第452話 春風編13 父(今は兄)からの「謝罪」再びと、「ブレイン・ロード」という組織
(そういえば、こんなこともあったなぁ……)
新たな「光国春風の記憶」を見終えて、春風は心の中でそう呟いた。その表情は、先ほどまでの「怒り」や「悲しみ」などが入り混じったものから、昔を思い出してセンチメンタルになったかのようなものに変わっていた。
その所為か、その場はちょっと切ない雰囲気に包まれていたが、次の一言で、その雰囲気がガラリと変わった。
「……ところで、兄さん何してんの?」
と、春風が目の前を見ると、
「……ホントにごめんなさい」
そこには、何故か土下座をしている冬夜の姿があった。
「いや、何で兄さん謝ってんの?」
と、春風が尋ねると、
「だって僕、あんな風に怒ったことなくて、客観的に見たら自分でも『うわ、酷い顔!』って思っちゃって、その所為で君を怖がらせて泣かせちゃって……」
と、冬夜は土下座したままそう説明した。
その説明に続いて、
「あー、うん。確かに冬夜君って、人前でそんなに怒ったことないからねぇ……」
「う、うん。あの時の冬夜おじさん、本当に怖かった……」
と、「記憶」を見た雪花と歩夢は、そう感想を述べた。
(ね、姉さん。ユメちゃん……)
と、春風はタラリと冷や汗を流したが、2人の後ろをよく見ると、
「うぅ……」
「ふえーん、怖かったよう……」
「ひっくひっく……」
と、イアン、ニコラ、マークが泣きじゃくっていて、それをフィオナが「よしよし」と慰めていたので、
(ああ、そうだ、イアン達も見ていたんだよなぁ)
と、春風は更にダラダラと滝のように汗を流した後、
「に、兄さん、顔を上げてよ! 俺、全然気にしてないから!」
と、大急ぎで冬夜を立たせた。
するとその時、
「ハルッち……」
と、恵樹がポンと春風の肩に手を置いた。
「ん? 何、ケータ?」
と、春風が尋ねると、
「フユッちのことは置いておくとして……何あの黒服の人達!? 『ブレイン・ロード』って所長さん言ってたけど、なんかスンゴイ不穏な雰囲気がしたんですけど!?」
と、恵樹は春風の肩をゆっさゆっさと揺すりながらそう尋ね返した。
「お、お、落ち着いてケータ! あの人達は……!」
春風は肩を揺さぶられながらも、あの黒いスーツ姿の男性達について説明しようとすると、
「『ブレイン・ロード』っていうのは……」
と、冬夜が口を開いたので、春風達はすぐにその言葉に耳を傾けた。
「『頭脳と知識をもって人々を導く』を理念とした組織のことで、彼らはその為に、世界中の科学者や研究者達をスカウトしているそうだ」
「じゃあ、フユッちや所長さんの所に来たのも……」
「ああ、連中は僕達もスカウトする気で来たそうだ。ま、断ったけどね」
「どうして?」
「『理念』はいいんだが、妙に胡散臭いものを感じてね、気になって彼らのことを調べたんだけど、どうも裏ではよからぬことに手を染めているみたいなんだ」
と、冬夜がそう説明すると、
「……それって、どういうものか聞いてもいいかしら?」
と、ユリウスが「はい」と手を上げた。
それを見て、冬夜は答える。
「これはあくまでも『噂』なんだけど、連中は影では非合法の人体実験をしていたり、違法な薬物なんかを作っていたり、果てはその材料を得る為に、小さな集落に住む人達を皆殺しにしているそうなんだ」
その答えを聞いて、ユリウスは「何よそれ……」と絶句し、側にいた星乃香は吐き気がしたのか、「うっ!」と口を押さえた。
そして、そんな彼女の隣にいた鉄雄は、
「何だよそれ、それがホントならマジで『悪の組織』じゃんか!」
と、怒りをあらわにした。他の仲間達も、鉄雄と同じく怒ってはいたが、
「で、でもさ、そんな悪い組織(?)が、何でハルッちの記憶に出て来たの?」
と、恵樹が尋ねると、春風は恵樹を見ながら答える。
「実はあの記憶は、俺とお父さん達が『とある事件』に巻き込まれる前の記憶だったんだ。覚えてるだろ、ケータ? 7年前の……」
と、春風がそこまで言いかけると、恵樹はハッとなった。
「ま、まさか、『科学者大虐殺事件』のこと!?」
その言葉に反応したのか、
「え、何それ!?」
と、それまで黙っていたケイトが尋ねて来たので、
「簡単に言うと、世界中から集められた『科学者』っていう人達が、悪い奴らによって皆殺しにされたっていう事件なんだ」
と、恵樹が「?」を浮かべているエルード勢の仲間達に、わかりやすいようにそう説明した。
そして、それに続くように、
「そう。そしてその事件で、僕も、セっちゃんも、そして所長達も死んじゃったんだ」
と、冬夜は悲しそうな表情でそう説明した。
それを聞いて、地球側の仲間達も、エルード側の仲間達も、顔を真っ青にした。
その時だ。
ゴゴゴという音と共に、春風達の前にまた新たな通路が現れたので、
「さて、それじゃあ次行きますか」
と、春風は仲間達と共にその通路を進み始めた。




