第461話 春風編22 「幸村春風」と「再会」
楽しい休憩タイムを過ごした後、春風達はまた新たな通路を歩き始めた。
休憩の最中、
「あのさぁ、ケータ……」
と、春風が気まずそうに恵樹に話しかけると、
「ハルッち、今は君にとって大事な時なんでしょ? 全部終わったら、いっぱい聞くし、いっぱい話し合おうよ」
と、恵樹に優しくそう言われてしまった。周りをよく見ると、他の仲間達も皆、「うんうん」と頷いていた。
春風はそんな仲間達を見て、ジーンと泣きそうになりながら、
「うん、ありがとう……」
と、お礼を言った。
さて、そんなこんなで、通路を進んで新たな部屋に着くと、また、部屋の中央に謎の火の玉が現れたので、春風はゆっくりとその火の玉に触れた。
次の瞬間、眩い光と共に景色が変わり、気がつくと、春風はとある場所に立っていた。
(あ、ここって、今の俺の家だ)
そう、そこは春風が「幸村春風」として涼司と暮らす現在の我が家、喫茶店「風の家」の店内だった。
そして、春風が中を見回すと、
「いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ!」
(あ……)
そこには、養父である涼司と、今の春風よりも少し幼い自身が、やって来たお客さんを相手に働いていた。
その瞬間、春風はその記憶がいつの時だったかを思い出した。
「そうだ。この時の俺は、『幸村春風』になってから数ヶ月経ったばかりだったんだ」
そう、この時の春風は、まだ小学生時代の時で、今、春風が思い出したように、まだ自身が「幸村春風」として暮らすようになって数ヶ月になったばかりだったのだ。
まだ小学生でありながら、涼司と共に一生懸命働く当時の自分を見て、
(ああ、懐かしいなぁ)
と、春風が思い出に浸っていると、
「……あれ? 確かこの日って……」
と、何かを思い出したかのような表情になった。
すると、店の扉が開かれて、一組の男女が入ってきた。
小学生時代の春風はその男女を見て、
「あ、いらっしゃい……ませ……」
と、挨拶をしようと声をかけると、
「……フー?」
と、入ってきた男性が小学生時代の春風を見てそう尋ねてきて、それに続くように、
「あんた、フーなのかい?」
と、女性も小学生時代の春風を見てそう尋ねてきた。
その質問を聞いた瞬間、
「親分さんに、日真理姐さん……」
と、小学生時代の春風はポロっと口からそうこぼして、
「ハッ!」
と、すぐに両手で自身の口を塞いだ。
そう、店に入ってきた男女の正体は、歩夢の両親である海神大造と、その妻、海神日真理だったのだ。
まさかの再会に、小学生時代の春風は口を塞ぎながら困惑するが、
「「フー!」」
と、大造と日真理が一斉に飛び掛かろうとしたので、
「オイ、あんたら。俺の息子に何するつもりだ?」
と、涼司が小学生時代の春風を庇うように、2人の前に立った。
「なんだいテメェは?」
と、大造が涼司を睨みながらそう尋ねると、
「こいつの父ですが、何か?」
と、涼司は小学生時代の春風を指差して、大造を睨みながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「「……あぁ?」」
と、更に涼司を睨みつける大造と日真理。
店内が良くない空気に包まれて、小学生時代の春風がオロオロしていると、
「落ち着いてくださいな」
という声がしたので、驚いた小学生時代の春風達が一斉に声がした方へと振り向いた。
そこは店内のカウンター席で、声の主はその席に座る男性客のようだった。
男性客は目の前のコーヒーを一口飲むと、スッと立ち上がって小学生時代の春風達を見た。
その男性を見て、
「ん? あ、あんたは!」
「総理大臣の神代総一!?」
と、大造と日真理は驚きの声を上げた。
そんな2人に対して総一は、
「申し訳ありませんが、少し静かにしてくれませんか? 彼が困ってますので」
と、冷静な口調で春風に視線を向けながら、2人に落ち着くよう促した。
その言葉を聞いて、大造は「コホン」と咳き込み、日真理と共に深呼吸をした後、
「……フー……なんだな?」
と、小学生時代の春風に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、小学生時代の春風は答えるのを躊躇ったが、すぐに両手を口から離して、
「……お久しぶりです、親分さん、日真理姐さん」
と、大造と日真理に向かって深々と頭を下げた。
その姿に日真理は、
「……説明してくれるかい?」
と、小学生時代の春風に向かってそう尋ねると、
「それは……」
と、小学生時代の春風はチラリと総一を見た。
視線を向けられた総一は、
「(コクン)」
穏やか笑みを浮かべながら頷き、それを見た小学生時代の春風は、
「わかりました、全部、話します」
と、真っ直ぐ大造と日真理を見てそう言った。




