第482話 春風編43 「始まりの悪魔」
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
固有職能「賢者」。
それは、このエルードで最初に生まれた固有職保持者の職能。
はるか昔、その力で1つの国を滅ぼしたことをきっかけに、それ以来、「賢者」の後に生まれた固有職保持者達は皆、「悪魔」と呼ばれて恐れられるようになり、その原因となった「賢者」は、「始まりの悪魔」と呼ばれるようになった。
そして現在、その「始まりの悪魔」は、異世界から来た固有職保持者ーー春風の前にいる。
「……え? は? あなたが……『賢者』?」
と、春風は全くわけがわからないと言わんばかりの表情で、目の前にいるフレデリックだった青年、「賢者」のフリードリヒに向かってそう尋ねた。
いや、春風だけでない、それまで黙って春風とフレデリックの戦いを見守ってた春風の仲間達、特に「七色の綺羅星」のメンバーも、わけががわからないと言わんばかりの表情になっていた。
無理もないだろう。かつて自分達がお世話になっていたハンターギルドの総本部長が、目の前でいきなり若い男になり、自身を「『賢者』の固有職保持者」と名乗ったのだから。
「ええっと、フレデリックさんじゃなくて、フリードリヒ……さんでいいのでしょうか?」
と、未だ状況が理解出来てない春風が再びそう尋ねると、
「あーすまないね春風君。ハンターギルド総本部長、『フレデリック・レイクロフト』は仮の姿。で、こっちが僕の本当の姿、『フリードリヒ・ヴァイスハイト』だ。呼びにくかったら、『フリード』って呼んでも構わないよ」
と、フリードリヒはニコッと笑ってそう答えた。
すると、
「ありえない!」
という叫び声がしたので、春風達は「ん?」と一斉にその声がした方へと振り向くと、そこにはわなわなと体を震わせているユリウスがいた。
「え、ユリウス……さん? どうしたんですか?」
と、近くにいる小夜子がそう尋ねると、
「『賢者』が誕生したのは200年以上前の話よ!? 幾ら固有職保持者とはいえ、そんな長く生きられるわけないわ! 仮に生きていたとしても、もの凄くよぼよぼになっている筈! なのにあなた、どう見ても20代くらいじゃない!」
と、ユリウスは小夜子を見ずに、真っ直ぐフリードリヒを見てそう叫ぶと、
「へぇ、流石は断罪官。僕のことも知ってるんだねぇ」
と、フリードリヒはわざとらしく「凄い凄い」と拍手をしたが、
「でも悪いけど嘘じゃないよ。さっきも言ったけど、僕は正真正銘の『賢者』の固有職保持者だ。そして、見た目はこの通り20代くらいの若造だけど、実際には200年以上も生きてるよ」
と、急に真面目な表情になってそう言った。
それを聞いて、春風達はポカンと口を開けて呆然とした。
フリードリヒはそんな様子を見て、
「おっと、こりゃいけないな。じゃあ、まずはちょっとした種明かしをするとしよう」
と言うと、
「春風君」
「は、はい!」
「何でもいいから、僕に魔術をぶっ放してよ」
と、春風に頼み込んだ。
それを聞いて、春風が「え? え?」と首を傾げると、
「いいからいいから」
と、フリードリヒは「ヘイ、カモーン」と誘ってきたので、春風はちょっとムカついたのか、スッと左手をフリードリヒに向けて、
「求めるは“火”、炎の豪球、『ファイア・ボール』!」
と、火属性の魔術を放った。
迫り来る火の魔術。しかし、フリードリヒは落ち着いた様子で、春風と同じようにスッと火の魔術に向けると、
「起きろ、飯の時間だ」
と呟いた。
次の瞬間、何もつけてない左の掌が黒く染まり、まるで『大きな口』のような見た目に変化した。
そして、目の前にきた火の魔術を受け止めて、ゴクンとそれを飲み込んだのだ。
「……え、何今の!?」
「フフフ、これはねぇ……」
と、2人がそんなやり取りをしようとした、まさにその時、
「ヒィイ!」
という悲鳴が聞こえたので、春風は「何だ!?」と驚きながら、その悲鳴がした方へと向くと、そこには蹲って体を小さくしたルーシーがいた。
「どうしたのルーシー!?」
と、フィオナがルーシーの側に駆け寄ると、
「あ、あの人……わ、私と、同じ『力』、持ってる」
と、ルーシーはガクガクと体を震わせながら答えた。よく見ると、その顔は恐怖によるものか、真っ青になっていた。
そんな状態のルーシーを見て、フリードリヒが「フフ」と小さく笑うと、
「そう、今見せたこの『力』は、彼女と同じ『闇のスキル』に属するもの。あらゆる知識や技術、更には命さえもこの身に取り込み、自身の『力』に変える、『闇』の魔力を用いた超・吸収と変換のスキル、その名も……」
と、声高々にそのスキルの『名前』を言った。
「裏スキル、[暴食]」




