第480話 春風編41 フレデリックからの「挑戦」
過去の記憶の旅(?)から戻り、新たな部屋に足を踏み入った春風達。
そこで彼らを待っていたのは、
「お久しぶりです。春風さん」
ハンターギルド総本部長の、フレデリック・レイクロフトだった。
「フ、フレデリック総本部長、どうしてここに!?」
と、驚きの声をあげた春風。そんな2人を見て、
「あー、えっと、お知り合い……なのか?」
と、小夜子が恐る恐るそう尋ねてきたので、
「あ、はい。あの人はフレデリックさんっていって、ハンターギルドの総本部長さんです」
と、小夜子の横にいた恵樹がそう答えた。
すると、その言葉に反応したのか、
「ああ、これは失礼しました。そちらの方は、初めましてですね。私はここ、シャーサルでハンターギルドの総本部長をしております、フレデリック・レイクロフトと申します、以後よろしく」
と、フレデリックは小夜子に向かってそう自己紹介したので、
「あ、はい、どうも、高坂小夜子と申します! 『勇者』の1人で、教師をしています! 私の生徒達が、大変お世話になりました!」
と、小夜子は頭を下げてそう返した。ただ緊張しているのか、かなりガチガチになっているのが周囲に丸わかりだった。
そんな小夜子を見て、フレデリックが「おお、教師でしたか!」とわざとらしく驚いていると、
「あのぉ、フレデリックさん? それで、一体あなたはどうしてここにいるのですか?」
と、春風はフレデリックに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、フレデリックは「ふむ」と自身の顎を撫でると、
「春風さん……」
「は、はい」
「北の地でのあなたの戦いぶり、遠距離からですが、しかと見させてもらいましたよ」
「うう、ど、どうも」
「ですが、今のままでは『神』に勝てない。だから、更なる強さを求めてここに来た。違いますかな?」
と、もの凄く真剣な表情でそう尋ねられたので、春風は少し怯みながらも、
「……はい」
と、真っ直ぐフレデリックを見てそう答えた。
すると、フレデリックは「ふむふむ、そうですか」と顎から手を離して、
「春風さん。あなたの『目的のもの』は、この私の後ろにあります」
と言うと、自身の背後の通路を親指で指差した。
春風はその言葉を聞いて、
「え、そうなんですか!?」
と、表情を明るくすると、
「ただし……」
「?」
キョトンと首を傾げた春風に、フレデリックは言う。
「この先へ進みたいのなら、私と1対1で戦ってもらいます」
まさかの言葉に、春風だけでなく仲間達も、
『……はあ?』
と、皆、一斉に首を傾げた。
「え、あの、何を冗談言ってるのですか?」
と、ハッと我に返った春風がそう尋ねると、
「冗談ではありませんよ」
と、フレデリックは真剣な表情でそう答えた。
次の瞬間、フレデリックの周辺の空気が変わったのを感じたのか、
「……っ!」
と、春風と仲間達はすぐに身構えた。
しかし、
「おっと、戦うのは春風さんだけですよ」
と、フレデリックがそう言うと、
『っ!?』
「みんな!?」
春風を除いた仲間達全員が、一斉にその場に膝をついた。
「な、何これ……?」
「か、体が、動かない!?」
と、膝をついたまま身動きが取れなくなった仲間達を見て、
「ふ、フレデリック総本部長、一体何を……!?」
と、春風は問い詰めようとしたが、
「さぁ、春風さん。どうしますか? 私と戦いますか? それとも、仲間達と共にここから逃げ出しますか?」
と、フレデリックが挑発じみたことを言ってきたので、春風はちょっとムッとなったが、すぐに首を横に振るい、両手で左右の頬をパンと叩くと、
「わかりました、あなたと戦います」
と言って、仲間達もとから離れてフレデリックの前に立った。
真剣な表情で身構える春風に対して、フレデリックは「ふふ……」と小さく笑うと、
「いい『目』と『構え』をしますね。それでは、私も戦闘体勢に入りましょう」
と言って、「へい、カモーン!」と言わんばかりに右手をくいっくいと動かした。
単純な性格の人だったら、ここで「ムッカー!」と頭に血を上らせて感情に任せた攻撃を繰り出すだろう。
しかし、春風はそうではなかった。
春風は真っ直ぐフレデリックを見ながら、格闘術を繰り出す為の構えをとった。
その後、右手に自身の持つ『風』属性の魔力を纏わせると、
「行きます」
と言って、素早くフレデリックのすぐ側まで移動した後、
(くらえっ!)
と、『風』の魔力を纏わせた右手による「正拳突き」をお見舞いした。




