春風は「今思い出した」と言わんばかりの表情でそう言ったので、
「グハァアッ!」
と、モーゼスは本当にダメージを受けたかのように苦しそうに胸を押さえた。
その後、モーゼスはゆっくりと春風を見ると、
「ええい勇者達よ! 倒せ! 倒すのだ! 他はいいから奴を倒せぇ!」
と、操り人形状態のクラスメイト達に怒鳴るようにそう命令した。
それを聞いて、歩夢達はすぐに春風を守ろうと身構えたが、
「大丈夫、ここは俺達に行かせてくれ」
と、春風が歩夢達の前に出てそう言った。
その後、春風は隣で浮いている少女・ジゼルを見て、
「それじゃあ、行きましょうかジゼルさん」
と言って彼女に手を差し出すと、
「ハイ、春風様」
と、ジゼルは穏やかな笑みを浮かべてその手を握った。
次の瞬間、眩い赤い光と共に、ジゼルは人の姿から、鞘におさまった一振りの刀へと姿を変えた。
そして、
「……みんな、今助ける」
と、春風は目の前で戦闘態勢に入ったクラスメイト達を見て静かにそう呟くと、右手で刀の柄をグッと握った。
もしこの刀が以前握った「妖刀・彼岸花」と同じだったら、柄を握った瞬間、刀から何本もの触手が伸びて、春風の右腕に絡みつくだろう。
しかし、何故かそうはならず、代わりに以前の時と同じように、髪が腰まで伸びて真っ赤に染まった後、右目が真紅の炎に包まれただけだった。
その後、春風はゆっくりと鞘から刀を引き抜いた。
その刀身は髪の色と同じ真紅に染まっていたが、以前春風が引き抜いたオリジナルの彼岸花と違って禍々しいオーラはなく、何処か澄み切ったような綺麗な赤色をしていた。
更にその刀をよく見ると、峰には文字のようなものが刻まれていた。
春風はその刀を構えると、目の前のモーゼス達に向かって、その刻まれた文字を言う。
「『彼岸花・神ウチ』、抜刀! 賢者・幸村春風、参ります!」




