第455話 春風編16 そして、「あの事件」へ3
(そう、『あの国』にはオヤジも来ていたんだ)
目の前で握手をする、小学生時代の春風と、後に春風の養父となる涼司。
春風がそんな2人の姿を見ていると、また眩い光と共に周囲の景色が変わった。
気がつくと、春風はまた別の場所に立っていた。
春風の周りには、多くの最新の機械が配備されていて、その周辺には多くの白衣を来た男女達や、それを警備する人達がいた。
(ああ、そうだ。この場所は……)
それらを見た瞬間、春風は思い出した。
そう、今自分がいるこの場所こそ、「あの事件」の舞台となった、ディモーニア王国の「王立科学研究所」の中で、自身の周囲にいるのは、世界中から集められた科学者達と、それを守る警備員達だったのだ。
「……」
春風が科学者達の仕事をしている姿をジッと見ていると、彼らの奥にある自動ドアが開かれて、そこから冬夜と元作達、そして数人の外国人の科学者達が出てきた。
その姿を見て、
「あ、お父さん……」
と、春風が小さな声で呟くと、何かに気づいた冬夜が、自身の斜め左上の方向を見上げた。
「何だろう?」と思って春風もその方向を見ると、
(……あ、俺とお母さんだ)
そこには窓ガラス越しに冬夜達を見て手を振る、小学生時代の春風とその母・雪花がいた。
そんな2人を見て、冬夜も穏やかな笑みを浮かべながら手を振った。
春風はその姿を見て、
(ハハ。そういやこんなこともあったなぁ)
と、困ったような笑みを浮かべると、また周囲の景色が変わった。
そこは、「王立科学研究所」の前で、今まさに小学生時代の春風とその母・雪花が、研究所内に入ろうとしていた。
「今日は私達も、お父さん達の研究を一番近いところで見れるんだね。楽しみだねぇ」
「うん、凄く楽しみ」
「りょうのじさんも来ればいいのに、残念だったねぇ」
「うん、後でいっぱいりょうのじさんに報告しようね」
「うふふ、そうねぇ」
と、2人がそんな会話をしながら研究所内に入ると、
「おや、貴方達は……」
と、黒いスーツを着た3人の若い男性達を見て、雪花と小学生時代の春風は思わず立ち止まった。
(あ、あいつらは……)
そして、春風も。
「お久しぶりです、光国博士の奥様」
若い男性の1人がそう挨拶すると、
「……どうして、あなた達が!?」
と、雪花はその若い男性を警戒した。
だが、そんな雪花に構わず、
「やぁ、坊や……いや、光国博士のご子息かな? 僕達は……うん、敢えて名乗るなら、『ブレイン・ロードの使者』と呼んでくれればいいかな。日本ではちゃんと挨拶出来なくて、すまなかったね」
と、若い男性は小学生時代の春風に向かってそう謝罪してきたので、小学生時代の春風はビクッとなって雪花の後ろに隠れた。
そう、彼らは日本の「愛染総合科学研究所」で会った、「ブレイン・ロード」という組織の人間だったのだ。
雪花はすぐに春風と共にその場を去ろうとしたが、
「おおっと、失礼」
と、『ブレイン・ロードの使者』を名乗った若い男性がそう言った瞬間、背後の2人が素早い動きで雪花と小学生時代の春風の両隣に移動した。
「くっ!」
「お、お母さん……」
逃げることが出来なくなった2人に対して、使者を名乗った若い男性はニコリと笑うと、
「おやおや、お二人ともそう焦らずに。折角ですから、みんなで一緒に観にいきましょうよ」
と、穏やかだが何処か「黒いもの」を感じさせる口調でそう言ってきたので、雪花は怒りで、小学生時代の春風は恐怖で体を震わせながらも、彼らに従って、研究所の奥へと進んだ。
その様子を見て、春風は思わず叫んだ。
「だ、駄目だ、行かないでお母さん!」
届かないとわかっていながらもそう叫んだ春風は、その場に膝から崩れ落ちた。
そして次の瞬間、周囲の景色が、白ではなく黒に染まっていった。
その最中、春風は思い出す。
(……そうだ。今日が、『あの事件』が起きた日だ)
次回、いよいよ7年前の「事件」の真相に入ります。




