第448話 春風編9 「記憶」についての質問
「……あ、元の場所に戻った」
気がつくと、春風達は「光国春風」の記憶の景色から、元いた何もない部屋へと戻っていた。
「……」
大切な人達との記憶を思い出して、春風が少しセンチメンタルになっていると、
「春風」
「ん?」
冬夜が話しかけてきた。
「兄さん、どうしたの?」
と、春風が尋ねると、
「大丈夫?」
と、冬夜は心配そうな表情でそう尋ね返したので、それを見て何が言いたいのかを察した春風は、
「……ありがとう、俺は大丈夫だよ」
と、笑顔でそう答えた。
すると、
「あー、ちょっといいか?」
「ん?」
今度は鉄雄が「はい」と手を上げながら声をかけてきた。
「テツ、どうしたの?」
と、春風が鉄雄に向かって尋ねると、
「お前の『記憶』を見て、お前がどうゆう交友関係(?)みたいなのを築いてきたのかは、まぁ少しだけどわかった」
と、鉄雄はそう答えた後、「けどな」と言って春風に近づき、その両肩をガシッと掴むと、
「お前、年上の女の子になんてこと言ってんだコラァアアアアアアアッ!」
と怒鳴りながら、ユッサユッサと力強く揺すった。
突然のことに春風は、
「お、おおう!? ちょ、落ち着いて……」
と、全身を揺さぶられながら鉄雄に落ち着くよう促したが、
「いやいやハルッちぃ……」
「『落ち着け』って言われてもねぇ……」
と、恵樹と美羽がゆっくりと春風に近づいて、恵樹が春風の左肩を、美羽が春風の右肩を掴むと、
「俺的にもあれはどうかと思うんだけどぉおっ!」
「そうよ! あなたがあんなこと言うから、師匠何か変なものに目覚めちゃったんじゃないの!? 特に最後の『電話番号教えて』って言った時の表情、あれ思いっきり『恋する乙女』みたいじゃない!」
と、2人して鉄雄と同じように、怒鳴りながら春風をユッサユッサと左右に揺すった。
鉄雄だけでなく恵樹と美羽にも揺さぶられた春風は、
「だ、だってぇ! ああでも言わなきゃ、あの人死んじゃうんじゃないかと思ったから……!」
と、必死に理由を説明しようとしたが、
「「「だからって『命令だ』はないだろぉおおおおおおおっ!」」」
と、3人に怒鳴られてしまい、ますます激しく揺さぶられてしまった。
その時だ。
「私からもいいかしら」
と、不意にそんな声がしたので、春風は「え?」とその方向を向くと、そこには真面目な表情で手を上げたユリウスがいた。
「えっと、何でしょうか?」
と、春風がユリウスに向かって尋ねると、
「私達が最初に見た、あの『施設(?)』みたいなところについて教えてほしいのだけど」
と、ユリウスはそう答えて、その瞬間、春風は「愛染総合科学研究所」のことだと理解して、少し悲しそうな表情をした後、
「……あそこは、死んだ父の職場です」
と、答えた。
「お父さんの?」
と、今度はユリウスが尋ねると、
「……ああ、あそこはかつての僕の職場だ」
と、冬夜が答えた。
その答えを聞いて、
「ああ、そういえばあなた確か、『転生』した人間だったわね?」
と、ユリウスが再び尋ねると、冬夜はコクリと頷きながら答える。
「そう、僕は転生前、あの施設、『愛染総合科学研究所』で働く科学者だった」
「科学者?」
「簡単に説明すると、『身につけた知識や理論を駆使して未知の存在に挑む者達』って言えばいいのかな?」
「そこにスキルとかが介入する余地は?」
「ない。そして、一口に『科学』って言っても様々な分野があってね、例えば人体や生物についての研究と解明を中心としたものから、自然界についての研究と解明を中心としたものが存在するんだ。で、そういった分野が得意な人達が集まって働いているのが、あの『愛染総合科学研究所』、通称『愛研』というわけさ」
そう説明した冬夜に、ユリウスは「なるほどね」と納得すると、
「で、その愛研って今もあるの?」
と、春風を見てそう尋ねると、春風は悲しそうな表情になって答える。
「……今はもうないよ」
「どうして?」
「……父もそうですけど、所長さんも、父の仲間達も、職員さんの皆さんも、みんな死んじゃったから」
その答えを聞いて、ユリウスはハッとなって、
「ごめんなさい、辛いことを聞いてしまったわね」
と、春風に向かって深々と頭を下げて謝罪した。
そんなユリウスを見て、春風が「気にしないでください」と言った、まさにその時、ゴゴゴという大きな音と共に、次の通路への扉(?)が開かれたので、
「おっと。じゃあ、行きましょうか」
と言って、春風はすぐに通路へと向かい、冬夜をはじめとした仲間達も、その通路へと向かった。




